とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

玉村警部補の巡礼

 久しぶりに海堂尊を読んだ。今回は玉村警部補と加納警視正の四国巡礼珍道中を描くもの。もちろん巡礼中に勃発する事件を解決し、さらに遺体すり替え・人生ロンダリングの仕組みも暴いて解決していく。だが、海堂尊のミステリーは、あくまで明るく軽妙なのがいい。それでいてちゃんと専門家としての医療事象に対するしっかりとした骨格があり、しっかりとした医療ミステリーとなっている。だから楽しい。

 ということでたまには海堂尊で癒されたい。そういえばゲバラ・シリーズはどうなっているんだろう。こちらも早く続編を期待したい。

 

玉村警部補の巡礼

玉村警部補の巡礼

 

 

○「俺は成り行きで遍路を始めた、いわば成り行き遍路だ。空海坊主の助けなぞいらん。俺は俺のやり方で四国霊場八十八ヵ所を制覇してやるさ」/「ほな、あんさんは一体、何のためにお参りをなさっておるのどすか?」/老婦人の素朴な質問は加納の虚を衝いたようだ。しばらく黙っていたが、やがてきっぱり言う。/「俺が俺であり続けるために、かな」(P46)

○鑑真和尚が、弟子・慧雲に継がせた古刹をあっさり反古にして自分の寺を建立するとは、空海坊主はアバンギャルドすぎる。・・・僻地の四国に八十八ヵ所も寺を作り客を呼び込もうなんて、相当強気なイベント・プロデューサーだ。ひとつ間違えれば詐欺師だが、千二百年経った今となってはすべてが正当化されてしまう。一人殺せば人殺し、百人殺せば戦場の英雄という、あれと同じだな(P233)

○「人生はただ一度、歩ける道は一筋のみ。それはすべて一本につながっている。人生とは壮大な一筆書きで、遍路はそのほんの一部にすぎないのだぞ、タマ」(P269)