とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

国際親善試合 日本vs.メキシコ

 FIFAランク77位のパナマには1-0で勝利した日本だが、11位のメキシコ相手にはどうか。日本の実力が試される一戦。日本はパナマ戦から9人を代えて臨んだ。布陣は4-2-3-1。ワントップに鈴木武蔵を入れて、トップ下に鎌田。右SH伊東純也、左SHには原口。遠藤と柴崎でボランチを組み、DFは右SBに酒井宏樹、左SBは中山。冨安と吉田のCBにGKはシュミット・ダニエルが守る。

 対するメキシコは今年に入って負けなし。先月はオランダに勝利し、2日前には韓国を3-2で葬り去った。布陣は4-3-3。ウォルバーハンプトンでプレーするラウール・ヒメネスをトップに、右WGにナポリで活躍するロサーノ、左WGはピサーロ。中盤はロモをアンカーに、右IHピネダ、左IHにカルロス・ロドリゲス。DFは右SBにサンチェス、左SBガジャルド。CBはモレノとアラウホ。GKはベテランのオチョアが守る。

 メキシコのプレスが厳しい。序盤は日本がなかなか攻められない状況が続いたが、10分、右SH伊東が右サイドから快速を飛ばして左サイドまで走ってボールを収めると、落としを左SH原口がつないで、OH鎌田の仕掛けからクロス。だがCF鈴木武蔵が合わせられない。しかしここから日本がようやく攻められるようになってくる。12分、OH鎌田から左にサイドチェンジすると、左SH原口がミドルシュート。GKオチョアがファインセーブで弾き出す。15分、CH柴崎の縦パスに左SH原口が抜け出し、クロスにCF鈴木武蔵がぽっかりフリー。しかしシュートはGKオチョアに止められた。さらにはね返りを右SH伊東がミドルシュートを放つが、これもGKオチョアがナイスセーブ。鈴木武蔵は絶対に決めなくてはいけない場面だった。

 それでも前半は日本の攻勢が続く。16分、CH遠藤の縦パスに左SH原口のヘディングシュートはGKオチョアがキャッチ。28分、CH遠藤の縦パスをCF]鈴木武蔵が落とし、OH鎌田が右に展開。右SH伊東のクロスに左SH原口やOH鎌田、左SB中山がゴール前に入っていくが、メキシコのDFがしっかりマークし、ボールに触らせない。前半も終盤以降はメキシコがしっかり日本の選手をマークして、攻撃を自由にさせず、スコアレスのまま前半を折り返した。

 後半に入ると、ガジャルドを下げて、右SBに攻撃的なルイス・ロドリゲス。さらにカルロス・ロドリゲスを下げて、CHにアヤックスでプレーするエドソン・アルバレスを投入。ピネダをトップ下に上げ、布陣を4-2-3-1に変更した。10分、日本はCH柴崎のパスからOH鎌田が右に展開。右SH伊東のクロスをCF鈴木武蔵がヘディングで折り返すが、DFがクリアする。するとすぐにカウンター。左SHピサーロの縦パスに右SHロサーノが抜け出し、クロスをCFヒメネスが落として、CHロモがミドルシュート。CB吉田がブロックした。日本は12分、CF鈴木武蔵に代えて南野、CH柴崎に代えて橋本を投入する。次第に霧が深くなっていく中、メキシコの攻撃が鋭さを増していく。

 15分、ロサーノのFKにCFヒメネスがヘディングシュート。17分には左SBサンチェスがミドルシュートを放つ。そして18分、左サイドからCFヒメネスが縦パスを入れると、OHピネダの落としをヒメネスが拾い、CB吉田を反転しながらかわしてさらに前進。最後はトゥーキックでGKシュミット・ダニエルの左脇下を抜いた。ヒメネスの見事なプレーでメキシコが先制点。直後にはヒメネスとピネダを下げて、CFマルティンと右SHアントゥナを投入。ロサーノをトップ下に移す。日本も20分、OH鎌田のFKに吉田がヘディングシュートを放つが、枠を捉えられない。

