とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

AFC-U23アジアカップ 準決勝 日本vs.イラク

 準々決勝、開催国カタールを相手に、延長まで戦って勝ち上がってきた日本。ここで勝てば8回連続の五輪出場が決まるゲームだが、万一、負けたら次の3位決定戦が五輪出場を賭けるゲームになる。それを思うと、グループリーグの第3戦、韓国戦の選手起用を思うと、大岩監督はターンオーバーしてくるかもしれないと思った。しかし、さすがにここ一番ではここまでのベストメンバーで先発メンバーを組んできたのではないか。

 細谷をワントップに、右WG山田楓喜、左WG平河。中盤は藤田をアンカーに、右IH松木、左IH荒木。DFは右SB関根、左SB大畑。木村と高井のCBに、GKは小久保。対するイラクは3-4-3の布陣。サリム・アフメドをトップに、右WGアリモサウェ、左WGアリジャシム。カラル・モハメドとザイド・イスマイルのダブルボランチに、右WBはムスタファ・サードゥーン、左WBにアフメド・ハサン。CBは右からフセイン・アメル、ザイード・タフシン、ジョセフ・イマム。GKはフセイン・ハサン。

 序盤から日本がパスを回して攻めていく。10分、CH藤田の縦パスから左IH荒木がスルーパス。CF細谷がシュート。準々決勝での初ゴールを経て、ようやく細谷の動きが良くなった。しかし11分にはイラクも左WGアリジャシムのミドルシュートがゴールを襲う。GK小久保がナイスセーブした。しかし、その後も日本がペースを握って攻めていく。19分、CH藤田の縦パスのクリアを左IH荒木がミドルシュート。21分には左IH荒木の縦パスに左WG平河が走り込み、クロスをCF細谷がシュート。しかしこれはうまく当たらず、GKフセイン・ハサンがキャッチする。

 しかし28分、CH藤田の縦パスを受けたCF細谷が反転してDFをかわすと、シュート。これが決まる。日本が先制点を挙げた。このゲーム、CH藤田のプレーがすばらしい。うまくゲームをコントロールし、決定的なパスを出す。CF細谷の反転の見事だった。34分、イラクはCFサリム・アフメドをリダー・ファディルに交代する。さらに日本は35分、左IH荒木のCKにCB木村がシュート。

 そして42分、左SB大畑が左サイドで仕掛けると、中へのパスをCH藤田がスルーパス。左IH荒木が抜け出してシュート。日本が追加点を挙げた。45+5分には、左IH荒木のCKをGKフセイン・ハサンがパンチングでクリア。右サイドで拾ったWG平河のクロスをCF細谷がシュート。これはDFがブロックしたが、前半はこのまま、2-0で折り返した。

 後半始め、イラクはアリモサウェを下げて、右SHニハド・モハメドを投入する。しかし後半も日本が攻める。3分、右SB関根の縦パスにCF細谷が走り込み、戻しのパスを右IH松木ミドルシュート。GKフセイン・ハサンがナイスセーブ。さらに左SB大畑のクロスから右WG山田がニアでフリック。左ポストを叩く。さらに4分にはCF細谷がミドルシュート。8分にもCH松木ミドルシュートを放つも、GKフセイン・ハサンがナイスセーブで弾き出した。

 イラクは10分、右WBムスタファ・サードゥーンのクロスをCFリダー・ファディルがヘディングシュートするが、GK小久保がセーブする。その後も攻める日本。13分には、左SB大畑のクロスを右IH松木が落とし、左IH荒木がミドルシュート。14分には左IH荒木の縦パスに走り込んだ右WG山田のクロスを右SB関根がスルー。右IH松木ミドルシュートを放つが、枠は外す。15分、イラクはCBフセイン・アメルを下げて、左SHにブリント・アザド。アリジャシムをトップ下に置く4-2-3-1の布陣に変えてきた。

