とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

日本を疑うニュースの論点

●読者には是非、大手メディアの報道を”疑う”という視点を持ってもらいたい。/もうひとつ、私が本書で読者に求めたいのは”政府という存在”を疑う力である。(P5)

 タイトルの「日本を疑う」とは、「日本の大手メディアを疑い、日本政府を疑う」という意味である。そしてメディアが報じない、または世論誘導を行なっていると疑う政治・外交問題、すなわち原発再稼働、憲法改悪、集団的自衛権、TPPなど安倍政権になって推進されるこれらの事項について苛烈に批判している。出版が25年8月のため、最近の特定秘密保護法国家安全保障会議NSC)法については取り上げられていないが、これらの法律に対しても痛烈な批判をしていることだろう。
 ただ残念なことに、孫崎氏がどれほど正論を書こうが、彼の言動がマスメディア等で取り上げられることは以前よりも少なくなってしまった。大手メディアの多くは体制側にいて、世論を誘導しようとする恣意的な報道が少なくない。自然、孫崎氏がTVや新聞等に登場する機会は一時に較べて大幅に減少している。「サッカーの結果は100%真実。天気予報は50%。政治について0%だ」というのは共産党政権下のチェコのジョークだそうだが、日本もあまり笑えない状況になりつつある。何しろ「何が秘密か、秘密」なのだから。
 ソ連では「プラウダ(「真実」の意)に真実なし」と言われた。日本のメディアに真実はどれほどあるのか。筆者は本書の「おわりに」を若い人へ向けた言葉で閉じている。日本の未来への憂慮と悲痛な思いが溢れている。

●安倍氏はひたすら嘘と詭弁を貫いてきた。だが、それは騙される国民の責任も重大だ。騙されまいとすれば、いくらでも情報はある。国民は自ら進んで騙されることを望んだのだ。(P48)
サンフランシスコ講和条約を考えるとき、もうひとつ忘れてはならない条約がある。同時に締結された日米安保条約である。日米安保は、日本の対米従属を決定づけた条約だ。つまり、「4月28日」を祝うことは、対米従属を肯定することを意味している。(P69)
●福島で悲惨な事故が起きてしまった。だが、この国の政府には全く反省も感じられない。事故の原因究明も終えぬまま他国に原発を売り込むなど、武器商人よりもタチが悪い。いつから日本は、これほどモラルのない国になってしまったのか。(P117)
原発問題にしろ、国防軍の創設にしろ、また憲法改正にしても、すべて最も大きな影響を受けるのは若い人たちなのである。自分たちの人生が、政府によって狂わされてしまうかもしれない。だが、若者たちの危機感はあまりにも薄い。・・・歴史とは、現在、そして未来を理解するためのものだ。だから私たちは、過去から学ばなければならない。とりわけ若い人たちには、歴史に目を向け、そこから将来について考えてもらいたいと思う。(P194)