とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

林陵平のサッカー観戦術

 1年ほど前、ある番組で、小柳ルミ子が「今一番、お気に入りの解説者は誰か?」と聞かれ、「林陵平」と答えていた。「林陵平と言えば確かレイソルのCFだったよな。もう引退して解説者になったのか」と思ったが、その後、林陵平が解説するゲームを視聴するたびに、確かにわかりやすいと私も気に入った。

 これまでは海外サッカーの解説が主だったようだが、最近はJリーグや代表のゲームでも解説者として登場することが増えてきた。だが、本書はやはり海外サッカーが中心。私もかつてはプレミアリーグをよく観ていたが、DAZNでの中継がなくなって以降、海外サッカーに触れる機会が少なくなっている。本書では2023-24シーズンの監督や選手が事例として取り上げられている。そこには、私が知らない選手や監督もいて、少し残念だが、それはそれで新しい情報源として楽しく読んだ。

 「サッカー観戦術」というタイトルとおり、最初に「心構え」として、「週1で観続ける」などが挙げられ、観戦ポイントとして、「初期配置」や「4局面の振る舞い」などが挙げられている。ここまでは本当に初心者向け。その後、第3章ではポジション別の役割や最近のプレートレンド、第4章では各システムの特徴と最近のトレンド、さらに第5章では現在の名将監督が紹介されている。このあたりは、ごく最近の状況をベースに紹介されており、興味深い。ちなみに、第6章の「個人的に『推したい』選手と監督」は、初めて名前を聞く若い選手が多く挙げられている。わお、見なくては!

 それにしても、月100試合はゲームを観ていると言う。しかも未だにサッカーノートをつけているなど、勉強熱心。だからこそのわかりやすい解説なんだと感心する。私もせめて、練熟した解説者の解説を楽しみに、週1のサッカー観戦は続けたい。

 

 

○ベリンガムはもともとボックス・トゥ・ボックス型のMFで…したが、2023年夏に渡ったマドリーでは4-3-1-2のトップ下を主戦場にしています。…ベリンガムの場合は、守備能力の高さも水準以上。インテンシティーの高いプレスで敵からボールを奪い、そのまま持ち上がったり前方にパスを出したりと、たったひとりでポジティブ・トランジションを完遂できるんです。…もはや世界最高レベルの攻撃的MFと言っても過言ではないですね。(P76)

○ベップの飽くなき探究心と向上心。「ポジショナルプレー」をはじめ、「偽のCF」、「偽のSB」、さらには「偽のCB」など、新しい考え方を生み出したり…アップデートしたりしているんです。…後方からの丁寧なビルドアップを核に、チーム全体をコンパクトな状態で押し上げてボールとスペースを圧倒的に支配する超攻撃的なサッカーです。ここ数年のシティを見ていると、攻撃面ではいわゆる「ポケット」を突く動きが非常に重視されている印象です。(P133)

○デ・ゼルビのブライトンは…GKも含めた最終ラインでポゼッションを確立し…ボールを持つCBかセントラルMFは、トップ下とCFのいずれかに縦パスを通し、そこから大外レーンを保持する両ウイング、大外とインサイドのレーンで流動的に動く両SBと連携しながら、一気に敵陣で攻撃を加速させます。/つまり、ポゼッションによる遅攻ながら相手を引きつけて一気に敵陣で加速する、いわば“疑似カウンター”にような状況を意図的に作り出しているわけです。(P156)