とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

大津波と原発

 東日本大震災が起きてから3週間ほど経った4月5日に、Ustream配信番組「ラジオデイズ」で鼎談した内容を書き起こしたもの。いろいろ語られるが、最大のキーワードは「一神教」と「緑の党」。
 原発は怒れる神に等しい。これを一神教文化の欧米では出来得る限りの畏怖を持って対応してきたが、日本ではアニミズム文化で「安全です」「クリーンです」と祝詞を挙げてそれで安心してしまった。
 だから一旦事故が起きると、どう対応していいかわからず、思わず消防車で水をかけたり、ヘリコプターからバケツで水を撒いたりした。フランス人はこれを見て「これぞブリコラージュ」と言ったそうだけど、確かにB21に対して竹槍を突き出したという戦時中の笑い話を思い出す。
 こうした危機的な時代にあってはもっとセンサーを鋭敏にしろと内田樹は言うのだが、何と言っても日本では政治家を筆頭に「安心だ。大丈夫だ」と祝詞を挙げているからかなわない。自分の危機は自分で見極めることが必要だ。
 もう一つのサプライズ中沢新一の「緑の党」設立宣言。今週月曜日の中日新聞1面でこのことが大きく扱われていたが、内容は本書で書かれていることと大差ない。いったいどうなっているのかな。ラジオの中でのファンタジーだったのか。あまり期待せず、中沢新一の今後の行動を見ていよう。

大津波と原発

大津波と原発

原子力にいいも悪いのないわけだよね。原子力っていうのは、ある種の自然物だからさ。問題は、それを人間がコントロールできるかどうかっていう人間の側の能力の問題でしょ。・・・とてつもないテクノロジーを発明する能力はたぶん天才的な人間には備わっている。だからハイテクノロジーが生まれてくるんだけど、そのハイテクノロジーを安全かつ恒常的に管理するためには、かなり高いレベルの知性が、集団的・継続的に必要なんだけど、それはないでしょう。(P47)
一神教の文明の中には、恐るべきものをどうやって制御するかということについては伝統的なノウハウがしっかり血肉化しているんだと思うんだよ。「鬼神を敬して之を遠ざく」だから。・・・日本人は日本人独特のしかたで荒ぶる神を制御しようとするんだけど、「恐ろしいもの」を「あまり恐ろしくないもの」と見境がつかないように「ぐちゃぐちゃにする」というのが日本的なソリューションだから。(P64)
●ぼくたちの祖先は数万年前に「死者」という概念を持ちました。そして、それによって、「存在しないものが切迫する」という実感を手に入れました。この実感を手がかりにして、眼に見えず、音が聞こえず、匂いもせず、手触りもしないが、自分の生存にかかわるかもしれない、何かとてつもなく危険なものが接近してくるときに「アラーム」が鳴るように心身を訓練しました。・・・ぼくはそれが人間性と呼ばれるもののもっとも原基的な形態ではないかと思っています。・・・その上で、ぼくは、人間が犯す人間的過失はそのほとんどがこの「アラーム」の機能不全から起きていると考えているのです。(P116)