裁判における、判決の理由や、その後ろに付け加えられる付言・所感・傍論、また説諭、さらには閉会後の言動や審理中の補充質問などで裁判官により発せられ、また付け加えられた言葉。それらのうちから、面白いもの、興味を惹くものなどを集めたもの。
「死刑はやむを得ないが、私としては、君に出来るだけ長く生きていてもらいたい」などは、矛盾しているようだが、死んで終わりではなく、刑が執行される前に「遺族に謝罪を続けていってください」という裁判官の意志が隠れている。量刑相場というものがあり、必ずしも裁判官の思いのまま量刑を決めることはできないらしい。そんなときに主文とは別にいろいろな形で心情を吐露する。「爆笑お言葉集」というタイトルが付いているが、「爆笑」な言葉は少ない。どちらかと言えば、泣かせる言葉の方が多いように思う。
それにしても、市の図書館のサイトの新着図書一覧に本書が載ったのが1年近く前。気が付いたときには既に70番目位になっていた。てっきり最新刊かと思って予約したが、なんと本書の初版は2007年。地元の図書館はどうして今頃、本書を新着図書として所蔵することにしたのか。そして、どうして70名近くの人が予約をしたのか。どこかの新聞の書評で紹介されたのかな? 謎だ。ま、お気楽に読めたのでよかったけどね。それ以上でもなく、それ以下でもない。時間潰しにはいい本でした。
○結果的に執行猶予をつけた岩垂裁判長。にもかかわらず、不自然なほど強い言葉で被告人を責めたてています。だって「万死」ですよ。1万回死ぬんですよ。毎日欠かさず死んでも27年半かかります。…心情的には重い刑を言い渡したいのに、量刑相場がそれを許さないという「板ばさみ」に逢ったとき、担当裁判官は被告人に向けて、一段と痛烈な非難のメッセージを浴びせるような印象を受けます。それによって量刑の軽さとのバランスを取ろうとしているのでしょうか。(P81)
○被疑者は検挙され、「司法浪人の35歳逮捕」と物珍しく報道されました。「いつから『司法浪人』は一般名詞になったんだろう」と、当時、司法浪人をやっていた私は悲しくなったものです。/司法浪人は、経済的・時間的資源を食いつぶすだけで、社会的には何も生みだしていない存在です。その後ろめたさと将来への不安から、精神を害してしまうケースもあります。被告人をかばうつもりはありません。でもあえて言わせてもらえば、夢を「あきらめない」ことなんか簡単、「あきらめる」ほうが数段キツいものです。(P113)