とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

『ただちに・・・とはいえない』という言葉

 名古屋大学で開かれたシンポジウム「東日本大震災に学ぶ」の中で、本題とは別に興味深い話があった。それは、会場からの「『ただちに・・・とはいえない』はどう捉えればいいのか」という質問に対して、シンポジウム講師の一人から、「『ただちに』という言葉には二つの意味がある。」と言われたことだ。
 最初、何を言っているかよくわからなかったが、よく聞いていると、次のことを言っているらしい。すなわち、一般的には「今は大丈夫だが、将来的には障害等が発生する恐れがある」という意味で捉えて、「なんと無責任か」と多くの国民が不信感を抱いたのだが、別の捉え方があるというのだ。
 それは、「このままの放射線量が継続すると、障害等が発生する恐れがある」というもので、つまり「今の放射線量で終息すれば障害等は起こらないと見込める」というものである。この意味であれば、すぐに大騒ぎする必要はなく、今後の経過をよく観察し、その後の対応については追って検討していくという態度になる。
 枝野官房長官はいったいどちらの意味で使ったのだろうか。自覚的にこの言葉を使っていないというのが真相だとは思うが、もう少していねいに言葉を補完してもらえれば、国民も安心したかもしれない。いや、前者の意味で使ったのだから、国民の怒りや不安は正当だという考えももちろんあるだろう。しかし放射線量と健康被害に関する研究は、現時点ではそれほど明確ではないというのが本当のところのようだ。いずれにせよ何事によらず、100%白とか黒とは言えないものだから仕方ないのかもしれない。