とんま天狗は雲の上

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外国人労働者の次は発達障害者?

 先週の「所さん!大変ですよ」は「誕生!?伝統工芸の救世主」というタイトルで、発達障害の能力を生かして、絞り染工房や店舗清掃で働く障害者を紹介していた。なるほど、面白いなと思って見ていたのだが、24日(日)には「発達障害って何だろうスペシャル」という番組を、さらに26日(月)にはクローズアップ現代で「企業が注目!発達障害 能力引き出す職場改革」という特集を放送していた。さらにふとNHKの番組表を見ると、「発達障害キャンペーンアニメシリーズ」なる番組も放送されている。これらの放送はどれも見てはいないのだが、どうして今、発達障害? どうやらNHKでは11月から発達障害キャンペーンを実施しているらしい。

 「【キャンペーン】発達障害って何だろう」を見ると、発達障害の特性の説明や発達障害の子供を持つ親に向けた子育て支援のための情報提供、発達障害を抱える人の生き方紹介など多様な内容が盛り込まれている。発達障害の中でもASD自閉スペクトラム症)の方などは、「所さん!大変ですよ」でも紹介されたように、その特徴を生かした仕事もあるのかもしれない。

 でも、まさか、まさか、ですよ。今、国会では、外国人労働者の受入れ拡大を内容とする入管法改正が審議中、というか強行採決が行われたところであり、深刻な人手不足の解消が大きな問題となっている。そうした中で、発達障害者の雇用の話を聞くと、外国人労働者の次は身障者を狙っているのかと勘ぐってしまう。番組で紹介された障害者の方は、一般の労働者よりもはるかに高い能力をもって仕事をしているようだが、それに見合った給料を受け取っているのだろうか。逆に障害者ということで、低賃金のまま、かつ、やりがいを感じて文句も言わない、体のよい低賃金労働者として使われていないだろうかと心配になる。

 先に投稿した「外国人労働者と単純労働」では、外国人労働者の雇用に係る様々な問題が一緒くたに議論されて、一般国民には何が問題なのかわからないということを書いたが、この問題に関しては、外国人労働者に発生する問題より何より、日本人労働者にはどういう影響があるのかを明らかにしてほしい。

 かつては地方出身者を「金の卵」と称して低賃金で雇用してきた過去があり(その前には徴用工という事例もあり)、バブル崩壊後には日系ブラジル人などを低賃金で雇用して低迷期を凌いできた経済界だが、さらにその後はフリーターといった美名のもとに非正規労働者を低賃金かつ切り捨て可能な形で雇用してきた。リーマンショックで多くの日系労働者が帰国したが、派遣労働者の条件を大幅緩和することで日本人労働者を確保。さらに男女雇用機会均等法の施行や女性の社会進出が進み、女性の労働率が大幅に上昇。男性だけで確保できない労働力を、女性を動員することで補う方策も進められている。しかし少子化の影響もあり、従来のようには日本人の低賃金労働者を雇用することが困難になったことから、入管法を改正して、外国人労働者の門戸をさらに広げようとしている。さらに障害者も???

 だが、国際競争の中では、既に日本の雇用市場は外国人にとって魅力的なものではなくなっているという指摘もある。結局、労働者不足はAI導入による省力化と国内の労働者に対する労働条件の改善によって解決するしかなくなるだろう。極論を言えば、労働者不足に直面している介護や看護などの肉体労働は今の数倍の給料を支給するようにする一方で、相変わらず人気のホワイトカラーの事務仕事はAI導入を積極的に進めることにより、給与水準を大幅に切り下げる事態になるのではないか。その時に障害者の雇用状況はどうなっていくのか。単に雇用率○%といった対応では済まないような気がする。ましてや発達障害者は低賃金でも喜んで働いてくれて、しかも疲れ知らずで万々歳なんて話は、いつまで通用するのだろうかと心配になる。