とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

トーナメント・オブ・ネーションズ第3戦 アメリカ対日本

 オーストラリアに完敗して1敗1分。アメリカ遠征の最後は世界最強アメリカとの対戦。もっとも今大会、アメリカはオーストラリアに敗戦。ブラジル戦も1-3とリードされた状況から逆転して何とか勝利と、アメリカも世代交代の最中でけっして盤石ではない。左SHラピノ、右IHロイドといったベテランもいるが、右SHピューや左SBショートなどの若手も混じる。アーツをアンカーに据える4-1-4-1の布陣。対する日本はCH阪口、右SB鮫島、左SH中島、CB宇津木とさすがにアメリカ戦はベテランを要所要所に置いてきた。それでも高倉監督はチャレンジをやめない。FWで田中美南とコンビを組むのは、代表初選出の櫨。左SBにはブラジル戦に続き、万屋が起用された。

 序盤からアメリカが飛ばしてくる。1分、CFプレスが仕掛けて、クロスに右SHピューがシュート。その後、日本も押し返すが、6分、左SHラピノのCKに右IHロイドがヘディングシュート。9分には左SHラピノのミドルシュートがバーをかすめる。日本も何とか対応して押し返そうとするが、アメリカの推進力がすごい。10分、CF田中美南にCHアーツがプレスをかけて奪い取り、左IHメウィスが左に流して、左SHラピノがシュート。そして12分、日本が攻め込んだ局面から、右SBオハラのフィードにCFプレスが走り込み、縦パスに左SHラピノが斜めに走り込む。必死でついていく右SB鮫島。だがスライディングをラピノが切り返してかわしシュート。アメリカが先制点を挙げた。

 18分にも左SBショートのクロスにCFプレスがボレーシュート。ボールを持つととにかく速い。それでも15分を過ぎて次第にスピードも落ちてくると、日本がようやくボールを持てるようになってくる。23分、右SB鮫島のクロスをFW櫨が落とし、CH隅田がミドルシュート。続く右SH籾木のCKから左SH中島がミドルシュートを放つが、GKネアーがナイスセーブではね返す。

 CH阪口が積極的に前に上がり、日本の攻撃を鼓舞すると、34分、左SH中島のパスを受けたFW田中がDFと競り合い、こぼれたボールにCH阪口が上がって縦パス。FW田中がGKをかわしてシュートを放つが、CHアーツがゴールライン上まで戻ってクリアした。アメリカは30分、右SBオハラがケガで、テイラー・スミスに交代する。38分には右SH籾木がミドルシュートを放つが、GKネアーがキャッチ。終盤は互角だったが、日本のシュートが弱い。前半は1-0。アメリカのリードで折り返した。

 後半頭、日本は左SH中島に代えて長谷川。左SB万屋に代えて北川を投入する。1分、CBダルケンバークのフィードに右IHロイドが飛び出してシュート。3分にも右SHピューのクロスにCFプレスがシュート。ハーフタイムを挟んでアメリカは再び体力を充電。後半序盤からまた飛ばしてくる。

 日本もオーストラリア戦とは違って、アメリカのスピードによく対応して、少しずつ日本のペースを作っていく。5分、左SH長谷川の縦パスから右SH籾木が右に展開。右SB鮫島のクロスをFW田中が右に流して、左SH長谷川がシュート。しかしGKネアーがセーブする。6分には右SH隅田がミドルシュート。8分、FW田中のポストからCH阪口がスルーパス。FW櫨が飛び出してシュートを放つが、シュートが弱い。GKネアーがキャッチした。アメリカは9分、CHアーツに代えて左IHロングを投入。メウィスがアンカーに下がる。

 そして15分、左SB北川のパスを右SBテイラー・スミスがカット。そのまま持ち上がってスルーパスに右SHピューが抜け出してシュート。アメリカが追加点を挙げた。ようやく日本がペースを作り始めていたのに、もったいない失点。18分にはFW櫨の縦パスを右SH籾木が落とし、FW櫨のスルーパスにFW田中が走り込む。GKネアーが飛び出して交錯するが、ゴールはならず。

