とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

欧州サッカー批評(07)

 第一特集は「戦術に王道なし」。メッシが戦術とまで言われるバルセロナのサッカーを分析。ドルトムントのクロップ監督の戦術を練習から分析。そして「超進化型3バックのメカニズム」ではイタリアで発展しつつある3バックを、発生の経過、チームごとの違い、導入失敗例から見る3バックの限界など、多方面から分析する。ピルロに支えられたユベントス。バランスと緊密な組織で作り上げるナポリ。そしてフィオレンティーナパレルモ、ラッツィオ。それぞれみんな違う。日本でもサンフレッチェとレッズ、FC東京レイソルとそれぞれ違うように。そして第二特集は「欧州サッカー崩壊のカウントダウン」。こちらではリーガ・エスパニョーラの危機が指摘される。
 さらに欧州サッカー批評ならではの楽しみが「欧州サッカークラブ紀行」。今号では、セルティックと並ぶスコットランド・リーグの雄でありながら、昨年、経営破綻し、今シーズンは4部リーグからの出直しを強いられているレンジャーズを取り上げる。愛されてきたチームは4部に落ち、ユース出身選手ばかりになっても多くのサポーターに支えられている。そして「欧州サッカー中堅国の現在地」では、アイスランドを取り上げる。昨年、日本代表とテストマッチを戦った国は人口わずか32万人。だが、スポーツは厳しい気候の中で人々を繋ぐ重要な役割を果たしていた。
 さらに衝撃的な記事が「フットボールから差別がなくなる日は来るか」。この記事で扱う差別がなんと「セクシュアル・マイノリティ」。同性愛者、両性愛者など。ゲイゆえに人生を狂わせた選手。レズをカミングアウトしたアメリカ代表のラピノーと前代表監督のスンドハーゲ。人種差別は知っていたけれど、正直こんな世界があるなんて思ってもみなかった。まさにサッカーは社会を映す鏡、それも光を集める鏡だ。それは社会の暗部にも。

●イタリアでリバイバルを起こした3バックは、戦力が限られた中で攻撃力を高め、同時にバランスを取るにはどうするかに知恵を絞った、イタリアの指導者たちの創意と工夫の業だ。・・・「カルチョとは継続した革新である。3バックもかつてのようなものではない。(P050)
●スペインの政治家は、そもそも何の解決もできない存在なのですが、解決のための取り組みがなされないテーマの一つがサッカーなのです。なぜなら、政治家に恐怖心を与えるほど社会的に大きな影響を持つものだからです」(P080)
●レンジャーズは破産し、新会社として再出発を切ったが、クラブの歴史が続いていることに変わりはない。現在、青いユニフォームを着てプレーするのは無名の若手が中心だが、ユース出身の彼らには明るい未来がある。ガスコインミカエル・ラウドルップがプレーしていた頃と同じ熱狂が、今もアイブロックスには渦巻いているのだ。(P089)
●「アイスランドはスポーツがコミュニティの基盤だ。学校を卒業した後も、スポーツクラブを通して人的交流が続けられるんだ」/厳しい気候や環境だからこそ人と人の繋がりは必要だ。横の繋がり、縦の繋がり、地域の繋がりがスポーツという媒介を通して一層と強くなる。アイスランドのクラブハウスやスタジアムに大家族のようなムードが漂うのはもっともだ。(P095)