とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

神戸賛歌が胸を打つ ヴィッセルよ、よくがんばった

 Jリーグ最終節。NHK-BSの中継は、J2降格圏内のヴィッセル対レッズ。最下位のサンガと戦うFC東京よりもより降格の可能性が高いヴィッセル戦を中継するなんて、なんと可哀そうなと思ったが、何の、可哀そうだったのはFC東京NHKは視聴者の心を打つ熱い戦いを放送できた。さすがNHKというべきか。
 アルディージャFC東京ヴィッセルの中で、一番降格に近いのはアルディージャだと思っていた。そう思わせるほど一時アルディージャのゲームは崩れていたし、魅力にも欠けた。だが、ラファエルとイ・チョンスの力は偉大。対戦相手に恵まれた? 観客数偽装の糾弾の中で反骨魂が甦った? いずれにせよ期待に反して(?)アルディージャは残留圏内にはい上がった。
 次に落ちるのはヴィッセルだと思った。ヴィッセルはガンバ戦、アントラーズ戦を観て、その魂の戦いに心が打たれた。だが、気持ちで守り、カウンターで得点を挙げるサッカーはJ1にいなくてもいいと思った。FC東京には今野らの日本代表もいるし、米本、森重らの若い才能もいる。来年もJ1で残って面白いゲームを観たいと思った。
 しかしあまりに勝負弱かった。神様は日本の期待の若手たちに試練を与えたのかもしれない。昨年はレイソルトリニータ、一昨年はサンフレッチェ。いいゲームを見せていたチームが降格していく。雌伏の1年。レイソルのように1年で戻ってくることを期待したい。
 さて、このゲーム。ヴィッセルが悲しむ姿は見たくないと思いつつ、それでもどんな抵抗を見せるのか、それは見届けてやるのもいいという思いで見始めた。
 立ち上がりヴィッセルは強い気持ちで前からプレスをかけていった。しかしレッズのプレスも速い。お互い厳しいプレスのかけあい、ボールの奪い合い。しかし次第に技術に勝るレッズが攻撃するシーンが増えてくる。
 14分、エジミウソンから右サイド高橋のクロスにポンテが走り込む。が、北本がクリア。こぼれたところをエジミウソンがシュートを狙うが、今度は河本がブロック。ヴィッセルCB陣、魂の守備。
 18分にはレッズらしい攻撃。左サイド宇賀神からエスクデロ、柏木、ポンテとつないで右サイドの高橋がクロス。最後はエジミウソンがシュートを放つが、GK徳重がナイスセーブ。19分にもポンテがエジミウソンとのワンツーから抜け出しシュート。しかしこれも徳重が魂のセーブ。レッズはパスはつながるものの決定機はヴィッセルが身体を張って守る。
 23分には柏木のスルーパスエジミウソンがシュート。しかし24分、吉田が見事なトラップからスルーパスに小川が走り込みシュートを放つと、25分、CKのこぼれを吉田がシュート。この辺りからヴィッセルの守備陣がレッズの攻撃のリズムに慣れてきたか、レッズがパスを回してもチャンスを作ることができなくなってくる。
 そして31分、CB北本から左SB茂木に渡り、ロングフィードにFW吉田が走り込む。レッズのCB濱田が頭に当てたボールはちょうどいい長さのパスとなってGKと一対一。冷静に吉田が蹴り込み、なんとヴィッセルが先制した。
 レッズは、CB濱田、右SB岡本と経験の浅い若手が先発。このゲームが最後の指揮となるフィンケ監督。最後までやってくれる。結局、この采配がヴィッセルの勝利、FC東京の降格を引き寄せたかもしれない。ドローならばヴィッセル降格だったのだから。
 逆にヴィッセルはベテラン吉田の得点がチームに大きな勇気と元気を与えた。その後、前半はお互い攻め合うが得点には至らず。FC東京が前半失点し、ヴィッセルに希望の光が見えてきた。
 後半2分、レッズがポンテからエスクデロをポストにエジミウソンがシュートを打てば、ヴィッセルもその直後、パク・カンジョのスルーパスからボッティがクロス、小川がシュート。そして4分、北本が鋭くパスカットすると前線に蹴り出したボールに小川が走り込む。ペナルティエリアに入ったところで、濱田が足を引っ掛けファール。PK献上。これを吉田が慎重に決めてヴィッセル2点差。レッズは濱田をあきらめ、堀之内に交代。どうしてこの大事なゲームに堀之内を先発させなかったのか。
 さらに14分には、坪井に吉田がプレスをかけ、たまらず横にパスを出すと、堀之内が大きく前方へパス。柏木が受けるがここにボッティがプレス。こぼれ球がポポに渡り、中央でフリーで待ち構えるパク・カンジョにパス。3点目を入れてしまう。
 これですっかりヴィッセル・ペース。17分、GK山岸のクリアを拾った吉田がループシュートを見せれば、21分にはボッティの縦パスからポポのスルーパスに小川が走り込みシュート。25分、レッズが岡本のクロスにエジミウソンがオーバーヘッドキックを見せるも、北本が寄せてうまくシュートを打たせない。
 その後はレッズがボールを回すも、ヴィッセルが固い守備で得点チャンスを作らせない。28分、柏木のミドルシュート。36分、途中交代、鈴木啓太のヘディングシュート。しかし枠を捉えることはできない。
 逆にヴィッセルはロスタイム3分、途中交代、森岡が左奥ゴールライン際で一人抜いてのクロスに小川が飛び込み、残留祝砲の4点目。タイムアップの笛には、この日スタジアムで見守った田中や大久保、宮本らもピッチに降りてきて、まるで優勝したかのような大騒ぎ。和田監督の目にも涙が光った。
 ゲーム後、長駆、浦和まで駆けつけたヴィッセルサポーターから神戸賛歌の合唱。

俺たちのこの街に、お前が生まれたあの日、どんなことがあっても忘れはしない。
共に傷つき、共に立ち上がり、これからもずっと歩んでいこう。
美しき港町。俺たちは守りたい。命ある限り神戸を愛したい。

 和田監督の涙とコラボして、思わず目頭が熱くなってくる。しかし一方で画面はピッチに崩れ落ちるFC東京の選手たちを映していた。米本よ、平山よ、梶山よ、森重よ、権田よ、大竹よ、椋原よ・・・。この悔しさを胸にさらに大きくなれ。さらに勝負強くなれ。そして日本サッカーを支えていってくれ。