とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

スタートアップ支援というが、選手はどこにいるの?

 新年といえば、スタートアップ! 最近、新聞等でもよく見かける言葉だが、従来のいわゆる起業とは何が違うのか? そもそも誰がスタートするのか? スタートアップするのはベンチャー企業とは違うのか? など、クエスチョン・マークが頭の中を駆け巡る。行政でも「スタートアップ支援」を掲げる政策が進められている。60歳を過ぎて、今さら起業する気もない自分には所詮、関係のない話だが、それでも少しネットで調べてみた。

 そもそもスタートアップとは、「起業」とか「新規事業の立ち上げ」といった意味で間違いではないが、「ベンチャー(Venture)」がそもそも「結果の予測できない、危険が及ぶ恐れのある冒険的企て」という意味で、「投機」という意味もある。「ベンチャー企業」とは「ベンチャー投資家から投資を受けている会社」という意味だと言うが、ベンチャー投資家はどんな事業家に投資をするのかと言えば、既存の銀行などが貸したがらないハイリスク・ハイリターンな起業家だと思うので、当然、「多少のリスクはあっても、今後の成長が見込まれると判断した起業家」ということになる。スタートアップを説明するいくつかのサイト(「経営PRO-Q」など)を見て回ったが、「ベンチャー企業は所詮、スモールビジネス。スタートアップは急成長できる新しいビジネスモデル」という説明は、スタートアップとの違いをうまく説明できているとは思えなかった。

 結局「ベンチャー企業支援」という言葉ではカネを出してくれなくなってきたので、「スタートアップ」という言葉を発明したというだけのことではないか。将来に対する不透明感が増す中で、人々はいよいよ安定志向になっている。これが昨今の景気低迷の要因でもあるが、そうした人々の気持ちを少しでも盛り上げ、カネを吐き出させようという魂胆が「スタートアップ」という言葉の真の意味のような気がして仕方がない。

 若しくは、大企業がこれまでのような終身雇用を維持できなくなってきて、そうした余剰人員を「スタートアップ」という美名の下に退職を促そうとしているのか。そうであれば、行政が積極的に「スタートアップ支援」を打ち出してきていることも理解ができる。すなわち、「スタートアップ支援」の対象者は既存の大企業社員であり、これまでのようなリストラによる離職者やフリーターに対する「起業支援」とは違うのかもしれない。就職氷河期世代を相手にベンチャー起業支援などをしても、疲弊しすぎて、ほとんど参加してくれない。しかし今現在は大企業で働いている者であれば、スタートアップ支援に応じてもらえるかもしれない。そんな思惑が「スタートアップ」という言葉の陰には隠れているのではないか。

 もちろん、そんなふうに感じる私は、「スタートアップ」とは何の関わりもない旧石器時代の人間であり、落ちこぼれ、取り残される存在だとは思うけど、たぶん日本人の95%はそんな人間ばかりで、だから「日本などそのうちに沈没する。今のうちに日本から逃げ出そう」なんて声も聞こえるのだが、95%は日本とともに沈没するので、けっして寂しくはない。逆に、政府を挙げて「スタートアップ支援」に取り組んでいると聞くと、また大企業のリストラ支援のために税金の無駄遣いをしているのではないかという気になる。「スタートアップ」の次は何だろうか。言葉遊びをしているばかりで、結局、大勢は何も変わらず、ただ沈没していくだけの日本丸に乗っている。