森永卓郎と泉房穂の対談本。両者の主張はこれまでもそれぞれの本などで読んできたし、タイトルにある「救民内閣構想」以外は、特に目新しい部分はない。
「救民内閣構想」については、「国民を救う政治」を行うための戦略として、5回の選挙を通じ、国民の味方となる議員を衆議院の過半数、確保して、総理大臣のイスを取る。そして、地方自治の仕組みを圏・市町村の2層構造とし、中央省庁の再編を行う、などの構想が述べられている。具体的な政策内容までは記されていないが、地方分権や軍備縮小、税制改正などが想定されるだろう。
だが、泉氏本人は、自ら主役をして総理大臣を狙うということではなく、この構想を実現するためのシナリオを書くなど、あくまで土台となる活動をしたたかに進めていきたいという考えのようだ。しかもストーリーは変わることもありうるというのだから、今後どうなるかはわからない。いや、実現しない可能性のほうが高いかもしれない。それでも泉氏の心意気は支持したいし、応援をしたい。
森永卓郎は亡くなってしまったが、草葉の陰できっと応援していることだろう。世界は第2期トランプ政権の登場で大きく変化をしている。日本もそろそろ抜本的に変わるときが来ているのかもしれない。間違っても、斉藤知事や石丸伸二や立花孝志らが跋扈しない、正しいモノが正しいとされる社会であってほしい。
○【泉】国民が苦しんでいるんだから…負担を軽減する必要があるわけです。国民のための政治であって、プライマリーバランスのための政治ではない…【森永】国のレベルで…「財政均衡主義」への強すぎるこだわりをもとにして、正しい根拠を示さず、ただ一方的に締め付けてくる。…【泉】たちが悪いのは、取り巻きの学者やマスコミがそれにひれ伏していることです。(P28)
○【泉】キャリア官僚は現場が分かっていないのに、しかも現場の声や実態も踏まえず、自分たちの頭の中だけで「こうだろう」と決めつけているわけですね。/私が彼らに対してひどいと思うのは、自分たちが決めたことが間違っていても訂正しないことです。…人間なのだから、正しいと思っても外れることもあると思うのですが、外れたとは絶対に言わないですね。…試行錯誤したっていいと思うんですよ。…ところが自分たちが決めた方向に、「間違っていても従え!」という傲慢な態度が目につきますね。(P87)
○【泉】私の役割としては、まずはシナリオを書くこと。そして5回の選挙であれば5回の選挙のキャスティングが必要で、それを行うこと。…シナリオも20年分ぐらいのストーリーですから…状況に応じて途中で変えてもいいし、現場で変更するもありです。…そしてそれは、全部一人で書きたいわけではなく、「みんなで書きましょう」という感じです。…ただポイントは、「本気で日本を変えましょうという気持ち」です。(P147)
○【泉】明石は大阪と神戸にはさまれたベッドタウンです。そこで、私が市長になって選んだ方針は、明石はこれから「育てる」と「暮らす」の2つにおいて全国一を目指す、その代わり「学ぶ」「遊ぶ」「働く」は捨てると言ったんです。/大都市に比べて家賃や住宅価格は安く済む。…大学も職場も明石市内につくらず、通えばいいんです。(P161)
○【泉】私が考える政治家は、責任感を持って決断し、状況に応じて進むべき方針転換を示す、そんな役割を担う人です。世の中に何も問題がない…なら、官僚がいればいいわけです。…しかし現実は…問題が山積みなのに、それを見ようともしないでこれまで通りのやり方を漫然と続けているから、日本はこうなってしまったわけです。/だから今こそ、「本物の政治家」が必要な時代なのではないかと思います。…理論をふりかざして言い訳をするのではなく、たとえ難しくても実現させるのが政治家です。(P179)