「政府は必ず嘘をつく」以降、多くの堤未果の著書を読んできた。昨年発行された本書では、能登半島地震と災害ショックドクトリン、ウクライナとガザ戦争、農業基本法の改正、SNS等における言論統制などを取り上げる。太陽光パネルの危険性、ガザ紛争の影にある資源を巡る争い、農業・漁業を犯罪化するエコサイド法の企みなど、表に出た情報の裏に潜むいくつかの事実も紹介される。
もちろんそれらには震撼とするのだが、昨年は、アメリカ大統領選におけるトランプの勝利、衆議院選挙における自公両党の惨敗と石破政権の誕生、韓国における非常事態宣言と大統領の弾劾、そしてフランスやドイツなどにおける政権交代の予兆など、世界の情勢が大きく変わりつつある。そしてその背後には多くの国民の違和感と行動があった。
第5章「<民は愚かで弱い>の違和感~未来は選べる」では、権力サイドのさまざまな企みに抵抗し成果をあげてきた市民の活動を紹介する。だが、やはりそれはほんの小さな抵抗だ。兵庫県知事選などからは、情報に翻弄される愚かな民の姿も見えた。そしてそれを陰であざ笑う人々の姿も。
本書が指摘するように、巷で流通する情報の多くは検閲され操作されている。しかし、その中でも自分を失わず自分の頭で考えるようにしたい。そのためには「何かおかしい」という違和感は大事かもしれない。自分の頭で考える市民が連携する。それが未来を動かす。今年がそうした動きの始まりの年となればいい。
○東日本大震災の後…やたらと乱立している太陽光パネル。/でも…自然災害にめっぽう弱い上、太陽が当たっている限り発電するので、災害時などには下手に近寄ると感電する<危険物>になってしまいます。/能登半島地震でも、パネルの重さで屋根の耐震強度が弱くなった家が、大量に倒壊していました。…雨が降れば…発がん性の有害金属がどんどん流れ出し、地面を通って地下水に入り込みます。(P38)
○1999年…ガザ沖36キロ、水深603メートルのガザマリン油田…に最大1兆立方フィート以上の天然ガスが眠っていることが突き止められたのです。/パレスチナ自治区にとって、まさに天から与えられた大きなチャンスでした。…一方…イスラエルにとっても、自前のエネルギーは喉から手が出るほど欲しいもの、…そこでまずは…封鎖していたガザ地区沿岸の、立入禁止区域を拡大。これを皮切りに、ガス田を巡る、新たな争いのゴングが鳴ったのでした。(P66)
○昨今、新型コロナや気候変動、ウクライナ紛争など、ある特定のテーマについては、対極にある情報や異論が一切許されない、おかしな空気は作られている…科学的予測が正しいかどうか考える材料が欲しくても、一方の側のものしか手に入らなければ判断できません。/<気候変動>の名の下に、農業を犯罪化するという、欧米発の<エコサイド>。/ついには私たちの主食であるお米までが、ターゲットにされはじめました。(P134)
○政府が検閲させていたのは、ツイッター社だけではありません。/メタ社傘下のフェイスブックやインスタグラムにも、同じ手が伸びていたのです。…「私たちが正確なデータを投稿しても、SNSでは偽情報のラベルがつけられていました。…SNSが、まさか情報をより分けているなんて、想像もできないでしょう」…その後、ユーチューブもここに加わりました。…「これは米国史上最も危険な言論弾圧だ」(P163)
○テクノロジーの進化によって、私たちは今、かつてないほどに、見えない形で情報統制しやすい社会に生きています。/<正しいか、間違ってるか>/<正義か悪か>/<ゼロか100か>/デジタル世界の二元論におっこちてしまったが最後、思い込みやステレオタイプが強化され、自分の生きる現実の中に、第三の視点が入ってこなくなっても、気がつきません。/人間は、外の世界を見るように、自分自身のことも見ていますから、白か黒かだけの世界にいると、正しくないものを許せなくなる一方で、間違えることも怖くなり、だんだん本当の自分がわからなくなってしまいます。(P212)