とんま天狗は雲の上

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貧困ビジネス・バッシングはパンドラの箱

 無料定額宿泊所事業を展開していたNPO法人の代表者らが所得税違反で告発されたことから、貧困ビジネスに対する世間の批判が厳しくなってきた。先週末の中日新聞では、無料定額宿泊所について、生活保護費の住宅扶助と同額の家賃に生活支援費を徴収した結果、残りが1〜2万円しか残らないことについて、水道光熱費や家具等の償却費も加えた料金であることや、食事提供や仕事斡旋等の実施も勘案し、一概に高額かどうかは断定できないと理解を示しつつ、代表者等が所得隠しを行うほどの収入があることからして、実態として高額だったのではないかと指摘し、行政の積極的な介入を求める論調の記事が掲載されていた。
 行政介入の内容として基準料金の設定や居室規模の最低基準規制などが考えられるが、過度な規制は無料定額宿泊所事業の縮小をもたらし、ホームレスの増加をもたらしかねない。行政による収容施設の整備を求める声もあるが、行政が整備した場合には、既存の無料定額宿泊所並みの低質な施設水準ではいられず、NPO等に委ねた場合にくらべてかなりの高額になり、かつ用地確保等も勘案すると迅速な対応は不可能と思わざるを得ない。
 結局、うまくNPO等を活用していく以外に方策はなく、貧困ビジネス・バッシングを一番危惧しているのは、行政なかでも基礎自治体である市町村の福祉担当者ではないだろうか。
 建築の世界では、姉歯問題に起因した建築確認審査の厳格化が建築不況を生み、世界同時不況と軌を一にして未だに立ち直れないという経験をしている。あれもマスコミの異様な姉歯バッシングが発端だった。
 今回の貧困ビジネス・バッシングも、単に行政の対応を求めるだけでなく、行政はどう対応すべきなのか、規制強化に伴う事業縮小の影響や対応強化に伴う人員確保や予算確保の問題など、十分な議論と検討をしなければ、かえって社会の混乱を招くだけになる恐れがある。貧困問題は、建築などの部分的問題や経済などのようにバッファ要因のある問題ではなく、社会不安に直結しかねない課題であり、慎重な対応が求められる。パンドラの箱は慎重にかつ覚悟をもって開けなければいけない。