とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

欧州サッカー批評06

 「欧州サッカー批評」第6号は待ちに待ったイングランド特集。前代表監督ファビオ・カペッロに聞き、香川真司を分析し、ファーガソンを論じる。マンチーニ監督に尋ね、ビラス・ボラスやディ・マッテオをサッカーに期待する。さらにはジョーイ・バートンといった問題児を取り上げるなど、さすがにサッカー批評誌の目の付けどころは複眼的で面白い。
 香川のマンU移籍が特集を組んだ一つの動機なら、ユーロで繰り広げられたサッカーと各国の顛末は今号のもう一つの大きな味付けになっている。ピルロが語るイタリアの激闘、レ・ブルーはなぜ内部崩壊したのか、そして草サッカーの伝道師・竹田聡一郎氏の「EURO2012蹴球漫遊記」も極上に面白い。
 ヨーロッパサッカーリーグの12-13シーズンが開幕し、今シーズンはNHK-BSでイングランドセリエAに加え、ブンデス・リーガの放送も始まった。日本選手の海外進出もさらに増え、ますます注目を集めるヨーロッパリーグ。まずは本書を読んで、予備知識を得てから観戦すると、楽しいこと数十倍だ。
 ああ、書き忘れた。イングランド4部のAFCウィンブルドンアイルランドリーグに参戦する北アイルランドのクラブ・デリー・シティFC、セルビアリーグのFKヴォイヴォディナ。こうした知られざるも愛されるチームを取り上げた記事も本誌ならでは。これらが一番心に沁みる。

●それは、・・・『守備という文化の欠落』に他ならない。・・・今大会のイングランドは、・・・守備の重要性に気付いてはいたものの、過去に長くその文化の構築をやや軽視してきたがために、いざ技術力で圧倒する相手を前にしたとき、『単に守るためだけの守備」に陥ってしまった。・・・守備とは攻めるためにあるものだが、サッカーの母国がその本質を見失っていた(P010)
●クラブはファンとの交流を最優先に置いており、時折、定期会見として一般のファンがクラブハウスで監督やクラブ幹部と数時間にわたり質疑応答する場を設けているのだ。同氏は、「ファンの団体、ドンズ・トラストでまとまった意見が、そのままクラブの方針になる」とし、一部のファンはこの経営体制を「バルセロナを極小に縮めたようなもの」と形容しているという。(P070)
●現地に行けばキャラ立ちのエッジーなサポーターやホストがたくさんいて、・・・草サッカーのピッチでボールを蹴るプレーヤーと喧嘩したのち分かり合う。僕にとってのユーロはスペインの偉大な連覇よりも、彼らとの接触だった。・・・ぜひひとりでも多くの人に現地に足を運んで観戦してほしい、体感してほしい。そしてそれを肴にビールでも飲めたら最高だ。フランスで会いましょう。(P113)