とんま天狗は雲の上

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麻生首相のノー天気な記者会見と大政翼賛報道

 日曜日のサンデーモーニングでは番組冒頭に、麻生首相が日本記者クラブの会見で幾冊かの週刊誌を掲げて、「表紙を飾るタレントが誰かわかるか?」と得意満面で記者たちに質問していたという話題を取り上げていた。もちろん、出演していた論客たちからは、「こんなノー天気な話題で喜んでいる場合じゃない」と厳しい批判発言が浴びせられたが、見ている私も「そのとおりだ」と思わず怒りがこみ上げてきた。ちなみに、私が即答できたタレントがほとんどいなかったからではない(浜崎あゆみもえびちゃんも顔はわかっても名前がすぐに出てこないだけ)。
 G20でドイツのメルケル首相に浴びせた言葉、昨日のオリンピック調査団に日露戦争での勝利を持ち出したことなど、相変わらず現在の政治経済情勢への認識や周囲への配慮の欠如を露呈した発言が続いている。これに対してマスコミは、「西松建設事件で自民党支持率が若干回復し上機嫌になっている」と評するだけで、大きな問題とはしていない。後者はご愛敬にしても、前者については現在の経済状況と経済対策の有効性に関する話題なだけに、首相の認識不足を指摘する識者は多いが、マスコミが大きく取り上げることはなかった。
 3月中旬頃には、3月末で派遣切りにあう人が19万人以上といった報道がされていたが、4月以降、派遣切りに関するニュースはほとんど聞かれない。高速道路割引や定額給付金の支給に喜ぶ民衆の姿を取り上げ、明るい春を演出する。WBCでの優勝、イチロー日本記録石川遼のマスターズ出場(これはホント過熱報道だと思った)。暗いニュースは民主党西松建設事件やいくつかの刑事事件・裁判くらいで、経済不況については他人事のような感じである。そして補正の大盤振る舞いも、将来負担に対してアリバイ的なコメントは添えるものの、基本的には歓迎基調の報道に思える。
 与党は選挙に向けて、極力、社会不安を抑え、昨年秋以降の経済対策の効果を訴えたい意向だろうが、マスコミもそれに積極的に応え、すっかり大政翼賛報道に浸りきっている様子。まるで「社会全体は不況にめげず明るくがんばっている。あなたに起きている不幸は個人的なことで、社会のセーフティネットはしっかり機能しているから、今はとにかくがんばりなさい。」と言っているよう。そして最後の最後には誰も現れない・・・。
 戦前の報道状況もきっとこんなだったんだろうなあ。国の変調はこんなふうにして国民の気がつかないうちに進行するのだろう。あな、恐ろしや。