とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

アフターバブル

 昨年最初のコロナショックが襲った時、国民一人10万円の定額給付金が支給され、持続化給付金等の施策が始まった頃、筆者はそれらの施策に対して批判的な議論を展開していた。私も当時「今、するべきことは生活困窮支援。ハローワークを活用すべき」という記事を投稿している。その記事内で筆者の記事「景気刺激は不要、それどころか社会に危機をもたらす」を引用しているが、本書で書かれていることも、基本的にその延長線上にある。

 リーマンショック後のバブル経済に、コロナショック対応のコロナバブルが続いている。「アフターバブル」というタイトルは、そういう意味だ。だが、アフターバブルの次はどうなるか。空虚で無意味な供給過剰の成長経済は終わり、新たに、安定した自給自足循環経済が始まる・・・のだろうか。「質的な充実を図る経済」「真の経済成長が実現する社会」と言えば美しいが、筆者の見立ては「悲観的」である。

○バブルは、金融市場も経済も社会も破壊する。日本は議論も社会の安定性も破壊する、世論バブル社会になってしまっている(P252)

 本当にそうかもしれない。できればそういうことは私が死んでからにしてほしい。でも娘は気の毒だ。いや、どうせ誰もが一度は死ぬのだから、どういう社会を見ようが、生きようが、関係ないか。あまりに絶望的である。この状況を変えることができるだろうか。

 

 

バブル崩壊を救済することにより生じるバブル(バブル・アフターバブル)は、ほとんどの場合、金融市場だけで起こる。…しかし、コロナショック救済バブルは、実体経済でも同時に起きた。なぜなら、財政出動の規模が前代未聞、人類史上最大であったからである。…需要の急減のスピードは前代未聞だが、需要ショックは一時的で…トータルでの需要減少量は少ない…。所得が減少したわけでもないのに、金をばら撒いた。その結果、カネは余るに決まっている。(P48)

○ダイヤモンドや金が高価格を維持できるのは、商品として登場したときに、人々が貴重なものだと勘違いしたことによる。…したがって、ダイヤモンドと金の価格水準には何の根拠も意味もないのである。…価値のないものほどバブルになる。…実用上の価値がもともとゼロであれば、価値が…なくなることがない。…これが金融資産の本質、貨幣の本質であり、バブルの本質、いや、これこそがバブルというものなのだ。(P100)

○マクロとしての需要喚起策は不要。持続化給付金も不要。企業、産業、ビジネスモデルの新陳代謝を促す政策を最優先すべきで、…時代に対応する意欲のある経営者のいる企業を…融資で支援する政策に資金を集中させるべきである。/弱い中小企業に対しては、企業を救うのではなく、働き手を救う。それが基本方針である。(P127)

○我々が消費しているものは、ほとんどが不要不急のものだ。なしで過ごせ、と言われれば、いくらでも過ごせる。楽しくないかもしれない。しかし、生きてはいける。…経済は無駄で成り立っている。…経済が半分になっても成り立つからだ。半分の無駄を謳歌させて、経済成長を達成してきた。そういうことだ。(P224)

○コロナは収束する。/そして、バブルになる。…これで最後のバブルになる。/そして、金融市場も実体経済もバブルは崩壊する。…財政破綻が実現する。…ただの量的な経済の拡大を経済成長と呼んだ時代も終っている。/質的な充実を図る経済が静かに営まれている。/すなわち…安定した自給自足循環経済となっている。…必需品の循環経済、その中で、必需品が少しずつ進歩していく、技術進歩が起きていく。そういう世界になるだろう。/その世界こそが、真に経済成長が実現する社会である。(P242)