とんま天狗は雲の上

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官僚生態図鑑

 森永卓郎を読み始めて4冊目。今度は、官僚政策への提言。

 私自身も退職前、国のキャリア官僚と付き合うことも少なからずあった。その中で、森永氏が指摘するように、彼らが一般国民の意識や生活実態とはかけ離れたところで政策を考えていると思うことはしばしばあった。

 少子化対策として、ベビーシッター補助が創設されたという記事を見たときは、いったい誰のニーズなのかと訝った。トラックドライバーに対する労働時間制限も筆者が指摘するように、官僚が実態を知らないまま、頭の中で考えた政策なのかもしれない。最近の米政策にしても、JAなど官僚に近い団体などからの情報をもとに政策が立案されていることを表わしている。

 しかし一方で、官僚はスーパーエリートとしての卓越した能力を有していると筆者は評価する。その彼らが、官僚として目いっぱい働いてもらえるよう、最後の第6章で「7つの処方箋」を提示する。国税庁財務省の完全分離や、天下り等の完全禁止などは既に多くの識者が指摘していることだが、官僚の報酬を3倍にするとか、調査研究広報滞在費の支給、労働時間規制の手によう除外などは、さすがに無理だろうと思ってしまう。いや、筆者の見識からすれば理解できないわけではない。だが、それはそれで別の問題を生んでしまうのではないかな。

 もう森永卓郎は生きてはいない。これらの提言もまともに受け取られることはないだろう。確かに突拍子もない提言かもしれない。だが、そこにこそ、日本に明るい未来へと導く内容が隠れているのかもしれない。スーパーエリートが輝く道は、けっして報酬だけではない。彼らも輝いてこそ、生まれてきた甲斐があったと思うはず。そんな日本にする方策を見出さなくてはいけない。

 

官僚生態図鑑

官僚生態図鑑

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○社会全体の世界構造変化と波長を合わせるように、官僚のなかでも専業主婦世帯が激減した…。彼らの行動範囲は狭いから、官僚同士のカップルが生まれることが多い。課長補佐同士が結婚すれば、図らずして年収2000万円のパワーカップルが誕生する。彼らの発想はどうしても「自分たちの暮らしのなかでこういう政策があったら嬉しいよね」というものになる。/いままさにその政策は、年収300万円前後にしかならない一般国民のニーズとはかけ離れ、ズレまくったものになってしまっているのだ。(P32)

○「子育ては社会全体で支援する」という理念に基づけば…「共稼ぎ」か「片稼ぎ」…によって差別をすべきではない。…しかし…共稼ぎ世帯優遇の子育て支援だけが拡充されていく。/その一方で…学校給食の無償化や大学の無償化に関して、官僚は無視を決め込んでいる。…学校給食や国立大学を無償化しても、官僚になんの利権も生まれない。/ところが、子育て関連サービスを拡充したり、育休関連給付を創設したりすると、そこには新たな運営予算や天下りポストが発生する。/異次元の少子化対策で生まれるのは、子どもではなく、官僚の利権なのだろう。(P116)

○トラックドライバーの時間外労働を厳しく規制することは、現場を知らない官僚が、頭のなかだけで考えた政策だ。…お笑い芸人とか音楽家といった「楽しい」仕事をするフリーランスの労働時間を規制しても、彼らが幸せになることはない。/私は、トラックドライバーは…そちらかと言えばフリーランスに近い存在だと考えている。…ドライバーの生活が貧しい大きな原因は、中小の運輸業者に対して不当な安値の発注がなされていることだ。/だから、本来、行政がやらなければならないのは、運転のダンピング防止対策であり、適正な運賃さえ支払われていさえすれば、労働時間はドライバーが決めればよいのだ。(P124)

半導体の市場というのは少しでも需給がゆるむと暴落する恐ろしい市場だから、半導体企業はつねに小回りの利く大胆な経営戦略が求められる。/しかし、癒着批判から業界と距離を置いてしまった経産省は…頭のなかだけで考えた半導体戦略を実現するために金をバラまき続けている。…経産官僚の半導体復権という“妄想”の被害者は国民なのだ。(P164)