とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

震災復興支援スペシャルマッチは真剣で真面目でいかにも日本らしい。デルピエロもびっくりしたのではないか。

 昨年は震災の衝撃も収まらない3月末に開催され、東北チームの、特に小笠原の気負いと調子の悪さが目立ったゲームだった。カズが劇的なゴールを決めて、こんなゲームでも主役の座を奪っていくのかとカズの惹きの強さに驚いたゲームでもあった。
 あれから1年4ヶ月。今年は五輪前中断中のゲーム。野球のオールスター第2戦の向こうを張って開催されたが、視聴率はどちらが上だったのだろうか。たぶん、プロ野球スペシャルマッチにはデルピエロが招待されたが、それだけでは集客には不十分だったのではないか。
 私も最初は録画もせず、観る気も起きなかった。この後に行われる五輪代表のテストマッチ、メキシコ戦の方が関心が高かった。それでもオールスターも観る気がせず、何とはなしに観始めたスペシャルマッチは、予想以上に真剣で真面目で、選手たちの復興支援への気持ちがよく伝わるゲームだった。少なくともヘラヘラと笑いながらプレーをしている選手はデルピエロ以外に見当たらなかった。デルピエロもそのことは感じたんじゃないだろうか。親善試合にしてはやけにチェックが速く球際も厳し過ぎるぞと。いや、その前にJリーグの選手たちの技術の高さに驚いてくれたかな。ユベントス退団後の移籍先がまだ決まっていないようだけど、少なくともJリーグには行けない、という気持ちを持ったのではないか。真剣さと真面目さが気持ちのいい面白いゲームだった。
 前半序盤は東北チームのチーム・アズ・ワンが積極的に攻撃する。4分、デルピエロのスルーパスに柳沢がシュート。6分、小笠原の長いスルーパスに柳沢が抜け出しシュート。だが、すぐにJリーグ選抜チームが主導権を掴み出す。7分、レアンドロのスルーパスに前田がシュート。8分、駒野のクロスに佐藤がヘディングシュート。20分には遠藤のクロスにレアンドロ、さらに27分、遠藤のクロスを前田がシュート。だが、チーム・アズ・ワンの守備が意外にしっかりしている。
 30分、槙野がパスカットからドリブルでゴール前まで入っていき、今野が止める。中盤でのチェックが甘く前進を許したという面もあるが、今野が止めるあたりがスペシャルマッチらしくて面白い。先取点は36分、小笠原のスルーパスにリャンが飛び出すが、駒野が先に追い付いて胸トラップでGKにパス。だがそれをリャンが奪ってシュートを決めた。
 41分、遠藤のFKはGK林がナイスセーブを見せる。43分、レアンドロのスルーパスをDFがブロックしたところを小野がミドルシュート。44分にも同様に今野のクリアを前田がミドルシュート。前半は小笠原とセルピエロを軸に柳沢や大迫が精力的に動くチーム・アズ・ワンよりも、遠藤やレアンドロ、俊輔、小野と豪華な中盤が華麗なパスワークを見せたJリーグ選抜の方が魅せた。
 後半にはお互いメンバーを一新。Jリーグ選抜は柏木や柿谷などの若手が中心のメンバーとなった。柿谷がこのところの絶好調さを見せて攻撃をリードする。8分、カルリーリャスがミドルシュート。チーム・アズ・ワンのGK飯倉がナイスセーブ。チーム・アズ・ワンも8分、後半から出場の高萩のシュート。はね返りをデルピエロがシュート。高萩はサンフレッチェでのゲーム以上の技術の高さを見せつけた。13分、西のクロスに興梠がDFと競り合いつつ持ち出してシュート。GK菅野がナイスセーブ。はね返りを興梠が戻すと、高萩がデルピエロにつなぐが、シュートは打てず。デルピエロに何とかゴールを決めてもらってから交代してもらおうとみんなが気を使う。
 19分、デルピエロのCKに岩政がヘディングシュート。23分、デルピエロミドルシュートはサイドネット。そして25分、ゴール斜め右45度から打ったデルピエロのシュートは、アウトサイドにかかりGK菅野が一歩も動けないままゴールに吸い込まれていく。DFの陰になって見えなかったか? それにしてもすごい弾道。さらに26分には興梠を起点に柴崎が落とし、興梠がクロス。赤嶺が彼らしいダイビングヘッドを見せてチーム・アズ・ワンが追加点を入れる。3-0。
 Jリーグ選抜は柿谷の再三のドリブルやスルーパス、原口のドリブル突破、田中順也の彼らしい思い切ったシュートなどを見せるが、ゴールが遠かった。ロスタイム、中山がゴール前どフリーでシュートを放つ場面があったが、ゴールが決まらない。さすがにそろそろ引退か。
 楽しいゲームは41分にオフサイド・ポジションからの太田のシュートが認められて4-0。チーム・アズ・ワンが圧勝で勝利した。サッカー選手はサッカーで復興支援するというのはそのとおりだし、カシマスタジアムに集まったサポーターにはそのことは強く伝わったはず。いつの日か、福島のJビレッジでできる日が来るといいが、その時はまだはるか先になるそうだ。