とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

あやかしのペルー ベネズエラの夢を葬り去る

 コパ・アメリカの3位決定戦など見ている人間がどれだけいるのか。日本が出場するというので確保してしまった放送権。震災で欠場が決まった後も、NHKJリーグを中継することなくコパ・アメリカを放送し続けた。女子W杯で日本が決勝まで進んだからまだ目立たなかったが、そうでなければもっと批判があったことだろう。ましてや、ブラジルもアルゼンチンもいなくなってしまったコパ・アメリカ。土曜日のJリーグ中継は窮余の策だったに違いない。
 何てことを思いつつ、3位決定戦を見た。実は直前まで録画する気がなかったが、ダイジェストを見て、ベネズエラのサッカーに興味を持った。ペルーはアルゼンチン戦、ウルグアイ戦と2試合も見てきた。だが、ベネズエラはブラジル戦もパラグアイ戦(準決勝)も見ていない。だってどちらもスコアレスだったから。だが、少しだけ見た準決勝でベネズエラの連携の取れた力強い攻撃を見てしまった。ゴールにはならなかったけれど。意外に決勝戦よりも面白いのではないか。ベネズエラが3位になったとしたら絶対録画しなかったことを後悔するぞ。そう思って録画した。
 結果はペルーの勝利。それもゲレーロハットトリックで4-1。それほどの実力差があったとは思わないが、真剣に3位を夢見たベネズエラを変幻自在のペルーがあしらって、まだ3位は早いと冷や水を浴びせた。日本が出場していたらどうだったか。アルゼンチンと引分け、ペルー、パラグアイとも引き分けた日本であれば、ペルーの代わりに3位になっていてもおかしくない。少なくとも日本は既に、ベネズエラのようなナイーブな時期は通過していると思うから。ベネズエラもこうした経験を通して次第に強豪になっていくのだろうな。
 序盤、ペルーが攻勢をかけるが、ベネズエラも負けてはいない。4分、カウンターからオロスコのフィードをFWマルドナードが受けてミドルシュートを放つ。それにしてもどうしてベネズエラはロンドーン、アランゴの強力な攻撃陣を温存したのだろう。先制点を奪われなければ、いい作戦だったのかもしれないが。
 ペルーのフォーメーションは3-5-2。ラモス、ロドリゲス、レボレドの3バックにバルビーンがアンカー。2トップはゲレーロとチロケ。エースのバルガスはウルグアイ戦のレッドカードで出場停止。17分、CKにCBラモスがヘディングシュート。19分にはロバトーンのFKをバルビーンがヘディングシュート。全員が変幻自在、全員攻撃、全員守備。
 ベネズエラは几帳面できれいな連係プレー。21分、左SBシチェロのクロスにCHゴンサレスが飛び込む。25分、攻撃的MFのオロスコがFWマルドナードをポストにミドルシュート。ペルーも27分、ゲレーロのクロスからMFクルサードのスルーパスにチロケが走り込みシュート。
 次第にベネズエラ・ペースになる。中盤からスルーパスが2本。いずれもオフサイドになったが、形はできている。34分にはGKからのロングボールをマルドナードがポストで落とし、もう一人のFWフェルドが反転からシュート。しかしGKフェルナンデスがナイスセーブ。40分には右SBロサレスの縦パスに右SHゴンサレスがドリブルで上がりCHセイハスがシュート。
 だが、先制点は圧されていたペルーが挙げる。42分、中盤でチロケがボールを奪いドリブル。右のゲレーロに流し、クロスをチロケがシュート。一瞬のカウンターでペルーがゴール。これでベネズエラのゲームプランがかなり崩れた。
 後半初め、CHセイハスをルセナに交代。キックオフ直後、オロスコのクロスにマルドナードがヘディング。フェルドがオフサイド。2分、スローインからフェルドがシュートを放つもわずかに外れる。4分にはゴンサレス。7分、ルセナからロサレスのクロスをオロスコが落とし、フェルドがシュート。しかしゴールにならない。ペルーが粘り強い守備。
 そして14分、ボランチリンコンの強烈なタックルに一発レッドカードが出される。やられたロバトーンはこれでゲバラに交代したから、レッドカードも仕方がないかもしれないが、悪質だったわけではない。だがこれでベネズエラが一人少なくなった。ベネズエラのゲームプラン、全面崩壊。17分、ようやくフェルドに代えてロンドーン投入。どうしてここまで投入しなかったか。
 ところが19分、ゲバラのフィードを受けたゲレーロが中盤からドリブルを開始、いったんチロケに預けて、戻しのボールを強烈にシュート。ペルーが2点差と突き放してしまう。
 ベネズエラは23分、ゴンサレスに代えてアランゴ。すると30分、オロスコからアランゴのスルーパスマルドナードがシュート。そして33分、ゴールキックをロンドーンが受けて、マルドナードとのパス交換からオロスコ、スルーパスアランゴがきれいにシュート。1点を返した。37分にもアランゴのFKをGKが弾いたところにシチェロがシュート。いつベネズエラが追い付けるかという展開。
 だがペルーはしたたか。45分、ベネズエラのGKベガが攻撃を急いでロングボールを蹴り込むと、ボランチのバルビーンが蹴り返し、これがゲレーロに渡ってシュート。3点目を入れてゲームを決めると、ロスタイムにはアドビンクラからのクロスをゲレーロハットトリックとなる4点目を入れた。
 これでゲームセット。ゲレーロは通算5得点で得点王に王手。古豪ペルーが新興国ベネズエラをわきまえろとばかりに粉砕した。やる気のないゲームになりがちな3位決定戦だが、ベスト4でさえ初めてのベネズエラの真剣勝負で面白いゲームとなった。もっともその割には理解のできない選手起用だったが。
 コパ・アメリカもこれで今晩の決勝戦を残すのみ。ブラジルもアルゼンチンも不調のまま、早々と姿を消した大会だったが、4強に続くと見られたコロンビアとチリを退けて、ペルーとベネズエラが3位・4位となった。W杯南米予選もこのところブラジルやアルゼンチンが苦戦することが多いが、いよいよ一筋縄ではいかなくなってきた。南米予選は戦国模様だ。