今年読んだ本は、専門書を除き、全部で54冊。昨年と同じだ。振り返ってみると、年前半に読んだ本に多く☆が付いている。確かにそんなイメージ。ベストセラーになった本は少ないが、私が面白いと思ったのは、以下の本たちだ。
今回のテーマは、非正規社員が労働闘争を行う話。…全部で609ページの大部ながら、1週間も経たず一気に読み上げてしまった。面白い。昨年からの裏金問題にみるように、日本にはまだまだ不正義かつ不公正な事柄に溢れている。次作にも大いに期待したい。
監督ジダンに対するさまざまな批判に対して、「反復の人」ジダンを援護する筆者の筆致は興味深い。/「ジダン研究」というタイトルどおり、その当時だけでなく、現在の視点からも当時のジダン、そして現在に続くジダンを「研究」するその視点は熱い。そして楽しい。
[第3位]なぜ気象学者は間違ったか (小山新樹 文芸社)
「物理法則上、IPCCの地球温暖化理論は間違っている」と主張するものである。ちなみに、筆者の小山新樹氏は…市井の研究者である。しかしこうした経歴で判断してはいけない。…なにが地球温暖化の原因なのか? 筆者はそれを、海洋汚染だと見る。
民主主義が、人権意識が国民に根づいている。…自然環境保護も徹底し、自然エネルギー大国でもある。また、医療費や教育費も多くは無料だ。移民も難民も受け入れ、差別しない…。みんなが「私は幸福だ」と言う。…日本もこんな国になると良い。理想を掲げ、前向きに生きていく。そんなコスタリカの人々がまぶしい。
「ノイエ・ハイマート」とはドイツ語で「新しい故郷」という意味。ドイツの難民居住地の入口に掲げられた横断幕。…避難民とはすなわち「難民」。ならば今もなお、能登地方では多くの難民が暮らしている。…まさに「難民」は今、われわれの近くにいる。そして、われわれもいつ同様な「難民」になるかもわからない。
[第6位]別冊NHK100分de名著 宗教とは何か (釈撤宗・最相葉月・片山杜秀・中島岳志 NHK出版)
宗教に認知的不協和論を見出す釈撤収のドライな視点には少し驚いた。…宗教とは何だろうか。…「宗教とは何か」は実は「人間とは何か」を問うているのかもしれない。
[第7位]重力のからくり (山田克哉 講談社ブルーバックス)
一般相対性理論における重力場が「なめらかに連続的に変化している」ことを前提としているのに対して、量子論における電磁波などのエネルギーは飛び飛びの値で離散的にしか変化できない。そのことによる矛盾を解決できないでいるというのが物理学の現状だ
最後に短い第3部が添えられる。結局、ここで私は、夢読みの仕事をイエローサブマリン少年に譲り、現実の世界に戻っていく。だが、どちらが本当に現実の世界なのか。我々の世界は、頭の中にあるのか、身体にあるのか。
森永氏も、意外にもアベノミクスを部分的には評価し、「安倍晋三回顧録」に綴られた財務省批判を好意的に評価している。もっとも結局は…消費財増税を実施してしまったことが、現在の経済情勢を招いた。それも含めて、ザイム真理教の策略だったのではないかと憶測している点も興味深い。
自分に自信をもって孤立を恐れないこと。それが「勇気」。そしてそれは同時に、「他者が他者であることに耐える力」。かと言って、けっして唯我独尊の勧めではなく、自分の自信に対して常に懐疑的であること。たぶんそういう強さも必要なのだと思う。
他に☆をつけたのは、以下の2冊。ベスト10の選外としたが、実は第6位以降はほとんど差がない。来年はもっと多くの本に出合えたらと思う。
「コモンの『自治』論」 (斎藤幸平+松本卓也 集英社シリーズ・コモン)
「なんかいやな感じ」 (武田砂鉄 講談社)