膝のお皿を割って1ヵ月。ようやく妻が退院してきた。膝蓋骨の開放骨折で、即手術となったが、まずは骨が皮膚を破ったために体内に侵入した雑菌等を除去した後で、膝蓋骨をワイヤーでグルグルと巻き付けて固定した。その後は少しずつ膝周りの筋肉を使うリハビリを行い、車いすから歩行器を経て、松葉杖へと順調に回復していった。3週間目の半ばに看護師長さんから「来週初めにも退院ですね」と言われ、妻から連絡があってバタバタしたが、結局、その週のレントゲン検査で主治医が「まだ骨がくっついていないから、もう1週、様子を見ましょう」と言ってもらい、手術からちょうど4週間が経って無事、退院の運びとなった。
妻が入院中は、娘と二人、冷蔵庫一掃作戦と銘打って、極力買い物は控えて、冷蔵庫の中のものを消費していった。妻の了解も得て、溜め込んだ冷凍物などもかなり捨て去り、だいぶゆったりと冷蔵庫を使うことができるようになった。何より、何が保存してあるかが認識できるようになったのは収穫。
一方、妻はこの間、相部屋の患者さんたちが次々と退院しては入れ替わり、あとから入院した方も先に退院したりして、すっかり牢家主のようになってしまった。膝以外は元気なだけに、さすがに飽きてきて、4週目には退院日を待ち焦がれるようになった。それでも1週間の猶予があったので色々と準備ができて助かった。ベッドと浴室用のイスは1週間後に買い揃えたが、保険の手続きなども準備でき、退院日にはすぐに診断書の作成を依頼した。病室へ持ち込んだ荷物も少しずつ持ち帰り、退院日の前日にはベッドもセッティングして、帰ってきたらすぐにベッドへ寝られるように設えた。
退院の数日前、妻が「退院したら、これまで通っていた内科クリニックへ行って、クスリをもらい、その足で豪勢に昼食を取って、ついでに美容院へ行って髪染めをしたい」と言い出した。多少の悶着はあったが、妻の希望どおりにセッティング。あいにくクリニックの診療が長引き、豪勢な昼食は延期キャンセルとなったが、ヘアカラーもきれいにできて、妻も大満足。夕食は娘ががんばって調理した。
家に帰れば、病院内ほど広くはないので、松葉杖を使わず歩くことが多くなる。お風呂は心配したが、無事に入浴できた。ダイニングまで歩いてきて一緒に食事もできる。もちろんスムーズな動きというわけにはいかないが、家族みんな一緒にTVを見て、話ができるのはうれしい。今日は、延期した豪華な昼食も再度予約を入れて、家族で出かける予定。そして火曜日からはリハビリで通院することとなる。朝、出勤前に病院まで送り届ける予定だが、どうなるかな。また新しい日常が始まる。人生いろいろあるけど、どれもこれも初めてで楽しい。