とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

「けもの」って誉め言葉?

 小平選手がスピードスケート500mで無事、金メダルを獲ることができて、本当によかった。銀メダルの李相花がレース終了直後、泣いていたのはかわいそうだったけど、それだけ地元開催によるプレッシャーを感じていたのだろう。その後、二人が抱き合って涙を流していたシーンを見て、よかったなあと思った。また、どんな言葉を掛けあっていたのだろうかと興味が湧いた。報道によれば、李が「良い記録を出したね」と祝福すると、小平も「あなたに学ぶ点が多かった」と答えて、お互いの健闘を称え合ったという。あの場面でよくこんな言葉が交わせるものだと感心した。

 その後のマスコミからのインタビューで、TBSの石井大裕アナウンサーが「まさに『けもの』のような滑り」と言って、顰蹙を買っている。私も「ええっ?」と思ったが、小平選手が一瞬戸惑った後に「『けもの』かどうかはわからないんですけど…(苦笑)。躍動感あふれるレースができたかなと思います」と回答。その対応力に舌を巻いた。ネットでも「神対応」と絶賛の声が上がっている。

 後日、石井アナウンサーは、別番組で「日頃から小平選手本人がヒョウだとかチーターだとかを超えた存在になりたいんだと話していましたから」と補足(釈明?)をしたそうだが、それが国民的な合意になっていなかった中での「けもの」発言は、やはりまずかったのではないかと思う。

 それでもあえて好意的に考えてみれば、「けものフレンズ」が大ヒットし、「けもの」という言葉に若い世代はあまり抵抗感がなくなっている。逆に、けものの奔放さが憧れにすらなっているという背景があるのかもしれない。石井アナも、同世代の小平選手が同じ感覚を持っていると思ってしまったのだろうか。ところが、練習に明け暮れる小平選手にはそういう感覚はなかった。ヒョウやチーターもまとめて「けもの」と表現することには思い至らなかった、ということかもしれない。

 東京の雪情報などを見るにつけ、東京のマスコミ人は、自分たちが中心、自分たちが思うことが全国・全世代に通用するという驕った感覚が身に付いてしまっているのではないかと日頃感じていたが、今回のことも自分の「けもの」に対する感覚が全国民に共通するという誤った感覚を抱いていることが露呈された結果ではなかったか。それでもこうした汚染されたマスコミに対して、小平選手があくまでピュアに、かつ賢く対応したことに、金メダルを一層輝かせるキラメキを感じた。小平選手、おめでとう。