 すると23分、CF南野から人数をかけてボールを奪うとそこからカウンター。CBアラウホの縦パスからCFマルティンがスルーパス。OHロサーノが抜け出して、GKシュミット・ダニエルを抜くシュートを決めた。あっという間の追加点だ。日本は後半、中盤を厚くしたメキシコのプレスがきつく、OH鎌田がほとんどボールに触れない状況が続く。27分、左SH原口に代えて久保。32分にはOH鎌田に代えてCF浅野を投入。南野をトップ下に移して、何とかゴールを狙う。しかしこの頃には霧がさらに深くなり、ピッチの反対側はほとんど見えない状況になってきた。34分、右SH伊東がクロスを入れるが、ゴール前に走り込んだOH南野だったが、手前のDFの陰から突然ボールが出てきたか、頭には当てたがコントロールできない。するとメキシコはすぐにカウンター。CFマルティンのポストからOHロサーノが右に流し、右SHアントゥナがシュート。これはGKシュミット・ダニエルがよく飛び出して、身体に当てた。

 40分、久保のFKに右SB酒井がニアでヘディングシュートを放つが、枠を捉えられない。直後には右SH伊東に代えて三好を投入するが、DFラインを下げて守るメキシコの守備を崩しきれない。3分のアディショナルタイムもそのまま終了。2-0。メキシコが後半の見事な攻撃で違いを見せつけ、勝利した。

 けっして有名選手が多くいるわけではないが、どの選手もしっかりとした技術力があり、何より勝負どころを見極める目が確か。一方、日本はよく動いてがんばるが、ここぞという場面で決めきれない。このゲームでは鈴木武蔵の逸機が響いた。失点はメキシコの攻撃をほめるしかない。それでも全体的にはよく守り、よく攻めて、収穫の多い連戦ではあった。コロナ禍で翻弄された今年はこれで終わり。いよいよ来年にはW杯アジア予選が再開される予定。今回の親善試合の成果や課題を元に、各選手はそれぞれのチームでさらに精進してほしい。来年の活躍を期待したい。

人新世の「資本論」☆

 この本も内田樹の講演を聞いて、読もうと思った。面白かった。そして、本当に斎藤氏の言うとおりだと思った。人類は、人類に危機と滅亡をもたらす資本主義をすぐにも捨て去り、新たな経済システムに移らなくてはならない。それが「脱成長コミュニズム」だ。世界では既に、バルセロナを始め多くの自治体で、こうした取組が始まっている。

 Z世代と呼ばれる1990年代後半から2000年代に生まれた若者たちは、既に資本主義の矛盾に気付き、怒り、「グローバル市民としての自覚をもって、今、社会を変えようとしている」(P123)。グレタ・トゥーンベリがその「象徴的な人物」と言われると???という気もするが、「彼女のような個性的なパーソナリティを、Z世代は多様性として素直に受け入れ、支持しているのだ」(P123)と言われれば、そうかもしれない。

 本書は、マルクスの『資本論』第一巻以降の「研究ノート」などを徹底的に読み込み、晩期マルクスが何を研究し、何を考えてきたかを解明し、現在のマルクス主義が多くの誤解の上にあることを提示して、実はマルクスは「脱成長コミュニズム」を構想していたと主張する。タイトルの「資本論」はまさにそういう意味であり、晩期マルクスに即して、「資本論」の真意を読み込み、明らかにする。ちなみに、タイトルのもう一つの言葉「人新世」は、ノーベル化学賞を受賞したパウル・クルッツェンが名付けたもので、「人間たちの活動の痕跡が、地球の表面を覆いつくした年代という意味」(P4)だが、これを「おわりに」では「『資本新世』と呼ぶのが正しいかもしれない」(P364)と書いている。まさに現在は、資本主義に翻弄され、人も自然も地球全体が、資本主義に食い尽くされようとしている時代なのだ。

 本書では、マルクスに即して、進歩史観や生産至上主義、エコ社会主義などを考察しつつ、「脱成長コミュニズム」に至っていく。また、その過程で、「労働と生産」の意味、「価値」と「使用価値」の違いなどについて論じる。19世紀の経済学者ローダデールが唱えた「ローダデールのパラドックス」も興味深い。その内容はすなわち「私財の増大は、公富の減少によって生じる」(P244)というもので、我々が資本主義の真っただ中で私財を増やそうと競えば競うほど、「公富」すなわち社会はますます貧しくなっていく。

 ロボット化が進み、生産性が上昇すれば、労働時間は短縮するかと思っていたが、事態は全く逆になっている。それは資本が「労働と生産」をますます貪欲に食い荒らし、いよいよその勢いを増していっているからだ。こうした資本主義の暴走から離れて、今後は定常型経済の時代に向かうべきだと主張してきたのが広井良典氏だが、筆者に言わせれば、「そのような楽観的予測は間違っているのではないか」(P129)ということになる。確かに、いかに「定常型社会を実現するか」の方途は広井氏の一連の著作を読んでも、はっきりと明示されてはいない。それに対して、本書では「脱成長コミュニズム」という解を明示し、その方法論も紹介している。

