とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

分断と凋落の日本

 読んでいると気が滅入ってくる。確かに日本は凋落した。その原因は、安倍政権にある。ではどうすればそこから抜け出ることができるのか。再生の道はあるのか。筆者なりの提言が書かれた第6章の冒頭で、さまざまな分野の専門家と話をしても結局、「もう手遅れだよね」「難しい」という結論になってしまう、と書かれている。ある財務省幹部OBは「僕は、本当に3年以内に日本は破滅すると思いますよ。絶対に」(P299)と言ったそうだ。

 確かにそうかもしれない。「破滅」がどういう状況を指すのかわからないが、古賀氏が想像するには、経済破綻し、飢えと物資の不足が蔓延する社会ということらしい。確かにその可能性はあるかもしれない。それを回避するためには、まず「もう大国ではない。大国には戻れない、という現実を直視せよ」と言う。そして「過ちを認め」「責任をとれ」と言う。だが、今、日本のかじ取りをしている政治家や官僚はまず、こうした行動を取らないだろう。もし破綻したら、彼らは一斉に逃げ出すことは目に見えている。問題は、その後どうするかだ。最後に「新しい改革に取り組むこと」と言う。諸悪の根源たる人々がいなくなれば、自然にそうなるのかもしれない。

 いずれにせよ、酷い国になった。救国の士は現れるだろうか。いや、救国の機運が立ち上がるだろうか。「かつていっとき繁栄を尽くした『日本』という国があった」と言われるのだろうか。いや所詮、国などは擬制のモノ。人類はどうやって生き延びていくのか、ということを考えた方がいいかもしれない。いずれにせよ、日本はもうダメな国になってしまった。生きているうちに地獄だけは見たくない。そんな気持ちになってくる。

 

 

対米追従主義を探りながら安全保障は米国に任せて軍拡を否定し経済成長に専心した吉田茂氏。…自主憲法制定を夢見た“昭和の妖怪”岸信介氏。そして、その妖怪から自主憲法の夢を受け継ぎ、さらに真の軍事大国化を目指した”妖怪の孫”安倍晋三氏。彼ら3人には毀誉褒貶はあるが、それぞれ内容のある夢があった。しかし、岸田氏には実のある夢はない。あるのは、偉大だと称せられる3人と並びたいという空疎な夢だけだ。(P30)

○円安によって…何もしないで利益が膨らみ…努力するモチベーションが下がる。…これが、「アベノミクスで景気が良くなった」という言説の正体だ。…経団連が…要求し、それに対して安倍首相は…「世界で一番企業が活躍しやすい国」作りで応えた。その中身は…何も努力をしなくても利益が出る環境整備だ。そして、その対価として経団連企業に献金を求めた。…そして、日本の産業の競争力は…取り返しのつかないほど衰えたのだ。(P164)

○第二次安倍政権…は、表向き政治主導と言いながら、実は、官邸主導と官僚主導のハイブリッド構造を取っていた…。そして、官僚主導の分野では、霞が関官僚は…我が世の春を謳歌していたのだ。…安倍氏が関心のある分野では、すべてが官邸主導となる。…一方、安倍氏が関心のない分野は…好き放題やれることになる。/好き放題とは、官僚と族議員が結託して利権をむさぼる行政だ。(P264)

自民党がこれだけ失敗しても野党の支持率は低迷したままだ。/自浄能力を失った自民党を外部から正すはずの野党にその力がないとすれば、ボロボロとなった岸田政権でも低空飛行を続け、墜落はしないということになってしまう。/その結果、自民党政治は何も変わらず、国民の政治離れはさらに加速する。…これを「民主主の危機スパイラル」と言えばいいのだろうか。(P294)

○「古い改革」とは、経済効率のみを重視する改革だ。…私が提唱する「新しい改革」とは…一言で言うと、「効率よりも公正を重視」する改革である。そのキーワードは「人にやさしい」「自然にやさしい」「不公正に厳しい」という3つの哲学だ。…「人にやさしい」とは「企業より個人」を重視するという意味でもある。(P311)