 日本は19分、FW田中に代えて横山を投入。アメリカも20分、右IHロイドに代えてホランを投入する。23分、FW横山がドリブルで持ち上がり、スルーパスにFW櫨が抜け出しシュート。しかしポスト右に外す。27分、左SHラピノのCKに右IHホランがフリー。しかしシュートはポスト右に外す。28分、アメリカはCFプレスに代えてウィリアムズ、左SHラピノに代えてモーガン、右SHピューに代えてラルーを投入する。

 33分、CHメウィスが強烈なミドルシュート。しかしGK山下がキャッチ。日本は34分、右SH籾木に代えて中里を投入する。しかし35分、CHメウィスのスルーパスに右SBテイラー・スミスが走り込み、クロスに左SHモーガンが合わせる。シュート。アメリカが3点目を挙げた。41分にもCHメウィスの縦パスを右SHラルーが胸トラップで前を向いてシュート。ゴール右に外したが、ゴール前でアメリカの攻撃を抑えきれない。ゲームはそのままタイムアップ。3-0。日本はアメリカに完敗した。

 高倉監督としてはまだ経験を積む場として位置付けているのだろう。アメリカ相手に0-3とは言え、内容的にはある程度、日本の時間帯もあったし、よく抵抗していた。だが決めきれない。ゴールの差が実力の差。FW田中も収めようとしていたが、強引に奪われる場面も多かった。それでも審判はファールを取ってくれない。田中にとっても勉強になっただろう。櫨をFWで起用したのも身体の強さを見込んでのことか。だが、テクニック的には劣る。左SB北川は何度も失点の起点となった。これも勉強。そしてCB市瀬も力負けする場面が目立った。読みだけではカバーできない速さに対面したはずだ。

 いい勉強をしている。しかしそろそろ気持ちのいい勝利も見てみたい。解説を務めた永里亜紗乃が、W杯優勝チームとの違いとして、「テクニックは勝るが、勝ち方を知らない」といった内容のことを言っていた。そうかもしれない。永里優季や熊谷など海外で活躍する選手たちとの融合もそろそろ試すべき時のような気がする。

日本の近代とは何であったか

 私は筆者の三谷太一郎氏を知らなかったが、日本を代表する政治・歴史学者ということらしい。バジェットの紹介から始まった序章は難解で、これは最後まで行き着けないだろうと覚悟をしたが、第1章から「なぜ日本に政党政治が成立したのか」「なぜ日本に資本主義が形成されたのか」「日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」「日本の近代にとって天皇制とは何であったか」と逐次、日本の歴史を振り返りつつ検証していく段になると、途端に身近でもあり、わかりやすくなる。

 政党政治の成立は、本来、西洋からの独立を掲げた反政党内閣論者の伊藤博文が、貴衆両院の政治勢力を組織化するために立憲政友会を立ち上げたところから始まった。不平等条約からの脱出を目的に自立的資本主義の形成を目指した大久保利通と、彼の下で非外債政策を継承した松方正義、並びに、積極的産業化政策を継承した前田正名。その後、日清戦争を経て、高橋是清、さらに彼の下で薫陶を得た井上準之助の活躍により、国際的資本主義の時代へ入っていく。しかし、経済政策としての植民地政策は日本の場合、安全保障政策と一緒になり、日本独自の植民地帝国構想になっていく。

 こうした政治・経済の動きの中で、憲法はいかに成立していったかと考える時、実は憲法ではなく、教育勅語こそが近代日本人の精神を形作っていったことを指摘する。井上毅がいかに教育勅語を構想したか。なぜ、政治的命令ではなく、天皇自らの意思表明という形式にしたかなどの意図が明確に説明されている。昨今の教育勅語を再評価する風潮と考え合わせて、改めて教育勅語の意味と考えてしまう。

 最近は政治状況もかなり混沌としているが、現代は近代の後ろにあり、また将来は近代と現代の後に作られることを思うと、「日本の近代とは何であったか」という問いは、日本の将来を考えるにあたり、重要な視点の一つだ。難しかったが、読了すればなるほど、目から鱗が取れた思いがする。後世につなぐべき好著と言える。

 

日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)

日本の近代とは何であったか――問題史的考察 (岩波新書)

 

 