 資本主義に立ち向かってはいけない。資本主義を乗り越えようとしてはならない。資本主義は一つのシステムなので、それに抗しようとしても必ずシステムはそれを所与のものとして次のステージを目指し、絶対に動きを止めない。だから我々は、資本主義とは別のフィールドで、新たな経済システムを構築しよう。それが「脱成長コミュニズム」だ。

 そのために何をすればいいのか。「おわりに」では人々に3.5%の連携とアクションを求める。ワーカーズ・コープなど様々な事例が列記されているが、まずは意識を持つこと。そして敵をしっかりと見定めること。敵とは「人」ではない。「資本」という化け物だ。それをはっきりと認識した今、世界が少しでも「脱成長」の方向に向かうといい。残された時間は長くはないが、私に残された寿命に比べれば、まだ十分な時間があると思われる。生きているうちにそんな時代を少しでも垣間見られればいいと思う。

 

人新世の「資本論」 (集英社新書)

人新世の「資本論」 (集英社新書)

 

 

○人類の経済発動が全地球を覆ってしまった「人新世」とは…収奪と転嫁を行うための外部が消尽した時代だといってもいい。…資本主義がどれだけうまく回っているように見えても、究極的には、地球は有限である。…外部を使いつくすと、今までのやり方はうまくいかなくなる。危機が始まるのだ。これが「人新世」の危機の本質である。/その最たる例こそ、今まさに進行している気候変動だろう。(P36)

○労働は、「人間と自然の物質代謝」を制御・媒介する、人間に特徴的な活動なのである。…資本主義においては…価値増殖という目的にとって最適な形で、資本は「人間と自然の物質代謝」を変容していく。/その際、資本は、人間も自然も徹底的に利用する。…資本は人間と自然の物質的代謝を大きく攪乱してしまうのだ。…その帰結が「人新世」であり、現代の気候危機の根本的な原因もここにある。(P158)

○資本の無限の価値増殖を求める生産が、自然本来の循環過程と乖離し、最終的には、人間と自然の関係のうちに「修復不可能な亀裂」を生む…。/マルクスによれば、この亀裂を修復する唯一の方法は、自然の循環に合わせた生産が可能になるように、労働の領域を抜本的に変革していくことである。…人間と自然は労働でつながっているのだ。だからこそ、労働のあり方を変えることが…決定的に重要なのである。(P291)

○利潤最大化と経済成長を無限に追い求める資本主義では、地球環境は守れない。…人工的希少性によって…多くの人々を困窮させるだけである。/それよりも、減速した経済社会をもたらす脱成長コミュニズムの方が、人間の欲求を満たしながら、環境問題に配慮する余地を拡大することができる。生産の民主化と減速によって、人間と自然の物質代謝の「亀裂」を修復していくのだ。(P320)

SDGsグリーン・ニューディールも…気候変動を止めることはできない。「緑の経済成長」を追い求める「気候ケインズ主義」は、「帝国的生活様式」と「生態学帝国主義」をさらに浸透させる結果を招くだけである。…資本主義が引き起こしている問題を、資本主義という根本原因を温存したままで、解決することなどできない。…資本主義によって解体されてしまった<コモン>を再建する脱成長コミュニズムの方が、より人間的で、潤沢な暮らしを可能にしてくれるはずだ。(P360)

 

J1第27節 名古屋グランパスvs.FC東京

 ガンバとセレッソが敗戦。フロンターレアントラーズが引分け。上位陣が勝ち点を伸ばせずに終わった今節。最後に3位FC東京と4位グランパスの対戦があった。グランパスが勝てばACL圏内の3位に浮上する。しかし前節で負傷した金崎が膝前十字靱帯と半月板損傷の重傷。山崎も前々節のケガでCFタイプの選手がいなくなった。代わりにFWに入ったのがシャビエルと阿部。似たタイプの選手を二人、トップで同時に起用した。トップに入るかと思われた前田とマテウスは左右のSHで起用。SBは右にオジェソク、左に吉田。ボランチとCB、GKはいつもと変わらない。対するFC東京は4-2-3-1。アダイウトンをトップに、右SHディエゴ・オリヴェイラ、左SHレアンドロボランチに安部とアルトゥール・シルバを置いて、高萩がトップ下に入る。DFは右SBに中村帆高が先発。左SBは小川諒也。CBの森重と渡辺は変わらず、GKには波多野が入った。

