日大アメフト事件は、加害者である学生の記者会見。そして、日大アメフト部の監督・コーチによる記者会見があり、当初、想定もしていなかった様相にどんどんと進んできている。やっぱり加害学生の記者会見がすごかった。「自分にはもうアメフトをやる権利がないと思う」という言葉は、真情を語っていると思うが、それに対する「戻ってきてほしいと思っている」という監督・コーチの言葉は、気持ちはともかくとして何らかの行動を起こす意図は微塵も見られず、あまりに対照的だった。心から反省し、自責の念を感じている者と、とにかくこの場をやり過ごしたいと考えている者との差が、ここまで明確に露わとなったことはないのではないか。
「この加害学生は今後どうなるだろうか」と妻が言うので、「逆に、多くの企業から就職採用の話が殺到するんじゃないか」と答えた。彼の記者会見はそれほど感動的だったし、こうした経験をしてきた者は、二度と同じ悪行を犯すことはないだろう。何よりそのまっすぐな性格が企業側からすれば魅力的に見える。
この事件に関連して、様々なコメンテーターが多くのワイドショーに出演して、いろいろなコメントを話している。その中で、脳科学者の中野信子が言った言葉が記憶に残っている。「この学生は部員からの信望も厚かったのではないですかね」。コーチから「優しすぎる」と言われた加害学生。そして、日本代表に選考されるほどの実力がある。監督やコーチは、部員からの信望厚いこの学生を追い込んで非行をさせることで精神的に支配し、加害学生を利用してチームのコントロールをしようと企んでいたのではないか。だから一時先発から外し、日本代表の辞退を指示し、この状況を脱するには自分たちの指示に忠実に行動するしかないとないと思わせ、しかもその行動が悪事であればなおのこと、監督らと共犯関係となって精神的な支配下に置くことができる。ただ誤算だったのは、加害学生を追い込み過ぎて、あそこまで露骨な反則行為を行うとは思っていなかった。外部から指摘される事態になるとは思っていなかった。
つまり常習的に行っていた支配のための方法ということですね。だから、監督らは自分たちの何が悪かったのか、今でも理解できていないのではないか。心底から悪いと思っていないから、謝罪会見が言葉だけのものになってしまう。
それにしても、この一連の言動や経緯を見て、まるで今の安倍政権みたいと思う人は多いのではないか。監督らが安倍総理や柳瀬元首相補佐官など、加害学生は愛媛県職員。もっとも愛媛県職員は何も悪行はしていないので失礼かもしれない。それなら籠池氏か。いや、そこまで先日の学生は悪くない。ただ、安倍総理らは内田監督らと同様、自分たちの行動の何がまずかったのか、本当のところ理解していないのではないか。何も悪いことはしていない。理不尽な追及を受けている。そうした心の内がそっくり内田監督らと一緒になって、ダブって見える。
それにしても先日の加害学生は実に爽やかだった。誰しも間違いはある。それをあそこまで堂々と謝罪できる人は少ない。いやこれまで見たこともない。親はいったいどういう人だろうか。どんな育て方をするとああいう人間に育つのか。今やわが家では、被害者と加害者が逆転して、加害学生こそまるでヒーローのようになっている。