 19分には左SBアフメド・ハサンのCJにCBザイード・タフシンがヘディングシュート。GK小久保がキャッチ。逆に21分、日本はCH藤田がドリブルで持ち上がると、左に流して、左WG平河のクロスにCF細谷がヘディングシュート。右ポストを叩く。23分には右SB関根のスローインを左IH荒木が落とし、右WG山田がシュート。GKフセイン・ハサンがキャッチする。

 28分、日本は山田に代えて、右WGに藤尾を投入。29分、イラクはCBタフシンのフィードに右SHニハド・モハメドが走り込み、クロスに左SHブリント・アザドがシュート。CB高井に当たって、シュートはバーを叩いた。35分、日本は荒木と松木を下げて、右SH佐藤とCH川崎を投入。藤尾をFWに上げる4-4-2の布陣に変更する。イラクも37分、リダー・ファディルとカラル・モハメドを下げて、右SHムンタダ・アブドゥラミールと左SBカラル・サードを投入。アフメド・ハサンをボランチ、アリジャシムを左SHに戻し、ニハド・モハメドとブリント・アザドの2トップに変更する。

 しかしその後は落ち着いてパスをつないで時間を使う日本に対して、39分右SHアブドゥラミール、44分CHアフメド・ハサン、45分CBタフシンと遠目からシュートを放つが、枠には届かず。45分には、細谷と大畑を下げて、CF内野航太郎と左SBにグループリーグ初戦でレッドカードをもらった西尾を出場させる。そしてタイムアップ。2-0。日本が勝利し、無事、パリ五輪出場を決めた。

 やはりこのメンバーがベストメンバー。右WG山田はあまり活躍する場面がなかったが、CH藤田が落ち着いてゲームを作り、CF細谷が決めた。松木、荒木、平河の活躍は期待どおり。右SB関根は相変わらずさすがのパフォーマンスを見せていたし、左SB大畑もがんばった。さあ、次は決勝。相手はウズベキスタンインドネシアの勝者となる。どちらが勝ち上がっても、日本が勝って当然の相手。4大会ぶり、2016年以来のU23アジアカップ優勝を狙おう。

J1リーグ第10節 浦和レッズvs.名古屋グランパス

 前節、首位のセレッソに勝利して2連勝。前日に行われたゲームでゼルビアが敗戦。セレッソも引き分けたため、勝てば首位に勝ち点で並ぶ可能性もある5位グランパス。一方、レッズはレイソル、ガンバに連敗して、12位と伸び悩んでいる。とは言ってもレッズのホーム。埼スタの大声援がスタジアムを包む。

 レッズの布陣は4-3-3。チアゴサンタナをトップに、右WG前田直輝、左WGに中島翔哉。中盤はグスタフソンをアンカーに、右IH伊藤敦樹、左IHに安居。DFは右SB石原広教、左SBに渡邊凌磨。ホイブラーテンとショルツのCBに、GKは西川。対するグランパスの布陣は3-4-3。永井をトップに、森島と倍井がシャドー。米本と稲垣のダブルボランチに、右WB中山、左WBに和泉。CBは累積で出場停止のハチャンレに代わり、右CBに野上が入り、センターに三國、左SBに河面。GKはランゲラック。

 放送の声も聴きにくいほどの大音響の中、アウェイのグランパスが積極的に前からプレスをかけていく。9分には左FW倍井が仕掛けてミドルシュート。ゴール右上に外れたが、出場停止明けも積極的に仕掛けていく。レッズも11分、左WG中島がミドルシュート。GKランゲラックがナイスセーブする。攻めるグランパスは19分、右WB中山のクロスのクリアを左WB和泉がボレーシュート。これはGK西川が弾いたが、続くショートCKから、左FW倍井がミドルシュートを放つ。

 ここまでグランパスが優勢でゲームは進んでいたが、24分、レッズが前からプレスをかけると、うまくクリアができずに、CH稲垣がミスキック。これをCFサンタナが前に送ると、CH稲垣の足に当たって左IH安居の元にこぼれてシュート。なんとここまで劣勢だったレッズが先制点を挙げた。

