とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

広井良典 の検索結果:

無と意識の人類史

久し振りに広井良典を読んだ。「人口減少社会という希望」が「グローバル定常型社会」や「創造的福祉社会」の総括的な著書として書かれたが、それらからどう発展したか。正直、よくわからない。これまでも同じことを繰り返しているような気がする。だが、改めてタイトルを見れば「人類史」と書かれている。つまり、未来を語るのではなく、過去を振り返り、今後を夢想する。そういう本として捉えればいいのか。 これまでと新しい知見としては、「無」と「死」に注目していること。そして今後訪れるであろう「第三の定…

2020年、私が読んだ本ベスト10

…貪欲に暴走するもの。広井良典らの定常型社会という夢想を乗り越え、ワーカーズ・コープといった具体的な方策も提示しつつ、新たな経済システム「脱成長コミュニズム」の構築を訴える。若い世代の台頭とともに、時代は変わろうとしている。その楽観に期待したい。 【第2位】熱源(川越宗一 文藝春秋) 今年最も感動した作品。唯一、友人に読書を勧めた本でもある。史実を踏まえて書かれた小説だが、明治に生きる人々はこれほどまでに熱かったのか。そしてアイヌに生きる人々の力強さに圧倒される。アイヌとはすな…

人新世の「資本論」☆

…だと主張してきたのが広井良典氏だが、筆者に言わせれば、「そのような楽観的予測は間違っているのではないか」(P129)ということになる。確かに、いかに「定常型社会を実現するか」の方途は広井氏の一連の著作を読んでも、はっきりと明示されてはいない。それに対して、本書では「脱成長コミュニズム」という解を明示し、その方法論も紹介している。 資本主義に立ち向かってはいけない。資本主義を乗り越えようとしてはならない。資本主義は一つのシステムなので、それに抗しようとしても必ずシステムはそれを…

持続可能な医療

広井良典の著作としては先に「人口減少社会のデザイン」を読んだが、本書については「医療制度」をテーマにした本ということで、これまで読まずにきた。しかし前著を読むうちに、やはり本書も読んでおくべきではないかと思い、遅まきながら手に取ってみた。しかし「持続可能な医療」というタイトルは本書の内容の一部しか捉えていない。「医療制度を通して考える持続可能な社会」といったタイトルの方が適切ではないか。すなわち、医療制度だけでなく、より良い医療制度、持続可能な医療を構築していくためには、持続…

現代社会はどこに向かうか

…本。内容としては既に広井良典氏などが書いてきた「グローバル定常型社会」を見田氏なりの書きぶりで書いているという感じがしないでもない。「はじめに」で指摘する、1970年代には既に人間の増殖率は減速局面に入り、「定常期」に入っているという事実にはドキッとした。また、グローバル・システムを球体の無限にして有限な「閉域」として捉える視点も、いかにも見田宗介らしい。 そして、それ以前の近代における根本理念(<自由>と<平等>)と現実原則(<合理化>)が矛盾し、合理化を進める上での生産主…

閉じていく帝国と逆説の21世紀経済

…常型社会」を提言する広井良典が思い出されるわけだが、2017年8月の「ASAHI REVIEWS」では、広井の「人口減少社会という希望」に対して水野が書評を書いている。それほど多くの字数を書いていないが、シンパシーを感じていることはよくわかる。どこかで二人の対談などがないだろうか。そんな企画本があったらぜひ読みたいと思う。 日本の、世界の、人類の未来はどうなっていくのか。「蒐集」に囚われていても、それらを死後に持っていけないのだから、そろそろ蒐集は止めた方がいい。それよりも今…

喪失の戦後史

…状況に移っていく。 広井良典らが言う、いわゆる定常化社会への移行だが、平川氏の視点が特徴的なのはあくまで庶民の生活に視点を置き、移行期的混乱を指摘する点だ。定常化社会への移行期。それはこれまでのみんなが少しずつ果実を分け合う時代から、みんなが少しずつ不満を分け合う時代になるということ。その精神をうまく共有し、定着させないと、アルゼンチン型のデフォルトや超格差社会、ナチスのような独裁政治を招来させかねない。そこまでは書かれていないが、そういう不安があるのではないだろうか。 先に…

ポスト資本主義

久しぶりに広井良典の新刊が出た。ネットで注文したら品切れ。それで書店で購入。読み始めるまで時間がかかった。「ポスト資本主義」というタイトルで広井良典が経済論を語るのかと思ったが、さにあらず。これまでにも提案をしてきた「緑の福祉国家/持続可能な福祉社会」について語る。 しかしそれを語る第3部の前に、第1部で資本主義の過去をおさらいし、スーパー資本主義対ポスト資本主義の二つの未来を予測する。そして本書一番の特徴は科学の進歩とその意味を考察し、社会の変遷と対峙させる点にある。第2部…

