とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

死闘 韓国対イラン 魂の戦い

 すごいゲームだった。一瞬でも先に気を緩めたほうが負けるギリギリの戦い。そして延長前半終了間際、まさにイランに一瞬の気の緩みが見えた時、勝負が決まった。
 それにしてもすごいゲームだった。先のW杯に例えれば、ブラジル対オランダの準々決勝のようなゲーム。プレミアリーグのような速さと強さがぶつかり合う。わずかに技術で上回る韓国。体力に上回るイラン。イランにしてみれば、前回のアジア大会でも準々決勝でPK戦の末、韓国に敗れている。そして、4試合とも中東のチーム対その他の地域のチームと対戦となった準々決勝は、カタール開催にも関わらず、前3試合はいずれも中東のチームが負けている。何としても勝ちたいゲームだ。
 ところが韓国の勝利への意欲はイランを上回っていた。立ち上がりから韓国がイラン・ゴールに攻め上がっていく。6分パク・チソン、10分イ・ヨンレとドリブルで攻め上がる。イランも激しくタックルをかける。11分、左SHヌーリのクロスにCFファルドがヘディングシュート。しかし厳しいチェックの中で力弱くはずれていった。
 14分には右SBチャ・ドゥリがドリブルで上がっていく。イ・チョンヨンがさばいてク・ジャチョルがシュート。しかしイランDFがブロック。ここから両チーム激しいプレスの応酬、ファールの応酬。ゲームは硬直状態。
 それでも前半のうちは韓国が先手を取って攻め、イランが守る。24分、イ・ヨンレから上がっていたCBファン・ジェウォンが戻し、DFがクリアしたところをイ・ヨンレがシュート。26分、チャ・ドゥリがドリブルからクロス。
 28分、ハラトバリの蹴ったFKは韓国DFの頭に当たりあわやオウンゴール。GKチョン・ソンヨンがナイスセーブ。直後、パク・チソンがDFを集めて右のイ・チョンヨンに振り、ゴール前に抜け出すがトラップミス。
 38分、CFチ・ドンウォンからパク・チソンに渡り、イ・チョンヨン。そして45分、左サイドからチ・ドンウォンのカーブをかけたミドルシュートはわずかにポストの右側に外れていった。
 前半、韓国が意欲的に攻めていったが、イランも意識高くよく守った。しかし後半に入り、右SBをヘイダリを代えて、イランがいよいよ攻撃に出てくる。
 8分、カウンターからハラトバリのクロス。しかし韓国もイランの右SBヘイダリが上がった裏を突いて反撃をする。9分、パク・チソンが右からドリブル。倒されるとイ・チョンヨンが受ける。ボールが倒れたパク・チソンのところに転がると、やおら立ち上がってボールに寄せる。パク・チソンが若い韓国チームを引っ張る。
 18分、ク・ジョンチョルからチャ・ドゥリのクロスにチ・ドンウォンがヘディングシュート。GK正面。21分にはイランもハラトバリから右SBヘイダリのクロスに左SHヌーリ。空振り。こぼれたところをヌーリがシュート。GKが抑える。
 後半はイラン・ペース。26分にはパスミスを左SBサフィが奪いシュート。30分、ハラトバリのクロスにCBアギリーのヘディングシュート。イランは30分にこのゲーム存在感のなかったファルドに代えて左SHにシェジェイ。運動量のあるハラトバリをワントップに。33分、アンカーでキャプテンのネコウナムのFKはサイドネットを叩く。ロスタイムには右SHレザエイのクロスのこぼれをヌーリがシュート。イランが押すものの韓国もゴールを割らせない。まさに死闘の雰囲気を持って、延長戦に突入。
 さすがに延長戦は両チーム、体力が落ち、ゲームが硬直気味。特に韓国は中盤底のキ・ソンヨンの足が攣って満足に動けない。そんな中、パク・チソンが気迫を見せる。3分、パク・チソンがドリブルで前進。5分、チ・ドンウォンから途中交代のユン・ビッカラムを経てパク・チソンへ。6分、レザエイのドリブルをパク・チソンが止める。
 イランは途中出場のシェジェイが肩を打って倒れ、起き上ってこない。時間稼ぎと取られてイエローカード。緩い時間が流れる。ロスタイム。ユン・ビッカラムが右サイドからドリブルで切れ込み、ミドルシュート。イラン選手のチェックが一瞬緩んだ瞬間。間を抜けたシュートがゴール右サイドに突き刺さった。
 延長戦後半は韓国が全員守備。イランも必死の攻撃。5分、途中出場ゴラミーのポストプレイにレザエイが突っかけ、最後はティモリアンがシュート。GK正面。9分にはシェジェイのループシュート。しかし最後まで攻撃的な守備を怠らなかった韓国が守り切り、準決勝進出を果たした。
 まさに死闘。魂の戦い。やべっちFCで吉田のファールを忠告したセルジオ越後が福田の「若い日本代表」という発言に対してこうも言っていた。「誰が若いの?」
 韓国は21歳キ・ソンヨンが中盤の底でゲームを作り、両サイドのMF、イ・ヨンレは24歳、イ・チョンヨン22歳。今大会4得点のク・ジャチョル21歳。ワントップのチ・ドンウォンに至っては19歳。そして決勝ゴールを決めたユン・ビッカラムが20歳。これらの若手選手を29歳パク・チソン、30歳チャ・ドゥリ、33歳イ・ヨンピョ、29歳ファン・ジェウォン、30歳イ・ジョンスらのベテランが引っ張る。このゲームでもチャ・ドゥリイ・ヨンピョの両SBの再三の上がりと激しい戦い、そしてパク・チソンの気迫がどれだけ若手選手たちを励まし、叱咤し続けていたことか。
 できればイランが勝ち上がってきてほしいと思っていた。4試合、中東のチームとのゲームを続けてきた日本には、イランの方が組みやすかったはずだ。しかし韓国。前の大会では3位決定戦で敗れた。秋の親善試合ではドローで内容的には日本が上回ったと言われる。しかし本番での韓国は違う。このゲームを見れば、韓国は日本のはるか上を言っていることがよくわかる。余程の気力と挑戦魂を持って臨まないと互角にすら戦わせてもらえない。そんな気がするほどの厳しくすばらしいゲームだった。
 唯一日本に有利なのは、韓国がこれだけ厳しいゲームを戦い、かつ休養が1日短いこと。しかしそんなことを少しでも考えたら木っ端微塵になるに違いない。25日のゲームを見るのが今から怖い。