とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

気力・知力・技術で引き寄せた「絶対に負けられない戦い」


 金曜日の夕方、突然、チケットをもらったので、急遽行ってきました、日本vsオランダ戦。と言っても、南アフリカに1日で行けるわけもなく、豊田スタジアムで開かれたパブリック・ビューイングに参加。みんなと一緒に盛り上がってきた。
 周りは9割方、代表のレプリカ・ユニフォームを着た中で、普段着の中年夫婦が二人ぽつんと。それでも早い時間に行ったので、まずまずの席に座ることができ、楽しい時間を過ごしてきた。周りのみなさん、場違いな二人を放っておいていただきどうもありがとう。
 それにしてもみんな騒ぎたいんですね。隣に座った中年女性組は、観戦中「ダメだろう!」と怒鳴っているし、反対側の男性は一人で黙々と拳を握りしめ応援していた。前は子供連れの夫婦でご主人がゲーム中、好プレーに対して大きな声で選手名の連呼を始め、周りの応援を呼び起こしていた。もちろん前後・周辺にはグループで来た若者が思い思いの扮装や応援グッズを手に盛り上がっている。進行役のアナウンサーが言うように「この気持ちが南アフリカに届く」わけもなく、国際電話の森山(元グランパス)との会話すら途切れがちだったが、そんなイベントなどどうでもいい。日本代表のパフォーマンスはみんなの心を熱くさせた。
 先発メンバーは日本、オランダとも前戦と同じ。イエローカードをもらっている阿部を温存するかと思ったが、阿部の役割は誰にも替えがたいのだろう。そのことをゲームが始まって認識した。4分、ファンペルシーがファンデルファールトとのパス交換からクロスを上げるが、中澤、長友で確実にブロック。10分、ファンデルファールトからファンブロンクホイストのクロスにカイトがオーバーヘッドで合わせるが、闘莉王が弾き返す。
 日本は、アルゼンチン戦の韓国とは違い、立ち上がりから前線でプレスをかけ、中盤から後ろでは確実に守備ブロックを形成し、マークの受け渡しを行う。特に中盤の中央で阿部が前後左右に気を配り、絶妙の高さを維持して、日本の守備全体をリードする。最初の10分間を守り切ったことが大きかった。11分、松井が起点となって長友がミドルシュートを放つと、16分には駒野のスルーパスに遠藤が走り込み、跳ね返りを松井が受けて本田にスルーパス。ここから次第に日本ペースになって、オランダはボールをキープしても決定的な場面がほとんど作れなくなってくる。
 33分、遠藤のFKを本田がヘッド。36分のFKには闘莉王がヘッド。そして37分、松井のスルーパスに駒野が長い距離を走ってクロスを入れると、跳ね返りを本田、遠藤とつないで松井がミドルシュート。前半は互角以上の展開で終えた。
 前の動きを封じられて攻め手がなかったオランダは後半からスナイデルを前に上げて圧力を強めてくる。6分、ファンデルファールトのFKを闘莉王が跳ね返すと、続くCKも闘莉王が高さで競り勝ち、跳ね返す。
 しかし8分、スナイデルからファンブロンクホルストに出て左からクロス。これも闘莉王がヘッドで弾き返すが、やや弱くファンペルシーが拾うと、落としたところをスナイデルが豪快にミドルシュート。GK川島が見切った動きで右へ飛ぶが、途中で反対側にスライドしたボールを止め切れず、先制点を許してしまう。ああ!残念!
 しかしそこで落ち込まないのが今大会の日本代表。11分、12分と大久保が気力を奮い起すミドルシュートを放つと、遠藤も連続したCKに憎い限りの落ち着きを見せる。15分には遠藤のFKを阿部が頭で逸らせてゴールを狙う。
 ここで疲れの見えた松井に代えて中村俊輔を投入。しかしこれがよかったかどうか。セットプレーが続いたのも松井や大久保がよく仕掛けていたから。この後結局、俊輔がセットプレーを蹴る機会は1度しかやってこなかった。逆に俊輔のところでボールを奪われるシーンが見られるようになる。
 24分の惜しくも本田に届かなかった駒野のクロスも、元はと言えば俊輔のところでボールを持ちすぎ、かろうじて掻き出したボールを受けた大久保のパスによるもの。27分、オランダがファンデルファールトに代えてエリアを投入すると、日本も長友を右サイドに代えて応対。しかし33分、俊輔のところでエリアにボールを奪われ、ファンペルシーが抜け出してシュート。40分にはエリアのスルーパスアフェライが裏を取って抜け出し、ドリブルからシュート。川島のナイスセーブに救われる。
 43分にも俊輔から。カイトに奪われフンテラールをつないでアフェライがシュート。川島が弾いたボールを闘莉王、中澤で何とか外に蹴り出した。松井のように勝負ができず、深い位置で守れば敵のターゲットとなってボールを奪われ、そのカバーに阿部が画面に登場する機会が増える。やはり今の俊輔は代表では使えない。45分、長友から闘莉王のヘッドで抜け出した岡崎が惜しいシュートを放つが、反撃もそこまで。結局0-1でゲームを終えた。
 しかしこれ以上失点しなくてよかった。次はデンマーク戦。1勝1敗同士でグループ2位を争う戦い。万一、デンマークと同じ0-2だったら、カメルーン戦で2点を取って総得点で上回るデンマークに「絶対勝利が必要な」状況だったが、0-1で踏ん張ったことにより「引き分けでもいい」状況になった。
 「絶対勝たねばならない戦い」から「絶対負けられない戦い」へ。この違いは大きい。深夜3時半キックオフのデンマーク戦。大会前は録画でゆっくり観るつもりだったが、どうしても生で観たくなる。観るのはいいが、その後の1日が心配。やはり休みを取ろうかどうしようか。日本代表の頑張りがうれしい悲鳴に変わった。