とんま天狗は雲の上

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国民は知らない「食料危機」と「財務省」の不適切な関係

 農学の専門家・鈴木宣弘と、経済アナリスト・森永卓郎の対談本。いつも書くとおり、対談本は次々と話題が流れていってしまうので、結局何が言いたいか、わからなくなってしまう。敢えて言えば、鈴木氏は「世界で最初に飢えるのは日本」と、森永氏の「森永卓郎の『マイクロ農業』のすすめ」のための宣言本という感じ。でも、本書を読めば、だいたい何が書いてあるか、わかるような気もする。

 でも、両氏が主張することはよくわかる。財務省は目先の歳出削減の観点から、日本の農業の方向を考えることもなく、農業予算の削減を進める。対米従属から抜けられない政府は、食の安全を顧みることなく、軍事費支出だけが際限なく増えていく。一方で、バブル崩壊も近いと森永氏は予測する。このままでは東京など特に都市部の住民を中心に、深刻な飢餓が襲う。なのに政府は非現実的な「食料・農業・農村基本法」は改正された。

 気が滅入る話ばかりである。でも我々庶民にはどうにもならない。せめて家庭菜園でも始めるかとも思うが、10数年前までやっていた菜園も辞めてしまって久しい。有事には小さな庭にサツマイモでも植えようか。「サツマイモの蔓など食べられない」と書かれているが、そんなことはない。わが家ではみんな大好物だ。あまり危機を煽るのもどうかと思うけど、対談本だとしょうがない。そもそも本書の編集者もイモの蔓など食べたことないだろうし。

 そんなことで、まあ本書を読むよりも、先に上げた本をしっかり読んだほうが多少は理解が進むような気がする。たぶん読まないけど。

 

 

○【森永】SINIC理論…によるといまは「最適化社会」…2025年ごろに最終ステージ…「自律社会」になると予測しているのです。/立石さんは自律社会には3つの柱があると言っていて…一つ目の柱が「自立」、二つ目が「連携」…で、三つ目の柱が「創造」…私の解釈では、近い将来、一人ひとりが自立する社会が訪れる。つまり「自産自消」の時代。食料だけじゃなく、エネルギーも太陽光パネルなどによって自給するんです。その上で、「連携」し。お互いに助け合う。グローバル資本主義が終わるとそういう社会になるんです。(P51)

○【森永】2025年…あたりで「エブリシング・バブル」の崩壊があるんじゃないか。…「世界インフレ」…の状況で大規模な金融緩和を行えば、インフレが再燃してしまう。だから今回はバブル崩壊後に金融緩和を行うのは難しいんじゃないかと思っています。…バブルが崩壊すると、世界からお金が消えてしまう。だから資産をお金として持っている人は危ない。…投資商品を買うより、農地を持っているほうが安全です。(P73)

○【鈴木】一人ひとりが、一見安い食料は実は危ない、ということを理解して行動すれば、安全な国産の農産物が売れて自給率も高くなる。日本政府がアメリカに逆らえず、危険が食料が輸入されても……食べなければいいわけですから。/自分の作った農産物や、信頼できる人が作った作物だけを食べる、という環境を作る必要がある。/そうすることで、われわれから収奪するグローバル資本主義を排除したコミュニティができる。(P113)

○【鈴木】人間が地球上で暮らしていくためには、超えてはいけない限界があるのです。大気中の二酸化炭素濃度が限度を超えると地球温暖化が問題となりますが、窒素やリンの濃度にも限界があります。…窒素についてはバウンダリー(限界値)の約2.4倍、リンは約2倍の量を毎年流出しているといいます。窒素は温暖化の原因でもあります。…化学肥料に含まれる窒素が…一酸化二窒素のかたちで大気中に放出されているのです。(P127)

○【鈴木】有事に食料が不足した場合、花農家などにイモ作りを強制する法律が準備されている。/そんなことより、国内の食料生産を強化するほうが先ではないのか。/財務省がにらんでいるから、田んぼ削減、食料自給率低下の方向性は変えられない。…そんなずさんな有事対策で、本当に国民の命を守れると思っているのだろうか。…政治家も「ザイム真理教」に洗脳されている。…まずは財務省の壁を越えないかぎり何も進まない。(P163)