季刊で6月10日発行というのはサッカー専門誌としては辛い。W杯特集にしてしまっては賞味期限は1ヶ月しか保たない。「どうせ日本は3連敗だろう」というあきらめが先行する。そしてJリーグはいよいよ人々から忘れられていく、と思ったか、特集は「Jリーグを救う50のアイデア」。
正直、面白い記事は少なかった。海外リーグやクラブの成功例を紹介されても、イマイチ親近感が持てない。それよりもマンチェスター・ユナイテッドが倒産寸前にあり、ファンが買収行動になり出したという話の方が興味深い。
Jクラブも、川崎フロンターレ、ファジアーノ岡山、FC岐阜、アルビレックス新潟、松本山雅FCが取り上げられ、そして前号に続いて、大分トリニータ再生の物語が書かれている。それぞれそれなりに興味深い。ただし何を言いたいかよくわからないインタビューを漫然と掲載するのはやめてほしい。頭が混乱する。
結局、見るべき記事はいつもの連載。「Hard After Hard」「サッカー番組向上委員会」「西村卓郎を巡る物語」「僕らはへなちょこフーリガン」。2回目の連載となる「日本サッカー戦記」で取り上げたW杯フランス大会のアルゼンチン戦の回想も興味深い。
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●日本はW杯で善戦をした。だが反面、それはW杯だからこその肉薄だったのかもしれない。まだまだなんだ、と、それを教えてくれたのがW杯だったと名波は言う。(P112)
何となく今大会の日本の活躍がダブって見える。ベスト16はW杯だからこそだったのかもしれない。まだまだなんだ、と。長谷部が言った「Jリーグをよろしく」という言葉を噛みしめた。
●「(サッカーの)サポーターを単に物を店で買う客と同じにしてはならない。サポーターとは、クラブの成功を心の底から祈り、深い文化的な関わりを持つ。クラブの財政問題を直接左右する権利はなくとも、意見を表明する権利はある」・・・トリズマン会長が言うように、この国ではサポーターとクラブの関係は非常に情熱的で生活に密着したもの。この人たちにとって、人生はフットボールなしでは、愛するクラブなしでは成立しないのだ。(P047)
●私が思うFC岐阜の経営で一番大事だと思うことは、経営的に自立して、他の競技団体とも仲良くしながら、スポーツを通じた町づくりについて貢献するということです。一番大事なものといえばお金ももちろんそうですが、それはやっぱり“人”なんです(P075)
●私は松本山雅の経営方針や将来のビジョンに才気走ったものを感じなかった。・・・酷な言い方をすれば、素人の域を出ていないと感じた。それこそ、松本山雅の凄味であり、日本に例を見ない優れたクラブ設計を行った証左なのである。昨今、いくつかのJリーグは、卓越した経営手腕が求められているといわれる。ごく当然の既成事実のように語られるが、本当にそうだろうか。なぜ、世界に何百ものサッカークラブがあり、多くの人々に親しまれるのか(莫大な儲けを出すのはほんの一部だ)。むしろ、凡庸な人間でもやり方次第で運営できるから、これだけ広がったと仮定することはできないだろうか。(P083)