とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

今日も、Jリーグ日和

 新型コロナウイルスの影響でJリーグはおろか、世界中のサッカー、そしてスポーツがストップしてしまった。観戦できるゲームがないなら、読書で楽しむしかない。実は本書は、「フットボール批評issue26」のプレゼント企画でもらった。平畠啓史のサイン入り! 日頃、購入した本はラインを引いたりして読むのだが、これは角を折ることもなく、大切に読み終えた。

 面白かった。何より、平畠啓史のサッカーへの深い愛情が伝わってくる。そして彼のサポーターらを見つめる目が温かい。一サッカーファンという同じ目線でサッカーを観戦し、楽しむから、ほんの小さなことも見えてくる。小さな微笑ましい出来事から、心が温かくなる。

 偶然着ていたTシャツと、一瞬映ったその姿に目を止めてくれたスタッフ。そんな偶然と偶然の重なりが、サッカー関係の仕事で食べていける現在の環境を作った。そのことをよく理解し、常に謙虚で、サッカーと関係者への感謝の気持ちに満ちている。Jリーグがあってこその自分。そして、そんな環境を作ってくれているサポーターへのリスペクトを忘れない。

 サッカー中継がなくなってしまった現状では、平畠自身の仕事も減ってしまったかもしれない。それでも、サッカーがなくなってしまうわけではない。コロナ禍が去った後には再び楽しいサッカーの時間が始まるはず。それまでの間も少しでも楽しく前を向いていられるよう、平畠啓史は今もツイッター他で活動している。4月23日には新刊本「平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020-日本全国56人に会ってきた-」が発行される。楽しみにしたい。

 

○試合観戦当日、スタジアムに向かうため、家の玄関を出て、数歩歩き始めた瞬間がなぜか好きなのです。仕事に行く時もコンビニに行く時も、同じ道を歩き、同じ景色を見ているのに、スタジアムに行く時は、いつもと違って見えるから不思議です。…いつもと同じはずなのに、街の空気や大気が違って感じる、あの感覚を味わえた日こそサッカー日和。(P4)

味の素フィールド西が丘は…ゴール裏の…角あたりから…選手が登場し…ハーフウェイライン付近まで行進する。…チェルシードルトムントもピッチを横切って入場する。…ただ、そんな…ビッグクラブにも負けない入場シーンを演出し…ているクラブが日本にもある。J3ブラウブリッツ秋田だ。/歌われる『秋田県民歌』がまず心に響く。…「ブラウブリッツ あきた あきた あきた!」と繰り返した後、すべては愛する秋田のため、と続く。入場シーンの感動レベルは間違いなくJ屈指だ。(P28)

○「応援していると自然と声が出て、周りにまったく気を遣わずに大きな声を出せたことが楽しかった」/仮住まいで…声の大きさにも気を遣う。サッカーを知らない人にもサッカーは喜びを与えることができたことに少しホッとした。…サッカーに興味がある人もない人も、上手な子も下手な子も、サッカーを中心に人が集い、大きな声を出し、笑顔になる。戦術やシステムとは別に、サッカーは力を発揮していた。(P130)

○南は熊本に4年間在籍し、12年の九州北部豪雨での被害に胸を痛め…支援活動を続けている。サポーターからも愛されていた南がブーイングを浴びる光景に違和感を覚えたが、実は移籍が決まった際、自身のブログにこれまでの感謝とともに、「ありったけのブーイングの中で再会できることを心待ちにしています」と記していたのである。/その言葉に応え…これまでの感謝の気持ちを込め…熊本のサポーターは南に対して最大限のブーイングを送ったのだ。(P203)

○「せっかく来ていただいたのに、良いサッカーを見せられなくてすみません」/サッカーや京都に対する彼の想いが痛いほど伝わってきた。……試合開始前の午後6時頃。…おばさんがブルーシートを広げ…紙で魚を作り…磁石の付いた竿で魚を釣るという…陸釣り堀を開催していた。…おばさんはサッカーのことはあまり知らないかもしれない。でも、子どもたちを楽しませながら、サッカーを盛り上げてくれている。/そして、こういう人たちが日本のサッカーを支えている。(P303)

 

 

平畠啓史Jリーグ56クラブ巡礼2020 - 日本全国56人に会ってきた - (ヨシモトブックス)