 それでも攻めるのはグランパス。32分、左FW倍井のFKはバーの上。レッズは40分、左SB渡邊のフィードをCFサンタナが収め、CHグスタフソンがシュート。GKランゲラックがファインセーブで弾くと、こぼれ球をグスタフソンが横に流し、右IH伊藤がシュート。これはGKランゲラックがキャッチした。一方、41分にはグランパスも、CB三國のフィードに走り込んだ右WB中山の戻しをCF永井がシュート。しかしCBショルツがブロックする。前半はこのままレッズの1点リードで折り返した。

 後半30秒、グランパスは左WB和泉の縦パスに左FW倍井が走り込み、クロスに右WB中山がヘディングシュート。しかし少し行き過ぎたか、枠を捉えられない。5分には右WB中山のパスを右FW森島がスルーパス。CH稲垣が抜け出し、クロスに左WB和泉がシュート。だがわずかにポスト左に外れた。このゲーム、右SB中山がよく裏を取り、攻撃に参加する。

 13分には、左WB和泉の縦パスから左FW倍井がドリブル。トラップがやや長くなったか、シュートは弱く、GK西川にセーブされた。直後の14分にはレッズがCFサンタナのスルーパスに右WG前田が走り込み、戻しのパスを左WB中島がミドルシュート。だがこれはポスト右に外れる。16分にはグランパスに決定的なチャンス。左FW倍井のクロスに右FW森島が走り込むが、手間でホイブラーテンにクリアされた。

 さらに21分、レッズはCHグスタフソンのCKにCBショルツがヘディングシュート。だがGKランゲラックが正面でキャッチ。22分、グランパスもCF永井のパスからCH稲垣がミドルシュートを放つも、GK西川がキャッチする。そして23分、PA左角からの右WG前田の仕掛けにCH稲垣の足がわずかに引っ掛かり、倒れる。流してくれるかと思ったが、VARの末、PK。25分、これをCFサンタナが決めて、レッズが追加点を挙げた。

 26分、グランパスは倍井、米本、野上を下げて、CFパトリック、CH椎橋、右CB内田を投入する。レッズも28分、前田に代えて右WGに松尾。その直後には右WG松尾のパスから左WG中島がミドルシュートを放つ。グランパスも35分、右FW森島のパスから右CB内田がシュート。だが、GK西川がキャッチする。36分、グランパスは稲垣に代えて、右FW榊原を投入。プロ初出場だ。森島がボランチに下がった。すると41分、交代した右FW榊原が積極的に仕掛け、ミドルシュートを放つ。

 レッズは44分、安居に代えてパンヤ。さらに45+1分、チアゴサンタナを下げて、CF興梠を投入する。必死に攻めるグランパスは45+2分、CH森島のCKにCB三國がヘディングシュート。GK西川が弾いたボールを左WB和泉がシュート。ようやく1点を返すが、その後はレッズがボールをキープして時間を使い、そしてタイムアップ。2-1、レッズが勝利した。

 グランパスは7試合ぶりの敗戦。順位を6位に落とした。残念ながらクリアミスにPKと、稲垣のプレーがいずれも失点につながってしまったが、内容はけっして負けていない。次はホームで昨季王者ヴィッセルを迎え撃つ。しかしヴィッセルは今節サンガに敗戦するなど、まだ調子を上げていない。勝つ可能性は十分にある。今日のプレーに自信をもって、次のゲームに臨みたい。今度はホームで勝利が欲しい。

<責任>の生成

 昨年は「スピノザ」「目的への抵抗」を読んだ。2020年の発行だが、國分功一郎の対談本が出ていた。中動態を中心に「責任」の問題を語っている。興味があったのでさっそく読んでみた。

 本書は、哲学者の國分功一郎と、小児科医で当事者研究を専門とする熊谷晋一郎の対談本である。國分の「暇と退屈の倫理学」を読んで、熊谷から連絡を取り、それから二人の交流が始まったと書かれている。当事者研究とは何か。どうやらそれは、精神障害発達障害などを抱える人々のための治療の一環として始められた活動のようだ。

