とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

アジア杯グループF 日本対ウズベキスタン

 グループリーグ突破を決めて、勝てばグループ1位抜けで決勝トーナメントはサウジかカタール、引き分け以下なら2位抜けでオーストラリアと対戦となるゲーム。日本は先発を第2戦から10人代えてきた。この先を考えると選手のモチベーションが大事。その意味でも勝利を目指すと森保監督は言っていた。もちろん負けてもかまわないという状況にあることも確か。その中で、Aチームに匹敵するBチームを作り上げたいという思いがあるのではないか。大迫や南野らがいなくてもできるサッカーを作り上げたい。そのための連携づくりがこの先発メンバーの意味ではなかったか。対するウズベキスタンは19歳のシュクロフがアンカーに入る4-1-4-1の布陣。23歳CFシュムロドフもその速さを見せ付けた。ジュビロのムサエフは右IHでの先発。若いチームを攻守によく支えていた。

 開始1分、22歳の左IHシディコフが積極的なドリブルから右に流して、22歳の右SHハムダモフがミドルシュート。序盤、ウズベキスタンが積極的に攻め上がる。しかし序盤の攻勢をしのぐと、ゲームは日本が支配するようになってくる。12分、CH塩谷の縦パスを右SH伊東が落とし、FW北川がつないでFW武藤が抜け出す。が、シュートは打てず。13分、右SH伊東のクロスにFW武藤が飛び込むが、これも合わない。なかなか連携が噛み合わない。

 すると16分、ウズベキスタンは右SHハムダモフが右サイドを突破。クロスにCFショムロドフがシュートを放つが、ふかしてくれた。この後はしばらくウズベキスタンの時間が続く。しかし19分、左IHシディコフからFW武藤がボールを奪うと、左SH乾がドリブルで仕掛け、縦パスに走り込んだFW武藤のクロスにFW北川が走り込む。が、これもまた合わない。DFのクリアを左SH乾が拾いミドルシュート。だがGKネステロフがファインセーブ。日本はなかなかゴールが遠い。左SH乾も積極的にドリブルで仕掛けるが、周囲との連携がイマイチなのか、結局どこにもパスを出せず、シュートも打てず、最後はDFに囲まれて終わることが多い。

 35分にはFW北川が反転から強烈なミドルシュートを放つが、GKネステロフがファインセーブ。36分にはFW武藤がミドルシュート。しかしこのこぼれ球からCFシュムロドフにロングパス。シュムロドフがミドルシュートを放つ。そして40分、右SHハムダモフのスルーパスにCFショムロドフが抜け出すと、初速でCB槇野を抜き、迫るCB三浦も切り返しでかわしてシュート。ウズベキスタンが先制点を挙げた。日本は一瞬の隙を突かれた。だが、シュムロドフの速さはいい加減わかっていたはず。その対応には疑問が残る。

 暗いムードになりかけた日本だが、直後の43分、右SB室屋が左SHアリバエフを抜いて右サイドを駆け上がると、クロスにFW武藤がヘディングシュート。元FC東京コンビで同点弾をぶち込んだ。やはり連携は大事。44分、右SH伊東のクロスにFW北川がヘディングするが、うまく当たらず。45+2分、FW北川の落としからCH青山がミドルシュートを放つも、枠は捉えられず。そして前半終了の笛。前半は1-1の同点。前半の内に追い付けてよかった。

 後半になるとウズベキスタンは、右IHムサエフが積極的に上がり、攻撃参加をしてくる。8分、右SBハシモフのクロスのこぼれ球を右IHムサエフがミドルシュート。日本も9分、カウンターで右SH伊東がドリブル。そのままミドルシュートを放つが、GKネステロフがキャッチする。11分にも右SH伊東のドリブルからクロスにFW武藤がミドルシュート。12分には左SH乾のミドルシュートがバーを叩く。そして13分、右SB室屋のクロスのクリアをCH塩谷が強烈なミドルシュート。これがネットに突き刺さり、日本が勝ち越し点を挙げた。

 するとその後は日本もペースを落として落ち着いて守る。20分、ウズベキスタンは右SHハムダモフに代えてツルグンバエフ。25分にはCFショムロドフに代えてビクマエフを投入。速いショムロドフがいなくなったことで、落ち着いて守れるようになった。33分には右IHムサエフを下げて左SHラシドフを投入。アリバエフを右IHに回す。33分、ウズベキスタンは代わった右SHツルグンバエフがドリブルで駆け上がる。だがうまく囲い込みボールを奪うと、逆に日本もカウンター。右SH伊東が駆け上がり、横に流して左SH乾。だがそこでボールを奪われる。

 36分、疲れの見える乾に代えて左SH原口を投入。直後の37分にはウズベキスタンのCKからカウンターでまたも右SH伊東がドリブル。クロスをFW武藤が落として、FW北川がシュート。しかし枠を外した。右SH伊東の速さは武器になる。が、そこからの連携が課題。41分には右SBハシモフが強烈なミドルシュート。GKシュミット・ダニエルがいい反応をして弾き出した。その後は日本もCH遠藤やCB冨安を投入し、守りを固めた。そしてタイムアップ。2-1。日本が勝利し、グループリーグ1位通過を決めた。

