とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

知ってはいけない

  『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』を読んだ後、本書まで読む必要はないと思っていた。それはある意味正しかったと今も思っているが、先日つい「知ってはいけない2」を買ってしまったので、まずは本書から読んでみることにした。本書はこれまで筆者が執筆または編集・企画してきた書籍の集大成、一般向けにわかりやすくリライトしたという感じの本だ。

 それでこれは前に読んだなという内容も多いのだが、『日本はなぜ、「基地」と「原発」を止められないのか』の中の改憲論や昭和天皇の役割などが語られていた部分はカットされ、もっぱら米軍による日本支配が法的にいかに進められてきたかという点に絞って書かれている。結論として「朝鮮戦争ジームが現在まで続いている」ということ。

 その朝鮮戦争も現在はまだ休戦中という建前だが、いよいよ終戦宣言の可能性も見え隠れする状況になってきた。それが現実化した時に、日米間の軍事を巡る属国状態は変化するのだろうか。

 本書ではもっぱら法的観点から、憲法、条例、交換公文、協定、日米合同委員会、そして密約などを検討し、現状に至る経緯や法的な状況を暴露しているが、そうした状況を変えるには法的に一つひとつ整理していかなくてはいけないのだろうか。現在の状況が、「突然の朝鮮戦争によって生まれた『占領下での米軍への戦争協力体制』が、ダレスの法的トリックによって、その後、60年以上も固定し続けてしまった」(P248)ということはわかるが、そのしがらみを一挙に振り解き、新たな関係を取り結ぶ、そうした方策はないものか。

 読めば読むほど、がんじがらめの状況に気持ちも鬱屈してくる。トランプの行動が世界情勢を大きく揺り動かす契機となることはないのだろうか。外圧や救世主を期待しても詮無いことはわかるが、そんな気持ちになってくる。マンガも入って軽い装丁ながら、重い内容の書物である。

 

知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)

知ってはいけない 隠された日本支配の構造 (講談社現代新書)

 

 

○日本がこれまで安保条約や地位協定によって巨大な特権を与え続けてきたのは、「日本の基地に駐留している米軍」だけではなく……すべての米軍に対してだった、ということです。/つまり、日本の防衛に1ミリも関係のない、百パーセント、アメリカの必要性だけで行動している部隊に対しても、それが日本の領土や領空内に「存在」している限り……大きな特権があたえられるということです。/その事実だけから考えても、日米安保の本質が「日本の防衛」などではなく、あくまでも、米軍による「日本の国土の軍事利用」にあることは明らかでしょう。(P77)

○「安保条約のような重大で高度な政治性を持つ問題については、最高裁憲法判断をしなくていい」……この判決により、「安保条約は日本国憲法の上位にある」ことが、最高裁の判決として、事実上、確定してしまったわけです。……この「日本版・統治行為論」は、判決の二週間前に合意されていた「基地兼密約」とセットになって、日本国内でのあらゆる米軍の行動に、完全に治外法権をあたえるために計画されたものだったといえるでしょう。(P148)

大西洋憲章の理念を三年後、具体的な条文にしたのが、国連憲章の原案である「ダンバートンオークス提案」でした。この段階で「戦争放棄」の理念も条文化され、世界の安全保障は国連軍を中心に行い、米英ソ中という四大国以外の一般国は、基本的に独自の交戦権は持たないという、戦後世界の大原則が定められました。/これはまさしく日本国憲法9条そのものなんですね。ですから憲法9条とは、完全に国連軍の存在を前提として書かれたものなのです。……日本国憲法は国連軍の存在を前提に、自国の武力も交戦権も放棄したということです(P176)

○この会談でクラークは、/「戦争になったら日本の軍隊(当時は警察予備隊)は米軍の指揮下に入って戦うことを、はっきり了承してほしい」/と吉田に申し入れているのです。……戦争になったら、誰かが最高司令官になるのは当然だから、現状ではその人物が米軍司令官であることに異論はない。そういう表現で、吉田は日本の軍隊に対する米軍の指揮権を認めたのです。こうして独立から三か月後の1952年7月23日、口頭での「指揮権密約」が成立することになりました。(P194)

○「突然の朝鮮戦争によって生まれた、「占領下での米軍への戦争協力体制」が、ダレスの法的トリックによって、その後、60年以上も固定し続けてしまった」/ということです。/だから現在、私たちが生きているのは、実は「戦後レジーム」ではなく「朝鮮戦争ジーム」なのです。(P248)