 序盤からお互いがっちりと守り、また攻め合う。互角の展開。7分、FWシャビエルの落としからミドルシュートを放つが、CB森重がブロック。11分、右SBオジェソクの縦パスにFWシャビエルが走り込み、落としを右SH前田が中へつなぐと、FW阿部がミドルシュート。GK波多野がセーブするが、二人のFWがよく動いて、ボールを引き出す。その後もグランパスがパスをつなぎ、FC東京はしっかりとブロックを作って守る展開が続く。

 16分、OH高萩に対してCH米本がしっかりと寄せてボールを奪い、FW阿部が右に展開。FWシャビエルのスルーパスに右SH前田が走り込み、シュートを放つが、わずかに右に外れた。さらに20分には、左SHマテウスのFKのクリアをCH稲垣がミドルシュート。26分、CH米本から右に流し、右SBオジェソクのクロスにFW阿部が走り込む。だが、手前でCB渡辺がクリアした。さらに31分、中盤まで下がった右SHディエゴ・オリヴェイラにプレスをかけてボールを奪い、FWシャビエルがドリブル。左に流して、左SHマテウスがクロス。しかしGK波多野がクリア。はね返りをCH稲垣がミドルシュートするが、枠は捉えられない。

 33分には左SHマテウスのFKにCH米本がニアに走り込み、ヘディングシュートするが、わずかにポスト左に外れた。FC東京は34分、左SHレアンドロミドルシュートを放つが、これが初シュート。45+1分、マテウスが直接FKを狙うと、45+3分には左SB吉田がミドルシュート。前半はグランパスがよく攻めたが、FC東京の堅守の前にスコアレスで終わった。

 後半もグランパスがパスを回し、FC東京がブロックを作って守り、カウンターを狙う展開は変わらない。各所で激しい球際の攻防が続く。13分、CFアダイウトンミドルシュート。20分、CHアルトゥール・シルバがミドルシュートグランパスの守備もしっかりしており、FC東京は遠目からしかシュートが打てない。そこで20分、FC東京はCFアダイウトンを下げて、永井を投入した。すると22分、FC東京がゴール前に迫って、左SHレアンドロの仕掛けからこぼれ球をCH安部柊斗がシュート。しかしGKランゲラックがファインセーブで弾き出す。24分、左SHレアンドロのFKは左に外れた。

 後半はやや攻撃が沈静化していたグランパスだったが、飲水タイムも終わった27分、左SB吉田のスローインからCH米本、CHアルトゥール・シルバ、右SHディエゴ・オリヴェイラらが集まり混戦の中、FWシャビエルが抜け出すと、OH高萩やCH安部らを置き去りにして前進。クロスに右SH前田がシュートを狙うが、DFに前を遮られると、右SBオジェソクにスイッチ。さらにオジェソクが落として、CH稲垣がミドルシュート。DFに当たって枠は外したが、左サイドからいい攻撃が見られた。

 さらに32分、FC東京は両SHのディエゴ・オリベイラレアンドロを下げて、右に三田、左SHには原大智を投入する。36分、マテウスのCKがファーに流れ、右SBオジェソクから右SH前田が受けて仕掛ける。CHアルトゥール・シルバをかわし、PA内に進入。CB森重をかわしたところで倒された。森重の足がかかっているように見えたが、主審は前田のシミュレーションを宣告した。うーん。その後も攻めるグランパス。守るFC東京。両チームとも高い集中力が感じられる。

 40分、グランパスは阿部を下げて、左SHに相馬を投入。前田をFWに上げる。FC東京も42分、アルトゥール・シルバに代えて内田を投入する。高萩をアンカーに下げた。そのままアディショナルタイムに突入。そして45+5分、右サイドから切り返してマテウスミドルシュートを狙うと、やや離れた位置でブロックしようとしたCH高萩の手に当たる。PK。これをマテウスが決めて、ついにグランパスがゴールを挙げた。そしてそのままタイムアップ。1-0。アディショナルタイムのゴールでグランパスが勝利した。

 これでグランパスFC東京と入れ替わり、3位に浮上した。2位ガンバとの勝ち点差は3。一方、5位・6位のセレッソアントラーズとの勝ち点差も3。まだまだ厳しい戦いが続く。それでも、金崎と山崎の離脱でどうなるかと思った攻撃陣だったが、阿部とシャビエルの同時起用がこのゲームではうまく機能した。残り5試合の相手は中位チームが多い。気を許さず、全勝する勢いで、2位以内を狙いたい。がんばれ、グランパス