知の現在と未来

…の未来」。第1部では広井良典が基調講演を行い、続いて管啓次郎、高橋源一郎、長谷川一が加わってのパネル討論。第2部では柄谷行人による基調講演の後、金子勝、國分功一郎、堤未果、丸川哲史によるパネル討論が行われた。 こうしたシンポジウム記録本では、それぞれの主張の紹介が主となり、討議でさらに深まるということはあまり期待できない。本書においても、第1部では広井氏による定常社会の提言を受けて、それぞれの立場から話があり、また第2部では柄谷氏によるヘゲモニー国家と帝国主義等に係る歴史認識…

2013年、私の読んだ本ベスト10

…口減少という希望 (広井良典 朝日選書) 広井良典の本は出版されれば必ず読んでいる。筆者自身は本書を「グローバル定常型社会」、「コミュニティを問いなおす」、「創造的福祉社会」の三部作を踏まえたまとめ本と位置付けているようだが、三部作に加え、最近の思索も加えられ、ますます広井ワールドは広がっている。 現在の強欲資本主義やグローバリゼーションの先を見据え、新しい定常型社会を社会学の視点で描いていく。経済学者・水野和夫氏に通じる未来への希望を語る本である。【第8位】戦後史の正体 (…

資本主義という謎

…第三者の審級」とは、広井良典がいう「地球的公共性/地球的スピリチュアリティ」のようなものかと思うが、なにしろ「不在」いや、いまだあったことがない「未在」だから、それが何かわからない。ただ、大澤も水野も感覚的に述べるのは、若い世代への期待であり、未来世代への希望である。我々は何とかしてこの資本主義というロクでもないシステムを終わらせなければならない。撤退には向かない資本主義というシステムの中で。 水野和夫というエコノミストを私はこれまで知らなかった。資本主義を歴史的な視点の中で…

人口減少社会という希望

1年ほど前に広井良典氏の講演を聞いた。本書のあとがきに書いているが、「グローバル定常型社会」、「コミュニティを問いなおす」、「創造的福祉社会」の3冊を一つのまとめとして考えていたようだ。これらを読むと筆者の関心が、人類史の中に現在という時代を置いて、第3期の定常型社会の始まりとみて、新しい時代のあり方を考えるという点に次第に重点を移していっていることがわかる。 本書も第1部「人口減少社会とコミュニティ経済」は、人口減少時代という現実に即して、GNH(国民総幸福度)やローカル・…

この国はどこで間違えたのか

…佐野眞一、清水修二、広井良典、辺見庸の8人だ。このうち、清水修二だけは知らなかった。福島大教授だ。専攻は地方財政学。 本書を読むきっかけはいつものように内田樹だ。そして内田樹の切れ味はいつものように鋭く、視野はやはり広い。他の7人もそれぞれ興味深い論を述べているが、それぞれ専門分野の中から沖縄と福島の状況を述べている感じがする。 7人の中でもっとも納得し、かつ目を開かれたのは若干29歳の開沼博の話だ。中央に規制せざるを得ない地方の現実を、地方の不甲斐なさや無見識を言い募るので…

創造的福祉社会

…ちくま新書)作者: 広井良典出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2011/07/07メディア: 新書購入: 3人 クリック: 47回この商品を含むブログ (21件) を見る ●資本主義における政府部門の介入が、事後的な貧困救済策(生活保護)→社会保険→ケインズ的雇用創出政策という具合に進化してきたという点を述べたが、実はこの一連のプロセスとは、国家あるいは「中央政府」の活動領域が、その財政規模を含めて順次拡大してきた歴史でもあった。/それが、同図のピラミッドの頂点のさらにそ…

死生観を問いなおす

…ちくま新書)作者: 広井良典出版社/メーカー: 筑摩書房発売日: 2001/11メディア: 新書購入: 5人 クリック: 52回この商品を含むブログ (15件) を見る ●私たちがいま生きているこの宇宙、つまり誕生と同時に「時間」そのものも生まれたというこの宇宙は、それ自体はいわば「時間のない世界(無・時間性)」の中にぽっかりと浮かんでいる島のようなものではないか(P038) ●「生産」や「性(生殖)」から解放された、一見(生物学的にみると)”余分”とも見える時期が、「大人」…

グローバル定常型社会

広井良典氏の岩波新書の著作「定常型社会」は10年ほど前に読み、非常に感銘した記憶がある。本書はその当時の考察をさらに進め、グローバル化時代における定常型社会の有り様について、(1)数十年の視座で先進国の視点から、(2)数百年の視座で後進国も含めた全世界的な視点で、(3)数千年から数億年の視座で人類・文明という視点から、それぞれ考察を進め、最後の第4章で「ローカルからグローバルへ」の全体構造として示す。 このとき対になるいくつかのキーワードがある。それが「公−共−私」であり、「…