とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

サッカー批評(61)

 特集は「Jリーグ20年目の応援論」。本誌がサポーター論を特集として取り上げるのは初めてではなかったかな。そして非常に興味深い特集であり、記事になっている。最初の記事「サポーターの声援は選手に届いているか」でJクラブ選手にサポーターの応援について聞く。ついで、槙野のパフォーマンスとレッズサポーターとの関係を見る。佐藤由紀彦V・ファーレン長崎)、北嶋秀朗ロアッソ熊本)、岡山一成(元コンサドーレ札幌)へのインタビューも興味深い。特に北嶋の熱い言葉にはグッと来るものがある。
 続いて、植田朝日らコールリーダーを務めてきたサポーターとジャーナリストとの対談がある。ただしこれは植田朝日が一人話し過ぎ。「J2サポはつらいよ」は遠いアウェイまで追いかけて応援を続けるサポーターの姿を描く。「世代を越えて受け継がれるもの」はJリーグスタートと同時に誕生し、アントラーズのコールリーダーを務めた父親とともに育って今年で20歳となる少年を追う。既にJリーグよりも後に生まれた世代がピッチに立っているのだ。サポーターも当然。
 連載記事では体罰を取り上げたものが2編。サッカーは体罰と遠いようで、今も高校サッカーでは残っているようだ。Jリーグのケガ予防対策を考察した「Hard After Hard」もいい記事だ。
 地味ながら、こういう特集もいいものだ。「サッカー批評」編集部に拍手を送りたい。

サッカー批評(61) (双葉社スーパームック)

サッカー批評(61) (双葉社スーパームック)

●サポーターに対して、「勝っても負けても、みんなで勝ったし、みんなで負けたと思っている。だから、負けた時の責任はあなたたちにもあるんじゃないですか?」って言っちゃったんです。・・・レイソルのサポーターと僕たち選手は、そういうことを言い合える関係だという自身もありました。・・・それくらいサポーターに対して僕は真剣だし、一緒に戦って欲しいと今でも常に思っています。(P031)
●何事も最高に面白いのはギリギリのところ。世間一般の常識から少しばかりはみ出てしまう部分にサッカーのコクがある。・・・翻って、Jリーグのスタジアムについて。主催者が何よりも安全面を最優先するのは当たり前のことだ。・・・その上で、何らかのアクションを起こす人がいて、賛否両論を巻き起こす。実験的試みの芽を手当たり次第摘んでいったら、確かに平穏は保たれるだろうが、新しい何かを獲得することはない。21年目を迎えたJリーグがコアなファンを着実に獲得しつつも、近年の入場者数が頭打ちになっている一因を私はこのあたりに見つける。(P058)
●現地に行くからこそ感じられるもの、得られるものはそれ以上に大きいから、遠征する苦労やお金のことはあまり気にならないんです。好きなチームを、いつもの仲間たちと思う存分に応援する。それだけで十分に満足しているんですよ。(P068)
●戦前の一時期「敵性スポーツ」として排撃されかかった野球が・・・学生競技として生き残った裏には、「武士道」に準ずる団体競技である「野球道」が日本男児の精神鍛錬に資すると判断されたからという側面がある。なるほど。でも、結局、戦争には負けた。万が一戦争をやることになったら、次回は、サッカー仕様で行こう。というよりも、最初から戦争じゃなくてサッカーで行く手もある。(P110)