とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評issue03

 「honto」で本書を購入しようとしたら、「現在お取り扱いができません」となっていた。「欲しい本」に登録したが、1ヶ月待っても連絡がない。それで「Honya Club」で注文した。届いたその日に「アギーレ監督解任」の報道があった。今号の特集は「監督失格」。まるでその日を待っていたみたいな納本だ。
 もっとも私はアギーレ監督を「監督失格」とは思っていない。今号で「アギーレは『監督失格』か?」という記事を書いている小澤一郎の意見も「失格ではない」というものだ。それよりも、「目を向けるべきは選手育成であり日本サッカーの日常だ。」と言う。アジア杯に準々決勝で敗退したのはアギーレ監督のせいではなく、日本サッカーのレベルが低いからだ。
 それにしても、協会にとっては、アジア杯準々決勝敗退は、アギーレ監督を解任するための絶好の理由となった。ついているというべきか。だが、マスコミが煽るようにいくら有能な代表監督を選考できたとしても、それでW杯に勝てるわけではない。いや、今回の解任で、世界の有能な監督は日本で代表監督をやろうとは思わないのではないか。
 今回のアギーレ解任と代表監督について思うことは、また別途、ブログに書きたいと思うが、僕らはいつまでも日本代表のサポーターでいるわけではない。そんなことをこの頃思っている。
 本書では、アギーレだけでなく、グアルディオラビエルサユン・ジョンファン城福浩ファン・ハールアンチェロッティゼーマン山口素弘ポポヴィッチ、ブラゼヴィッチ、美濃部直彦など実に多くの監督が取り上げられている。中でも傑作なのが、2012年にガンバの監督に就任し、公式戦5連敗してわずか21日で解任されたセホーン監督へのインタビューだ。なんと本人が「私は監督ではなかった」と言うのだ。何ということ。それでガンバはこの年、J2へ降格してしまうのである。
 監督論以外では、スウェーデン女子代表GKヘドヴィグ・リンダールを取材した「セクシャル・マイノリティの生きる道」、条件等でチケット価格を変動させるCPSについて提案する「世界のスポーツビジネス最前線」、それからレッズの補強を批判する小田嶋隆の「フットボール星人」が面白い。
 今回、ようやく1か月遅れで第3号を読み終えた。次号はすぐに来月発行される。今度こそ発行直後に購入しよう。そう、今度こそ10%offクーポンに惑わされないようにしよう。

フットボール批評issue03

フットボール批評issue03

●プレッシングの過程で、バイエルンの選手はマークの原則を外す。マークする相手選手と自陣ゴールの間にいるという原則を外し、相手ボールとの間に移動してしまうのだ。・・・原則どおりにマークしていてもボールを奪うチャンスはあるがパスを通される可能性は残る。バイエルンのように前に出て、ボールホルダーと受け手の間に入ってしまえばパスは通らない。その点でバイエルン方式のほうがプレッシングの強度は増すわけだ。もちろんリスクはある。・・・バイエルンには、このリスクにノイアーという保険がかかっている。(P010)
●日本サッカーを成長させるためには、新しいチャレンジをする、またはやっていることを最後までやり抜く勇気が少し足りないと私は思います。失敗を恐れる気持ちが日本サッカーの成長にブレーキをかけているのではと感じています。(P062)
●差別を防止しようとするがあまり規制や管理で縛りつけること、つまり上から押し付けることが問題解決につながるのか?という疑問だ。・・・何も差別を容認しろと言っているのではない。差別問題についてはこれからも議論されるべきだ。一方、「正義」という使い勝手のいい言葉を盾にして何もかもがんじがらめにすることが問題を悪化させてしまうということもあるのではないか。(P099)
DNPは・・・諸条件と需要に応じてチケットの価格を変動させる。簡単にいえば人気の試合のチケットは高騰し、人気のない試合のチケットは格安になる。・・・DNPのメリットは、条件の良くない試合でも・・・観客が入ること、成績が良ければ試合の価値が高まり収入が増えること、シーズンを通して増収になることの3点が挙げられるが、それだけではない。シーズンチケットの売り上げも伸びるのだ。(P103)
●浦和の戦力補強は、一見、「カネのチカラ」にものを言わせているように見えるが、その実、「安全策」なのだ。・・・リーグを代表するビッグクラブは、もっとリスクを取りに行かないといけない。ビッグクラブというのは、単にカネのあるクラブや観客動員の多いチームを指す言葉ではない。リーグを代表する大胆な強化と経営を通じて、その国のサッカーの未来を見せてくれるのでなかったら、そんなものは、ただの金満チームでしかない。(P105)