とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

なでしこ、あと1歩、あと数センチ、あとボール1個、わずかの差で金メダルに届かず。

 笑顔を浮かべて円陣を作るなでしこの姿に余裕とゆとりを感じる。アメリカもいつかのゲームのように序盤から圧倒的なプレスをかけてくることはない。それでもアメリカの勢いの方が勝る。3分、熊谷がモーガンに抜かれミドルシュートを打たれる。序盤、落ち着く気持ちが受け身に回った。攻撃にスイッチを入れるはずのパスもうまくつながらない。
 そして8分、左サイドをヒースが駆け上がり、クロスをモーガンが受ける。トラップで外へ大きく持ち出すと、岩清水の詰めが甘い。クロスがワンバックのところへ、直前でロイドが頭から飛び込む。ゴール。アメリカのこのゲームに賭ける気持ちが生んだゴールだった。石清水があと1歩詰め寄っていたらクロスのコースが限定されていた。あと2歩詰め寄っていたら、クロスのタイミングが遅れたはず。ゲームに乗り切れないうちの失点だった。
 それでもここからなでしこにいつもの集中力が戻ってきた。17分、大儀見のポストプレーから澤のスルーパスに川澄が左サイドを駆け上がりシュート。CBランポンがライン上で弾き返す。詰め寄った大儀見がシュート。18分、川澄のクロスに大儀見がヘディングシュート。GKソロがスーパーセーブ。シュートはバーに当たり弾き出される。26分、大野のドリブルで得たFK。宮間が蹴ったボールはPA内でヒースの手に当たるが、審判がファールを取らない。
 逆にアメリカも28分、DFからのフィードボールにモーガンが走り込む。岩清水が手前でヘディング、クリアしたボールが日本のゴールポストに当たる。危ない! だが、1点をリードされた後のなでしこは落ち着いている。
 30分、川澄のグラウンダーのクロスに大儀見が走り込むが、DFがかろうじてクリア。33分、阪口、鮫島とつないで川澄が縦に抜け出し、クロスを大野が落として宮間がミドルシュート。惜しくもバーにはね返される。37分、大儀見の落としから大野がミドルシュート。42分、宮間のアーリークロスに大野がファーサイドへ狙ったヘディングシュート。
 前半はアメリカに先制されたもののその後は日本がペースをつかみ、同点に追い付くのも時間の問題と思えるような落ち着きと攻撃を見せ付けた。
 後半も日本がゲームをコントロールする。6分、モーガンがドリブルで外へ開き、ワンバックめがけてクロスを入れるが、GK福元が手前でセーブ。7分にはスローインから大野が落とし、川澄のクロスに宮間がシュート。
 しかしこうしてやや前掛かり気味になったところに落とし穴。9分、ルーズボールの競り合いからラピノが岩清水に競り勝ち、ロイドが斜めにドリブル。阪口がマークするが、やや遅れたところに熊谷の詰めが甘い。強烈なミドルシュートが日本のゴールに突き刺さった。アメリカ追加点。もう1歩、熊谷が詰めていれば・・・。
 しかし日本はそれでしゅんとすることはない。14分、阪口に代えて田中を投入すると、ワンボランチにして、積極的にパスを回していく。そして18分、宮間のスルーパスに大野が抜け出しクロス。澤のシュートはCBランポンがブロックするが、こぼれ球に澤が詰めて、大儀見が流し込む。ゴール! 日本が1点を返す。
 アメリカは12分にラピノに代えてチェイニーを入れると、24分、チェイニーのFKをヘッドでつなぎ、上がっていたCBビューラーがシュート。しかしGK福元がブロック。逆に日本も27分、宮間のFKを大儀見が合わせるが、DFがクリア。
 32分、日本は鮫島に代えて岩渕を投入。川澄を左SBにして超攻撃的布陣に。そして38分、DFラインのパス回しに大野がプレスをかけると、ランポンのところで岩渕がボールを奪取。そのまま上がってGKをかわしファーサイドを狙うミドルシュート。しかしGKソロの手が伸びる。もう少し右側、ポストぎりぎりを狙っていれば届かなかった。日本最大の同点チャンスを逃す。
 その後は40分、チェイニーのFKからワンバックがヘディングシュート。44分にもチェイニーのCKからワンバックと攻め立て日本を押し込んだアメリカが最後まで守りきって勝利。五輪3連覇を達成。金メダルを手に入れた。
 日本はよく戦ったが2位、銀メダル。W杯に続いての連覇はならなかった。岩清水のあと1歩、熊谷のあと1歩、そして岩渕のあと数センチ。悔やむことはあるけれど、彼女らはまだ若い。次の五輪までにはさらに成長して、次のリオ大会では表彰式中央に立ってほしい。
 アメリカは金メダルにふさわしい闘志を見せた。しかし日本も銀メダルにふさわしい落ち着きと技術を見せた。その差はわずか。そしてわずかに運が足りなかった。表彰台でおどける彼女らの笑顔に戦いきった満足感が見られてホッとした。さあ、明日へ、次のW杯へ、五輪へ、そしてU-20へ。今日を最大限喜び、悔しがり、また次のステップへ進んでいこう。ありがとう、なでしこ。ありがとう、澤穂希