とんま天狗は雲の上

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SDGsエコバブルの終焉

 様々な分野の13名の著者がそれぞれの主張を執筆している。「はじめに」に書かれているように、「内容の相互調整はしていない」そうで、中国批判もあれば、小池都知事批判の論文もある。また、水素政策批判や欧州の気候政策に反対する農民デモに関する論文も興味深い。中には相反する主張の論考も掲載されている。ちなみに、第3章「地球温暖化説の崩壊」には、私がかつて読んだことのある渡辺正なども論考を寄せているが、それがメインではない。

 たぶんメインは、本書のタイトルと同じ第1章「SDGsエコバブルの終焉」だろう。ここでは、冷戦終結ともに新たな世界的課題として提起された地球温暖化問題が、欧米を中心とするグリーン投資やESGなどの経済的政策として進められたが、今や、巨大な国内市場を利用して、中国こそが再エネ・EV産業等の覇権を握る存在となっていることが明らかにされる。欧米ではこの状況からいかに抜け出るかが課題となっているにも関わらず、日本は相変わらずSDGsや環境政策から脱却できずにいる。その中心には、産業界や政治家、メディア、学者等による強固な利権複合体が存在する。

 日本はこうして衰退していくのだろうか。たとえ日本がなくなっても、地球は滅ばない。二酸化炭素排出量も大して減ることはない。我々は何のために環境対策なるものを続けているのだろうか。

 

 

○【岡崎五朗】そもそも二酸化炭素を一切出さないEVこそが唯一の解決策であるという意見は、生産から廃棄に至るトータルでの指標、LCAという考え方のもとでは説得力が薄れる。…むしろ貴重で高価なバッテリーを有効活用するべく、EVの数十分の1のバッテリー容量で済むハイブリッド車を多く販売した方がトータルとしての二酸化炭素排出量を減らすことができる。(P19)

○【山本隆三】中国が覇権を持つのは、蓄電池、EVでも同様だ。中国政府は大気汚染対策もあり、都市部を中心にEV導入を進めた。もちろん最大の狙いは、産業振興とEV生産により世界の市場を握ることだ。…補助制度もあり…世界のEV生産台数の約3分の2が中国製になった。…主要国が進める脱炭素政策は、再エネ設備とEV導入を通し中国支援につながっている。世界に先駆け国内市場を作り製造業を育てた中国の戦略が実ったように見える。(P46)

○【田中博】地球温暖化ティッピングポイントを超えると暴走する、などという説明は脅しである。気候システムには強力な安定化プロセスが存在しているので、暴走は止まるのである。…地球大気が過去1万年間ほぼ安定だった背景には、このような安定化システムの存在がある。恐竜が繫栄した約2億年前は今より13℃も気温が高かったが、暴走することはなかった。(P137)

○【上田令子】2022年12月3日…小池知事は…突如として新築物件の屋根に太陽光パネル・充電設備の設置を義務付ける条例を強行採決しました。…結論から申し上げますと、都民の皆様には設置の義務はなく拒否ができます。…設置義務が発生するのは、年間の総延床面積2万㎡以上のハウスメーカー約50社であり、各社に課せられた設置目標を達成しないと企業名が公表されます。(P250)