 決勝トーナメント1回戦の相手はサウジアラビアに決まった。どこが来ても弱い相手はないので、日本がどんなサッカーを見せるかにかかっている。グループリーグはサブ組が出場したウズベキスタン戦が内容的にもっともよかった。と、セルジオ越後が言っている。そうかもしれない。連携面ではまだまだ物足りないが、少なくとも気持ちの面ではやる気が見えるゲームだった。次戦はまたいつものメンバーに戻るのかもしれない。しかしこのゲームが彼らの気持ちに火を付けてくれればいい。アジア杯、そして今後の日本の成長を促すうえでも、このウズベキスタン戦は重要なゲームだったような気がする。

穴あきエフの初恋祭り

 昨年11月、多和田葉子「献灯使」が「全米図書賞」を受賞したというニュースが流れていた。福島原発事故を受けて、今後の世界のあり方を描いた「献灯使」は海外での評価は高い。次にノーベル文学賞を受賞するのは多和田葉子ではないか、などと思いつつ、引き続き、多和田葉子を読み続けている。

 多和田氏の小説には二つの特徴がある。漂流者・外来者の視点と言葉遊び。本書もその特徴がよく表れた作品だが、中でも後者の特徴が強い。「穴あきエフ」というタイトルからして意味不明。7作収められた短編の中の一つだが、読んでみるとどうやら、キエフのある町の祭りを描いたものらしい。「穴あきエフ」とは「アナーキエフ」?

 こうした言葉遊び(同音異句語)は、読んでいてもなかなか付いていけないのだが、本書に収められた他の短編、留学から戻ってきた青年と幼馴染との交流や、文通による意思疎通の齟齬などを描く各作品からは、ドイツ在住の筆者ならではの、コミュニケーションのすれ違いに大きく関心を持っていることがわかる。

 中でも面白く読んだのが「鼻の虫」。人間の鼻の中には、鼻毛に棲みつく虫がいる。人間と他の生物との共生をテーマにしているのだが、この短編の冒頭は、博物館での「体の中の異物」展から始まる。「異物」。それはすなわち、ドイツに暮らす筆者自身のことかもしれない。いや、各個人自体が社会にとって異物かもしれない。特に言葉のすれ違い、変換ミスの中にその「異物感」が現れる。違和感。私はこの社会の中で生きていていいのだろうか。そんな感じ。

 後半の2作などは特にわかりにくいのだが、それでも何とか読み終えた。簡単に読めるけど、難しい。多和田ワールドが満載の短編集だ。

 

穴あきエフの初恋祭り

穴あきエフの初恋祭り

 

 

○こいつはなぜ泣いているんだ。男性の気持ちは理解できない。……人間は家庭用電化製品としては複雑すぎて実用的ではない。Iには炊飯器くらいのメカニズムでちょうどいいのだ。温かくて、美味しくて、清潔で、長持ちする炊飯器が急に懐かしくなった。(P17)

○胆石は、外部から身体の中に入ってくるわけではない。我が身からにじみ出た汁が固まってできるのだろうから、異物であっても異物ではない。自分の一部が意固地に固まってしまうと、まわりの器官と交流できなくなり、孤立して痛み出す。それが異物なら、異物とは特定のモノではなく、ある関係をさすのではないかと思う。……異物が悪玉であるとは限らない。……食べ物だって口に入れる時は異物なのだから、必ずしも異物は取り除かなければいけないというわけではなく、むしろ異物なしには生きられないのが生命体の特徴かもしれない。(P61)

○わたしたちはみな、どんなに巧みに文字を練ってもそこからすべり落ちてしまう身体によっていつかは「嘘の死」と書かれた恥辱の仮面をかぶって真っ赤なスポットライトを全身に浴びる。その身体は観客には見えるが自分自身には見えない。わたしは今、観客の側にいる。だから見えている。見えている限り、倒れているのは自分だと言い張っても意味がない。(P79)

○和紙の束のようなものは持ち上げると、するするどこまでも伸びる。ただの和紙の束に見えたオブジェは、長さ1メートル50センチくらいもある提灯だった。墨で描かれた黒い四角形が窓のように見えて高層ビルを思わせる。……底にクロスされた針金の真ん中に固定された燃料にマッチで火を付けると、ガスが提灯の中にたまって、提灯が気球になって飛んでいくらしい。……わたしたちの気球提灯は、一度上昇してから、丘のはるか下に見える町に向かってゆっくりと降りていった。(P112)

 

