とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

フットボール批評 issue29

 今号の特集は「アーセナル」。これまで、海外のチームをテーマにしたことがあっただろうか。それも徹頭徹尾アーセナル。これまで日本のチームを取り上げた際も、本誌後半の連載物は、特集したチームとは関係なく書かれていることが普通。第一、特定のチームをテーマとして取り上げても、それとは別に第2テーマを立てることが一般的だった。ところが今回は、連載物ですら、多くはアーセナルを意識している。

 例えば、武田砂鉄の「スポーツ文化異論」は、ドルトムント監督当時のクロップが「ヴェンゲルはオーケストラ、うちはヘヴィメタル」と言ったことを取り上げ、ヘヴィメタ論を書いている。もっとも大して面白くはない。「ヘヴィメタだって繊細」と言うんだが、それならクロップだって「ゲーゲンプレスも繊細だぞ」と言うんじゃないか。

 アーセナルと言えば、ヴェンゲル監督だが、昨季途中からアルテタが監督に就任した。記事の多くは、ヴェンゲル時代のサッカーを論じるものだが、アルテタに関する記事もある。だが指揮を執ってまだ1年も経っていない。評価はこれから。それでも前のウナイ・エメリよりは評価は高いようだ。

 そして巻末には、「ガナーズクロニクル」が掲載されている。プレミアリーグ以前は、チャップマンとグラハムを中心にざっと見通すが、1992年のプレミアリーグ開始以降は毎年の成績や選手リスト、そしてサッカー評が載せられている。これを見つつ、当時を思い出した。グランパスの監督から突然、シーズン途中にアーセナルに引き抜かれた。それで初めて、アーセナルというチームを知り、注目をし出した。とは言っても、当時はまだDAZNもなく、テレビ中継も少なかった。無敗優勝を達成した「インヴィンシブルズ」の2003-04シーズンも、記録は知っているが、ゲームはほとんど観ていない。NHK-BSでプレミアリーグを放送し始めたのは2007-08シーズン。セスク・ファブレガスが中盤を支配し、アデバヨールファンペルシーの2トップ。SBはサーニャクリシーだった。

 当時はアーセナルのゲームを喜んで観ていたが、DAZNが始まり、いつでも観られるようになると、ヴェンゲルのサッカーもやや退屈になってきた。そして2018年での退任。しかし本誌を読むと、またアーセナル戦を観てみようという気になってくる。今季は開幕連勝と幸先良いスタートを切った。第3節には早くもリバプールと対戦する。これは絶対観なくては。

 

フットボール批評issue29 [雑誌]

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○試合では、誰もが自分の役割を持っているわけだけど、実際のピッチ上では、その場の判断で即興的なプレーをしたっていい。相手は自分の動きを研究してきているのだから、完全に型にはまった戦い方じゃだめなんだ。敵の意表を突くことが必要になる。アーセンは、そう理解していた。だから、僕らに自由という名前の責任を与えようとしたんだ。(P52)

○本当に活躍できるかどうかは、プレー以上に言葉とキャラクターなんですよね…選手がサッカーに費やすのは、1日に4時間が限度。そこで明暗を分けるのは、残る20時間をいかにそこの国の人間として過ごせるか、なんです。…ある時、田邊はヴェンゲルに問われた。「どうしてウチには、こんなに良い選手が来るのだと思う?…選手たちがキャリアで一番長く過ごす場所はクラブハウスだ。だからクラブハウスが充実していなければ、選手は集められない」(P95)