五・一五事件を経て成立した「政党・官僚の協力内閣」である斎藤實内閣に対して、蠟山が「唯一の道」として提言したのは、「議会に代わるべき権威ある少数の勅令委員会」、要するに天皇によって正当性を付与された行政権に直結する専門家組織による「立憲的独裁」でした。・・・私は、今後の日本の権力形態は、かつて1930年代に蠟山正道が提唱した「立憲的独裁」の傾向、実質的には「専門家支配」の傾向を強めていくのではないかと考えています。これに対して「立憲デモクラシー」がいかに対抗するのかが問われているのです。(P79)

〇日本の植民地帝国構想が経済的利益関心よりも・・・日本本国の国境線の安全確保への関心と不可分であったということです。ヨーロッパの植民地が本国とは隣接しない遠隔地に作られたのに対して、植民地帝国日本の膨張は、本国の国境線に直結する南方および北方地域への空間的拡大として行われました。いいかえれば、日本の場合にはナショナリズムの発展が帝国主義と結びつき、しかもそのことが欧米諸国とは異なる日本の植民地帝国の特性をもたらしたと見ることができます。(P151)

〇こうしてアジア諸国は、戦前・戦中は地域的覇権国たる日本によって、戦後は世界的覇権国たる米国によって課された「地域主義」から解放され、今や相互の対等性を前提とした「水平的統合」を志向する新しい「地域主義」を模索しつつあるように思われます。それはアジアにおいて、全く初めての歴史的実験です。(P200)

〇ヨーロッパにおいてキリスト教が果たしている「国家の基軸」としての機能を日本において果たしうるものは何か。・・・日本の憲法起草責任者伊藤博文は、仏教を含めて既存の日本の宗教の中にはヨーロッパにおけるキリスト教の機能を果たしうるものを見出すことはできませんでした。・・・そこで伊藤は「我国にあって機軸とすべきは独り皇室あるのみ」との断案を下します。「神」の不在が天皇の神格化をもたらしたのです。(P214)

〇相互矛盾の関係にある両者のうちで、一般国民に対して圧倒的影響力をもったのは憲法ではなく教育勅語であり、立憲君主としての天皇ではなく、道徳の立法者としての天皇でした。「国体」観念は憲法ではなく、勅語によって(あるいはそれを通して)培養されました。教育勅語は日本の近代における一般国民の公共的価値体系を表現している「市民宗教」の要約であったといってよいでしょう。(P241)

 

トーナメント・オブ・ネーションズ第2戦 日本対オーストラリア

 なでしこアメリカ遠征第2戦はオーストラリア戦。これまでも決して楽に勝てる相手ではなかったが、ここまで完敗したのは少しショック。しかしこれも経験だ。特に若い選手にはこれを糧にさらに成長してほしい。

 日本の先発はGKが池田。CBには市瀬と並んで、代表初出場の坂本。右SB高木、左SB北川の若いDFライン。ボランチは隅田と猶本。右SH中島、左SH中里。そしてFWは横山と田中。二人のFWと中島以外はまだまだ経験値が足りない。特にボランチの守備力に課題があった。一方、オーストラリアの布陣は4-1-4-1。ケロンド・ナイトが深く時にCBの間に下がって守り、ワントップにはカーが入って、常にDFの背後を狙い走り回る。中盤はゴリーがやや下がり目でバン・エグモンドがトップ下に入る感じ。右SHギールニクと左SHロガルツァがサイドに開く。

 開始1分、右SB高木のバックパスからGK池田が前方へキックしたところを右SHギールニクにカットされ、IHゴリーのパスからIHエグモンドがシュート。序盤からオーストラリアのプレスが早い。しかし先制したのは日本。CBケネディからボールを奪ったFW田中美南がドリブルからシュート。これで得たCKをFW横山が蹴ると、SH中島とのパス交換からFW横山がクロス。CB市瀬がフリックして、FW田中が肩で押し込む。日本が先制点を挙げた。

 しかし11分、オーストラリアはアンカーのケロンド・ナイトから大きく右に放り込むと、右SBラソが走り込みクロス。CFカーがシュート。すぐに同点に追い付いた。さらに16分、CB坂本にFWカーがプレスをかけると、ボールを奪い取ってそのまま独走。オーストラリアが勝ち越し点を挙げた。日本も17分、CH猶本のスルーパスからFW横山がミドルシュート。しかし枠と大きく外す。

