とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評issue08

 今号の特集は「J1全18クラブ『主力選手』の通信簿2015」というのだけれど、これが正直、全くつまらない。ただ淡々と、各チーム6名の点数と批評が並べられているのだが、どういう評価基準で誰が評価しているのかもよくわからず、どうやら各チームの番記者が点数をつけているようだが、それではなおのこと、各チームを横断して比較することもできない。いったいこの点数はどう読めばいいのか。そしてこの企画をどう楽しめばいいのか。

 フットボール批評では時々こうした、ただデータを並べただけの記事が掲載されるが、きちんとその意味を解説してくれないと全く楽しめない。そういう意味では18×2=36ページがほとんど無駄なページになってしまった。そしてそのためにその他の記事も薄っぺらな印象がする。結局楽しめたのは、中山雅史アスルクラロ沼津への加入を記事にした宇都宮徹壱の記事くらいだったりする。少し残念だ。

 その中で、小田嶋隆の「フットボール星人」では、ラグビーのエディー・ジャパンの戦いをサッカーの日本代表に比較して見せる。「コレクティブな戦い方で一対多を確保する」なんて所詮、敗北主義だという主張はスカッと面白い。コカ・コーラ並みの清々しさ。日本のCBに必要なのはこういう発想なのかもしれない。いっそのことJリーグのGKとCBは外国人選手で埋めてしまえという西部謙司の主張も一理あるかもしれない。

 

フットボール批評issue08

フットボール批評issue08

 

 

 

○「100年を超えるミランのクラブ史上最悪とまでは言わないが、間違いなくワースト3に入る10番。残念ながら、それがホンダだ」/そんな者たちが熱烈に応援していることや、そんな彼らが愛するミランの10番をしっかりと見ているということに改めて思いを馳せて、今を黙して耐えてピッチの上で結果を残してもらいたいと切に願う。(P005)

○清水の攻撃終了から広島のGKがフィードを蹴るまでには実に10秒もの猶予があったんです。/いわゆる“ネガティブ・トランジション(攻撃から守備への切り替え)”に要す時間は通常、約3秒から5秒以内とされるのがセオリーである以上、この場面における清水の守備がチーム全体としていかに緩慢であったのか容易に理解されるはずです。(P058)

○ベンチ入りできなかった若い選手たちに混じって、48歳の元日本代表が懸命に汗を流していた。・・・そこには出番を与えられなかった悔しさが見て取れる。・・・いい意味で何も変わっていない中山雅史の姿が、そこにはあった。/そしてJFLの風景もまた、何も変わっていない。・・・自由で大らかで懐の深い、いつものJFLの風景がそこにはあったのである。(P075)

○早い話「総力で敵を圧倒する」であるとか「コレクティブな動きを通じて局面での一対多数を確保する」みたいな言い方で説明されている戦術は、実のところ、わたくしども日本人が一対一の競り合いで勝てないことを前提とした戦い方でもあるわけで、残酷な言い方をするなら、敗北主義に根ざした方針だったということになる。/エディー・ジャパンのラグビーが画期的だったのは、フィジカルコンタクトから逃げないことをまず最初に戦術の基礎として徹底したことだ。(P111)