とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

2011年7月11日 FIFA女子ワールドカップ決勝 日本vs.アメリカ

 NHK-BSでなでしこが感動の優勝を遂げた2011年女子W杯決勝戦が放送された。澤の同点ゴールは有名だけど、他のゴールはどうだったっけ。今、改めて観直すことができるのはうれしい。しかも裏音声では、このゲームに出場していた鮫島と熊谷が出演し、当時実況を担当した野地アナウンサーがお相手。クラブW杯などで芸人などによる副音声は聴く気がしないが、今回はかなり深い話も聞けて面白かった。佐々木元監督や岩渕、岩清水らが一般視聴者と一緒になってツイッターを投稿。それも面白かった。岩清水は今、子育ての真っ最中か。

 日本は4-4-2の布陣。安藤梢と川澄の2トップに、右SHに大野、左SHは宮間。澤と阪口がボランチで並び、右SB近賀、左SB鮫島。CBは岩清水と熊谷。GKは海堀が守る。対するアメリカも4-4-2。ワンバックとチェイニーの2トップに、右SHオライリー、左SHラピノボランチはボックスとロイド。DFは右SBにクリーガー、左SBレペイルベット。CBはランポーンとビューラー。GKにはソロ。懐かしいメンバーが並ぶ。

 開始1分、左SHラピノのフィードにFWチェイニーが走り込むと、CB岩清水を抜いてシュートを放つ。GK海堀がナイスセーブ。アメリカの攻勢に日本はなかなか前にパスをつなげない。ミスパスを繰り返してはまたアメリカの猛攻を受ける。8分、左SHラピノのクロスにFWチェイニーがニアに走り込んで、シュート。9分、CHロイドのドリブルからFWワンバックミドルシュート。11分、CHボックスのクロスのクリアからCHロイドがボレーシュート。12分、右SHオライリーの縦パスにFWチェイニーが走り込み、クロスに左SHラピノがシュート。アメリカの猛攻が続く。

 18分にはFWチェイニーのスルーパスに左SHラピノが走り込み、シュート。ポストを叩く。日本の初シュートはようやく22分、右SH大野がミドルシュートを放つ。この後、ようやくアメリカの勢いも落ちてきて、日本がパスを回す場面も見られるようになってきた。それでも29分、FWワンバックミドルシュートには副音声の熊谷らが悲鳴を上げる。バーに弾かれた。当時プレーをしていた彼女らにしても、ゲームの進行状況を詳細には覚えていない点が面白い。熊谷と鮫島の二人で、反省大会を始める。

 それでも31分、左SH宮間の縦パスから右SH大野がドリブルで運び、スルーパス。FW安藤が抜け出してシュート。GKソロが正面でセーブしたが、日本が初めてチャンスを掴む。38分には左SH宮間のCKからFW川澄がミドルシュート。44分には右SH大野のパスにFW安藤が走り込むが、これはわずかに届かない。前半はスコアレスで折り返した。熊谷が「ワンバックのように強いFWは簡単に倒れないでほしい」とDFとしての本音を吐露。面白い。

 アメリカは後半最初にFWチェイニーを下げてモーガンを投入する。後半も序盤はアメリカが攻勢をかける。4分、右SHオライリーのクロスにFWモーガンがシュート。ポストを叩く。CH澤がクリアする。澤はこのゲーム、要所要所で存在感を示す。7分、CHロイドのシュートはサイドネット。序盤の攻勢を凌ぐと、日本も次第にパスをつないで攻められるようになってくる。16分にはCH澤の縦パスに右SB近賀が走り込み、シュート。アメリカも19分、右SHオライリーの縦パスにFWワンバックがヘディングシュート。GK海堀がファインセーブ。

 日本は21分、大野と安藤を下げて、丸山と永里を投入。二人をFWに上げて、川澄を右SHに下げた。しかし24分、日本が攻め込み、アメリカのゴール前でFW永里がボールを持つと、4人のDFで囲み、奪い取る。そして左SHラピノがフィード。FWモーガンが走り込んで、そのままシュート。ついにアメリカが先制点を挙げた。副音声では、走り込むモーガン接触しつつ入れ替われた熊谷が「もっと強く当たっていれば。コースをふさぐことができれば」と大反省。鮫島も守備ラインが甘かったと反省。いや面白い。

