とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

マニフェストではなくビジョンで選ぶ

 民主党がいち早くマニフェストを公表し、その内容に対して自民党やマスコミ各社が「非現実的だ」「ぶれている」といった論評を加えている。自民党マニフェストは31日に公表されるそうだから、今度は自民党に対して「ばらまきだ」といった批判が出るのだろう。
 今回の総選挙を「政権選択選挙だ」と言ったのは麻生首相自身のようだが、マスコミは政権選択はマニフェストの内容で競われるかのように言う。本当かな。
 政権選択と言われると、自民党に対しては、自民党政権が過去にどういう政権運営をしてきたかを評価せざるを得ない。民主党に対しては、取り敢えずマニフェストも参考に、民主党政権がどういう政権運営をするかを想像する。
 現実には社会経済は常に動いているわけだから、マニフェストどおりに実行できない場合や実行してはいけない状況になることもあり得る。マニフェストだけが勝負なら、選挙後はマニフェストどおりの事務執行を監視するだけが議員の仕事になる。民主党はあたかも官僚対応だけが仕事のように言うが、常に変化する現実に対して、官僚と共にどう国家運営をしていくかが問われる。問題はマニフェストではなく、現在の社会・経済状況における政権運営の方針であり、能力だ。
 「アゴラ:ビッグ・アイディア/ビッグ・ヴィジョン政治の復活−矢澤豊」に次のような記述があった。

●こうした先が見えにくい混沌の時代にあって、選挙民が求めているのは、従来通りの政策をよりスムーズに行う政治ではなく、見通しの効かない未来に対してあえてビジョンを提示出来る政治ということになります。人々は「次に目指すべきもの」を求めているのです。意識しているのと無意識であるのとを問わず、毎週エコノミスト紙を読んでいるとか「みのもんた」さんを観ているとかにかかわらず、程度が高いの低いのといった問題とは別のより根っこの部分で、有権者はこれからの時代の座標軸となる国家ビジョンと、それを裏付ける政治思想/信条/主義/アイディアを求めているのです。

 全くそのとおりと思う。そのゆえに今回の総選挙に対して全く期待と希望が持てない。こうした思いをうまく掬い挙げることができなければ、意外に投票率は伸びないという気もする。たとえ政権交代がされたとしても、その内実は「ノー!自民党」であって、「イエス民主党」ではないだろう。一方で明確なビジョンを掲げたポピュリズムファシズム政党の台頭という危険性もあり得る。まさに混沌の時代だ。