とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

あきらめなければ道は拓ける ~朝の来ない夜はない~

 「まあ、何ともクサいタイトルだ」とお思いでしょうが、湯澤剛氏の講演を聞いてきました。湯澤剛氏と聞いても「誰?」と思う人がほとんどでしょうか? 私も講演を聞くまで、胡散臭い感じを持っていた。案内のチラシに印刷された顔写真もそんな感じだったし。

 でも実際はかなりすごい人。父親の急死に伴い、40億円の借金を抱える会社(居酒屋チェーン)を受け継ぐことになり、そこから再建を果たしたという話。もっとも同じ境遇になる人は少ないだろうし、冷静であれば財産放棄をするはず。実際、NHKの「逆転人生」に出演した時に、コメンテーターの方からそう言われたとのこと。それでも、そうもできずにズルズルと行ってしまったことは理解できないでもない。要するに自営業者のバカ息子だったということ。その点では私も同じ境遇になる可能性もあった。幸い、私の父親は叔父に引き継ぐまで、大きな債務を背負うことなく(一時はかなり厳しい時もあったとは聞くが)、何とか経営を続けてくれた。

 どうやってこの負債地獄から脱したかということはたぶん湯澤氏が執筆した「ある日突然40億円の借金を背負う―それでも人生はなんとかなる」に書かれていると思うので割愛。以下、講演の中で心に留まった言葉を書き連ねておこう。

 まず、経営を引き継ぐと決めてしまってしばらくした時、「5年だけ頑張る」と期限を決めて取り組もうと思ったとのこと。現状を直視し、むやみに結果を追わず、今「やるべきことをやるだけ」とプロセス重視で取り組んだ。そして、「弱みではなく強みに注目。できないことはやらない。やらないことを決める」。これは、中高年客しかいない現状から、女性層を意識した新店舗を開店した結果、失敗に終わったことを受けての思い。雑念に振り回されるのではなく、できることだけを真摯に行うということは、人生においても重要だ。

 そしてある程度、負債の償還も進んで来た時に、食中毒や店舗の火事、ベテラン社員の病死という三重苦に直面する。それらは結局、経営者として借金の返済、そのための利益追求ばかりをしてきた結果だと反省するのだが、すぐには変われない。そうした時に先輩経営者から「何のために経営しているのか」と聞かれ、絶句した。そこでようやく次のような経営理念を掲げることとなる。「人が輝き 地域を照らし 幸せの輪を拡げます」。一緒に働く仲間とともに成長し幸せになりたい。地域に必要とされる店や会社になりたい。もちろん理念先行ではダメだろうが、理念なく利益追求をしていてもやはり社員は離れていってしまう。

 こうして現在に至るわけだが、ここまで来ることができた要因を「自分が源。自分の捉え方次第」という言葉で表現した。どんなにしんどい状況であっても、視野をむやみに広げず、常にポジティブ思考でいることが重要だということ。もちろんそれで結果がついてくるかどうかは、運もあるし、その人の技量(経営判断の確かさ)もあるのだとは思うけど。

 最後に、今後の商業環境における「中小企業の役割」について、「社会の一隅を照らす。規模の小ささが強みになる」とアドバイスをされた。中小企業が社会を変えるわけではない。社会の中でいかに生き残るかは、中小企業ならではの強みを生かすしかない。中小企業にあって大企業にないもの。それは「規模の小ささ」なのだから当たり前の話だ。

 講演が終わると、感動して涙を流す方もいた。確かに私もそんな気分になった。ちなみにあとでネットを検索すると、下記のサイトにほぼ先日を同じ内容の話が載っていた。ちなみに私は「どうしたらこんなにうまく話ができるんだろう」と思っていたが、彼にとっては本にも書いたし、何度も話したことなのだろう。それでもこれだけ上手に話ができるというのは、やはり有能だからだ。地方の居酒屋チェーンの経営者なんだけど。「社会は有能な人であふれている」。最後はそんなことを思いつつ、講演会場をあとにした。

 「株式会社湯佐和 湯澤剛様インタビュー:でん票くん」