 しかし、先制された直後から日本が反撃を開始。28分にはCH澤がミドルシュートアメリカのプレスも弱まり、中盤がオープンになる。そして35分、右SH川澄の縦パスにFW永里が走り込み、クロスにFW丸山が走り込む。DFと縺れてこぼれたボールを右SBクリーガーがクリア。しかしこれを左SH宮間がカットして、左足アウトサイドでシュート。日本が同点に追い付いた。佐々木監督からも宮間のプレーを絶賛するツイッターが届く。さらに攻め込む日本。41分、右SB近賀のクロスにFW丸山が走り込むが、届かない。44分、右SH川澄のクロスにCH阪口がミドルシュート。しかし枠は捉えられない。タイムアップ前にはアメリカが攻め込む場面もあったが、このまま90分が過ぎる。勝負は延長戦に持ち込まれた。

 延長に入ると前半序盤、再びアメリカが攻勢をかける。1分、左SHラピノのCKにCHボックスがシュート。CH澤がブロックする。さらにCHボックスのクロスにFWワンバックがヘディングシュート。これはGK海堀がキャッチする。5分にもFWワンバックのフィードにFWモーガンが走り込み、切り返しでCB熊谷をかわしてシュート。ポスト左に外れる。左SB鮫島との間を抜かれただけに再び大反省大会。そして14分、FWモーガンのクロスにFWワンバックがヘディングシュート。強烈にネットに叩き込んだ。アメリカが勝ち越した。

 延長後半は日本が必死に反撃。でも集中したプレーに「楽しかった」と鮫島らが言う。「それって所謂ゾーンに入るってことですか」と野地アナウンサー。これも興味深い。4分、FW永里がドリブで運び、FW丸山がミドルシュート。9分、アメリカは左SHラピノに代えてヒースを投入。「ずるい」と声を揃える。「速いだけでなく、上手くパスもできる選手だ」と絶賛。しかし直後の10分、CH澤のフィードに右SB近賀が走り込む。GKソロをかわすが、CBランポーンがクリア。そして歴史的場面が訪れる。

 GKソロが治療をしている間に、宮間と澤らが打ち合わせをしていたと証言。「自分は打ち合わせのメンバーには入っていない」と熊谷。12分、宮間のCKにCH澤がニアに走り込み、右足ヒールでコースを変えると、わずかにワンバックに当たってそのままゴールに飛び込んだ。日本が同点に追い付いた。14分にはFW丸山を下げて、岩渕を投入する。そして延長後半のアディショナルタイム、もう一つの記憶に残るシーンが訪れる。CHロイドの蹴った縦パスにFWモーガンが走り込むと、PA手前でCB岩清水が決死のスライディング。レッドカードをもらうが、ゴールは防ぐ。続くFKも岩渕らが必死にクリアして、そしてタイムアップ。勝負はPK戦で決まることになった。

 アメリカが先行したPK戦は、ボックス、ロイド、ヒースと3人連続の失敗。一方、日本は2番手の永里が失敗したものの、宮間と阪口は成功。アメリカの4人目ワンバックがようやく1点を決めた後、日本の4人目は熊谷。思いっきり蹴ったPKは左上のネットに突き刺さり、日本がW杯初優勝を決めた。澤がPKの順番を変えた結果、熊谷が4番目になったこと。熊谷はコースを狙うことなく、ただ思いっきり蹴ったこと。そして決まった直後、すぐにそれと気付かず、他の選手の喜びようを見て我に返ったことなどの話も興味深かった。

 日本サッカー界にとって、本当に大きな事件だった。東日本大震災直後のW杯優勝に日本全体が勇気付けられた。インタビュー時の丸山の口調が今と変わらないのも面白い。コロナ禍だからこそ観られた再放送。J1リーグの7月4日、J2・J3リーグの6月27日再開が決まったが、なでしこリーグの再開はまだ発表されていないようだ。熊谷や鮫島の明るく元気な姿が見られたよかった。早くなでしこリーグの再開も期待したい。楽しい放送だった。