プレミアリーグ第22節 トッテナム対マンチェスター・ユナイテッド

 スールシャール監督に代わって4連勝を続けているマンU。先に行われた5位アーセナルが敗戦したため、勝てば勝ち点で追い付く。だが今節の相手はトッテナム。これまでの4試合はいずれも下位チーム。スールシャール監督の真価が問われるゲームだ。一方、トッテナムは2位マンCとの勝ち点差は2。ここは何としても勝ち点を積み上げて上位に食らいついていきたいところ。。トッテナムの布陣は4-2-3-1。ケインのワントップにトップ下にデリ・アリ。右SHソンフンミン、左SHエリクセンボランチはウィンクスとシソコで組む。CBはフェルトンゲンとアルデルウェイレルトだ。マンUも同じく4-2-3-1。リンガードをワントップに上げるが、自由に動き回り、右SHリンガードをポジションチェンジすることも多い。ポグバがトップ下に上がり、マティッチとエレーラのダブルボランチ。CBはリンデレフとジョーンズで組む。GKはデヘア。

 9分、右SHソンフンミンの仕掛けからスルーパス。CHウィンクスが抜け出し、シュート。マンUも11分、右SBヤングのクロスのクリアをCFリンガードがミドルシュート。さらに12分、カウンターでOHポグバがドリブルで運び、左に流して、左SHマルシャルがスルーパス。右SHラッシュフォードが走り込んでシュートを放つ。お互い激しく攻め合う面白い展開。18分には右SBトリッピアからボールを奪ったOHポグバがスルーパス。左SHマルシャルが仕掛けるが、GKロリスがセーブした。

 25分にも左SHマルシャルがミドルシュートを放つが、30分手前辺りからトッテナムが波状攻撃。マンUの守備陣をゴール前に釘付けにする。そして31分、右SBトリッピアのクロスをOHデリ・アリが落とし、CFケインがシュート。ネットを揺らしたが、ケインがオフサイド。43分、トッテナムはCHシソコが右鼠径部の痛みを訴えて、ラメラに交代する。ウィンクスをアンカーにして、エリクセンとデリ・アリがIH。右SHラメラ、左SHソンフンミンの4-1-4-1の布陣に変更する。すると44分、右SBトリッピアの内側へのパスをCFリンガードがカット。落としをOHポグバが大きく右へフィードすると、右SHラッシュフォードが走り込んでシュート。マンUが先制点を挙げた。前半はマンUの1点リードで折り返した。

 後半は序盤からトッテナムが攻勢をかける。2分、左SHソンフンミンがミドルシュート。4分、右IHエリクセンの縦パスを右SHラメラがつなぎ、左IHデリ・アリのスルーパスにCFケインがシュート。だがGKデヘアがナイスセーブする。5分、CFケインから右に展開。右SBトリッピアのクロスに左IHデリ・アリがヘディングシュート。だがGKデヘアがファインセーブで弾き出す。マンUも9分、右SBヤングのクロスにOHポグバがヘディングシュート。これはGKロリスがファインセーブ。11分、OHポグバがミドルシュート。DFがブロックしたこぼれ球を再びポグバが拾ってシュート。これもGKロリスがファインセーブした。

 お互い、GKがファインセーブの応酬。だがここからさらにGKにスイッチが入った。14分、ショートCKから右IHエリクセンのクロスにCFケインがヘディングシュート。GKデヘアがファインセーブ。マンUも17分、CFリンガードの縦パスから左SHマルシャルの横パスに、OHポグバがシュート。今度はGKロリスがファインセーブで弾き出した。するとトッテナムはさらに圧力を強める。21分、右IHエリクセンの縦パスを受けたCFケインのスルーパスに、左IHデリ・アリが抜け出してシュート。これもGKデヘアがファインセーブ。25分にはエリクセンのCKにCBアルデルウェイレルトがシュートを放つが、これもGKデヘアが止めた。26分、CFケインのFKもGKデヘアがファインセーブでキャッチする。29分、右IHエリクセンの縦パスに抜け出した左IHデリ・アリがシュート。これもGKデヘアがファインセーブする。もう神懸っている。

 マンUは28分、左SHマルシャルに代えてCFルカクを投入。リンガードを左SHに回す。さらに38分にはリンガードを下げて、右SHデョゴ・ダロット。ラッシュフォードが左SHに回った。トッテナムも36分、CHウィンクスに代えてFWジョレンテを投入。2トップにして攻める。41分、CHデリ・アリの縦パスをFWジョレンテがヘディングで落とし、FWケインがシュート。しかしこれもGKデヘアがファインセーブ。もう手が付けられない。44分には右SBトリッピアのクロスにFWジョレンテがシュートを放つが、GKデヘアがセーブ。結局、最後までゴールを許さなかった。1-0。マンUが3位トッテナムを破って勝利。スールシャール監督になって公式戦6連勝を飾った。

 もちろんGKデヘアのスーパーセーブが最大の勝因だが、リンガードをトップで使うことで、前線から広範囲でプレスをかけて、中盤でのボール奪取からショートカウンターが効いている。ポグバが気持ちよさそうにプレーしているのもいい。みんなモウリーニョの時代に比べてイキイキとしている感じ。一方のトッテナムはあれだけ攻めての敗戦は仕方ない。だが、このゲームを最後にしばらくソンフンミンがアジア杯でチームを離れるのは不安材料だ。まだまだ激しい上位争いが続くプレミアリーグ。アジア杯だけではない。プレミアリーグからも目を離せない。