とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評 issue05

 今号のフットボール批評の特集は「日本サッカーの破壊と再生」。と回りくどいことばを使わずとも、一言で足りる。「ハリルホジッチ」と。日本代表監督に就任したハリルホジッチ監督を徹底的に分析しようというものだ。しかし代表監督として指揮したゲームはわずか2試合。そこでハリルホッジの過去について、彼をよく知るジャーナリストや選手・指導者などに取材していくこととなる。その相手も多彩だ。読めば読むほど期待が高まる。トルシエ監督と同様、きっと日本サッカーをまた一段と高いレベルへ引き上げてくれるだろう。
 多くの代表関連記事の中で、「シリーズ:守備のセオリーに反するサムライたち」が興味深い。これはハリルホッジが指揮を執って快勝したチェニジア戦、ウズベキスタン戦の守備を取り上げて分析したもので、相手チームのあまりに不真面目な守備に、日本の快勝を手放しで賞賛することを戒めるものだ。守備をきちんと批判することで日本サッカーもさらに伸びていく。たぶんそんな目が日本のメディアにはないのかもしれないが。
 連載記事の中では、難病ALSに罹患したFC岐阜の恩田監督を取り上げた「よろこびのうた」や、安永聡太郎を取り上げる「Hard After Hard」が興味を惹く。「Football ORIGINAL SOUNDTRACK」ではトットナムのハリー・ケインを取り上げるが、今回は序説。モウリーニョやヴェンゲルのバロンドール批判で誌面が尽きてしまった。次号を楽しみにしよう。
 ところで次号の特集は「フットボールミシュラン(仮)」というのだけれど、これって何の特集? まさかミシュランに掲載されたスタジアムを紹介するわけでもないだろうに。ということで次号も楽しみにしたい。

フットボール批評issue05

フットボール批評issue05

●監督には、常に勝利を重ねているクラブで勝つために雇われる者と、窮状から救うために雇われる者がいる。ヴァイッドは後者だ。彼はいつも、弱体化していたり、問題を抱えているクラブを救い出すために請われた。そして、望まれたとおりの結果を残した。ヴァイッドのやり方を好むか好まざるかは、意見が分かれることだろう。しかしひとつだけ確実に言えるのは、彼は必ず、自分のいた場所にポジティブな要素を残していく、ということだ」(P032)
●「敵への守備」への考察と言及(および批判)については日本のサッカー界では極端なまでに少ない、むしろ皆無に近いと言います。・・・プロである以上は、DFがこれだけ恥ずかしい守備をしたのですから、厳しく批判されなければならないはずです。・・・この緩い守備(環境)のなかでプレーを続ける限り、せっかくの才能を持つ宇佐美(あるいは柴崎)にもまた真の意味での成長を促すことはできない。・・・強いDFが強いFWを生む。その逆もまた然り。(P061)
●これまでの安永の発言を聞いてくると、この人が非常に合理的な考え方をすることがわかる。現在・・・その明快な解説が玄人筋から高い評価を受けているのも、その分析能力によっている。/このように論理的な能力が高いのは思考型の人の特長で、よく監督とぶつかるのはこのタイプの人である。彼が感情型の松田直樹に反発しながらも魅かれ、いつしか親友になっていたのも、ちょうど正反対の資質を持っていたからだろう。(P113)
●「関係を築く」ジョゼ方方法論について、彼は三つのキーワードを上げる。・・・「親愛の情」「触れ合い」「共感」――最後の「共感」は心理学で「感情移入」とも訳される。平たく言えば、どれだけ障害を持つ子供たちの身になって理解し接することができるかに腐心した、ということだろうか。・・・そして彼は今、この教師時代の体験を、並み居る世界最高レベルのプレーヤーたちを相手にしたコーチングに生かしているのだと言う。(P114)