 そして、自閉スペクトラム症である研究者、綾屋紗月の言説や経験を通して、自己と他者との関係、自己とは何かを考えていく。そのことと、能動態/受動態で考える自己と他者の関係、そして中動態の概念を持ち込むことで、自己と他者が対照的な関係ではなく、自己の不定形さが見えてくる。

 中動態の世界では、主体と客体が組み合わさって初めて自己が生成される。すなわち、そこには、能動態/受動態でみられるような、他者と屹立した明確な自己などはない。自己は常に生成変化するなかで形作られていく。そしてそこに真の意味での「責任」が生成される。「責任」を個人に期すのではなく、個人の関わりを見つつ、社会全体で共有するという視線。何かそれはとてもやさしい世界ではないか。最後に熊谷が紹介する「高信頼性組織研究」もすごく納得ができてくる。

 この対談は、先に書いたように「暇と退屈の倫理学」がきっかけで始まったと書かれている。しかし前に書いたように、すっかりその内容を忘れてしまった。やはりそろそろもう一度読み直すべきか。その前に「中動態の世界」も読まねばならぬ。でも本書を読むと、中動態について概ねのことはわかったような気がする。それはとてもやさしく、心地よい世界のようだ。楽しみだ。

 

 

○【國分】能動態と受動態の対立は「する」と「される」の対立として描き出すことができなす。これは行為や動作の方向性に依拠する定義です。矢印が自分から外に向かえば能動だし、矢印が自分に向かえば受動となるわけです。…能動態と中動態の対立においては、…「外」か「内」かが問題になっている…。主語が動詞によって名指される過程の内部にあるときには中動態が用いられ、その過程が主語の外で終わるときには能動態が用いられた。(P97)

○【國分】意志の概念によって行為をある主体に所属させることができるようになる。…行為がある種の私有財産となるわけです。ではなぜそのようなことが必要なのか。それは責任を考えるためです。ある行為が僕のものなら、その行為の責任は僕にあることになります。…このようにして行為を所有物をする考えの根拠とされるのが「意志」の概念であるわけです。(P114)

○【熊谷】ポスト・フォーディズムの社会は、中動態の反対の世界です。意志を持って前向きに、過去のことはすぐ忘れて、とにかく振り返らずに前だけを向いて生きていく。そうした、いわば反中道的な個人がますます求められている(P309)

○【國分】僕らは「使用」を「支配」の意味で考えていると思います。ペンを使うとき、ペンを支配して、みずからの思いのままにそれを使っている、と。しかし、自転車…の例からわかるように、むしろ使うためには、…主体と客体の組み合わさった何か、自己のようなものが構成されると考えねばならないのではないか。(P371)

○【國分】「魂」がいちいち指示をしていたら身体は動かない…。だから実際には、協応構造といって、勝手に身体の方でいろんなことをやってくれるわけです。にもかかわらず、魂が身体を支配するという考え方は非常に根強い。この考え方が能動態と受動態の対立に合致するからだと思います。(P384)

○【國分】主体を実体として前提としない哲学は責任を問うことができない、という考え方があります。しかし、それは違うのではないか。責任が生成変化であるとしたら、それは主語=主体を場所として、使用を通じて自己が構成される過程と無関係ではない。責任を引き受けるときにも、その責任に向かって何かを使用する自己が生成されていると考えるべきではないだろうか。使用という原初の光景を見定めることによってこそ、責任を引き受ける自己が生成しうるのではないだろうか。(P404)

○【熊谷】「高信頼性組織」とは…失敗が許されない組織のことです。…組織としての失敗をゼロにするためにどうしたらいいか…その結果出てきたのが、「ジャスト・カルチャー」です。要するに、失敗を許容する、犯人探しをしない文化です。…その代わりに自分が経験したことはすべて包み隠さず話さなくてはなりません。そして、組織全体の問題として全員が受け止め、考え、応答する責任は課せられます。…失敗も含めて賞賛され、組織にとっての貴重な学習資源として受け止められる。…本気で失敗を減らしたければ、失敗を許さなければいけない。(P413)