 オーストラリアのプレスが早い。日本はなかなか落ち着いてパスを回すことができない。両SBの高木と北川も積極的にラインを上げるが、その後ろを再三狙われる。25分、CBポルキンホーネのフィードにCFカーが飛び出し、シュート。これはGK池田がナイスセーブ。28分、左SB北川のクロスにFW田中が走り込むが、DFがクリア。30分にはCB市瀬からボールを奪ったIHゴリーがミドルシュートを放つ。34分、右SHギールニクのCKから左SBカトリーがミドルシュート。日本も36分、FW横山の縦パスに走り込んだ左SH中里が切り返しからミドルシュートを放つが、枠を捉えられない。日本も盛り返して、何とか守り、また攻めていくが、崩し切るには至らない。

 そして43分、右SB高木の攻め上がりから入れたクロスをDFがはね返すと、CHケロンド・ケイトが大きくフィード。これにCFカーが走り込みシュート。一旦はGK池田がはね返したが、もう一度CFカーに決められて、オーストラリアに3点目を献上する。CFカーは前半のうちにハットトリックを達成した。45分には右SHギールニクのFKが直接バーを叩く。前半はスペースへ飛び出すオーストラリアの選手を止められなかった。パスの出所に対するケアも不十分。中盤でのプレスがかけられなかった。前半はオーストラリアが3-1とリードして折り返した。

 すると後半頭から日本は3人の選手交代。右SB大矢、CB宇津木、左SH長谷川を入れて、中里をCHに回した。するとようやく日本の守備が落ち着いてくる。連携と力強さが戻り、パスが回るようになる。2分、FW横山のポストプレーから右SH中島がミドルシュート。5分にもCH隅田がミドルシュートを放つ。

 しかしオーストラリアの前への推進力は変わらない。8分、CHナイトの縦パスをCFカーがフリック。左SHロガルツァがシュート。9分にもCHナイトのFKからIHエグモンドがヘディングシュート。GK池田がキャッチした。さらに12分、CFカーのクロスをCHナイトが折り返し、IHエグモンドががシュート。しかしこれは枠を外した。日本は10分、FW横山に代えてトップ下に籾木を投入。すると15分、FW田中の落としからCH隅田がスルーパス。左SH長谷川が抜け出してクロスに右SH中島が走り込むが、これが合わない。それでも後半は可能性のある攻撃をしていたのだが・・・。

 17分、CHナイトのクロスがDFに当たり、コースが変わって左SH長谷川の右腕に当たる。長谷川の右腕はちゃんと身体に添わせていたのに、ハンドの判定は厳しい。しかしこれで得たPKをIHエグモンドが落ち着いて決めて、4点目を挙げる。その後、オーストラリアは18分左SHフォード、22分右SHデバナ、30分IHバット、31分右SBカーペンターを投入する。特にベテランのデバナは速く積極的に仕掛ける。

 32分、IHゴリーのスルーパスがDFに当たってコースが変わり、右SHデバナが走り込んでシュート。36分、CFカーのドリブルから右に展開。IHゴリーのクロスにIHバットがヘディングシュート。直後にもCFカーが左SB北川との競り合いから抜け出して、クロスに左SHフォードがシュート。右SHデバナに当たる。37分にはSHデバナのドリブルからクロスにCFカーがシュート。オーストラリアの推進力をなかなか止め切れない。

 それでも後半はCB宇津木のポジショニングもよく、また中里が中盤でよく動いて、何とか互角で持ちこたえる。34分には右SH中島に代えて櫨を投入。代表初出場の右SH櫨だが積極的に走って仕掛けていく。38分には左SB万屋を投入した。43分、CF田中美南ミドルシュート。そしてアディショナルタイム2分、OH籾木の縦パスをCF田中が落とし、籾木がシュート。ようやく2点目を挙げる。しかし直後にタイムアップ。4-2。オーストラリアが完勝した。

 日本は若い選手がいい経験を積んだ。坂口も宇津木もいない。熊谷も鮫島もいない。最年長は右SH中島の26歳、という状況で、若い選手がゲームを作り切れなかった。特に中盤の守りが弱い。坂口や宇津木のような読みと経験のある守備ができなかった。その点では猶本の成長を期待したいが、まだまだ課題は多い。中里の方がいい守備をしていた。さて次はアメリカ戦。もう今度は甘い結果は期待しない。しかしベテラン勢と若手が融合したなでしこの可能性を見せてほしい。いい勝負ができるといいのだけれど。