とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

堤未果のショック・ドクトリン

 「ショック・ドクトリン」は、本書でも紹介されているように、アメリカの同時多発テロやハリケーンカトリーナによる災害などが発生した後の2007年に、ナオミ・クラインにより執筆され、刊行された本のタイトル。同時多発テロの際に、世界貿易センタービルに隣接する世界金融センタービルで働いており、必死になって逃げた経験。そしてその後のアメリカの異常な世相。しばらく日本に帰って、「人絶ち」の日々を過ごした後、ジャーナリストとして立ち上がった筆者。その時に思い出したのは、放送ジャーナリストだった父の顔。

 彼女の父親・ばばこういちが企画した「なっとくいかないコーナー」のことは私も覚えている。筆者の夫が薬害エイズの被害者であり、参議院議員川田龍平なことは知っていたが、父親のことは知らなかった。ましてや、同時多発テロの際に、逃げ回った壮絶な経験のことは。そうした経験があってこそのその後の活動であり、批評精神であり、視座であった。

 堤未果はこれまでも、ショック・ドクトリンをテーマとする本を何冊も書いてきた、と思ったら、少なくとも「ショック・ドクトリン」と題する本はなかった。だが、本書で取り上げ、警告するテーマはこれまでと変わらない。コロナ禍とマイナンバーカード、地球温暖化と再エネやEVなどの環境ビジネス。そして今、まさに能登半島地震が発生した。さっそく「北陸割」なる頓珍漢な政策が提案されているが、今後はもっと危ないショック・ドクトリンな政策が実施されるかもしれない。気を付けよう。

 それにしても、世界は今後、どこへ向かっていくのか。今、私が望んでいるのは、痛みや苦しみなく死ぬことだけなのだが、それさえ許されない世界になりつつあるような気がする。ショックなどいらない。どんな事態もショックとして受け取らない心があれば、パニックにならなくて済む。なるようになる。そのためには無用に他者や社会に期待しない覚悟が必要なのだろうか。

 

 

○個人情報を第三者に渡すときは、利用目的をクリアにして本人の同意を得るのが原則でした。けれど…肝心のそのルールがどんどんゆるめられている…。2015年には、「個人を特定できないように加工したデータなら企業が本人の同意なしに外部に売ってもOK」と法律が改正され、…2016年には…行政や独立行政法人にも拡大…2020年には…匿名加工よりさらに簡単な「仮名加工」でOKにしてしまいました。

○テレビや新聞、政府の言う台詞の中に「緊急事態」という言葉がやたら目につくようになったら注意してください。/なぜならショック・ドクトリンを実施する側にとって「緊急事態」とは、憲法や法律、民主主義や民意といった「障害」を一気に消し去る、魔法の言葉だからです。(P160)

○現在のWHOの科学諮問委員会を見てみると、15人の委員のうち8人がファイザー…など大手ワクチンメーカーと製薬企業から多額のお金を受け取っています。/さらにWHO自体も、予算の半分を占める民間寄付者の大半がワクチン推進団体とワクチンメーカー、製薬会社なので、もはや中立な公衆衛生の判断がされているとは思わないほうがいいでしょう。(P172)

○私たち子どもはバカじゃない。…戦争も飢餓もホームレスも全部、原因は一つですよ。自分とお金儲けのことしか考えていない大人たちのせいです。/気候変動を、私たちをコントロールするための理由に利用している。/イギリスの政府は、政治家のふりをした、強欲で自分やお金のことしか考えない、ニセモノたちに乗っ取られてしまいました。(P217)

ショック・ドクトリンの特徴の一つは、緊急事態を理由に導入されたシステムが、平時になった後も撤去されずにそのまま残され、いつの間にか定着してしまうことです。(P226)

○世界で最も温室効果ガスを出しているのは各国の軍隊。ダントツの1位は…アメリカの国防総省です。…軍事産業はどの国にとっても機密情報扱いの分野ですから、今後も透明性はあまり期待できません。…ショック・ドクトリンの仕掛けは、戦争やテロなど過激な暴力だけではない…。民主主義や環境保護、人権、平等など、人々の善意に乗っかった美辞麗句のキャンペーンほど、悪用されないようにしっかり見極めねばなりません。(P272)