レアル・マドリード対ACミランのチャンピオンズリーグ・グループGの対戦。結果は事前に知っていたが、ここまで一方的な展開だとは思ってもいなかった。いや、本音を言えば、十分想定できる内容。新戦力・新体制を整えたレアル・マドリードとモウリーニョの前では、旧態然としたACミランは全く手も足も出ない。レアルが一方的にサッカーをやり、ミランはただそれに付き合っていただけ。引き立て役にすらなれなかった。
それにしても、カカがいないというのに、レアル・マドリードのメンバーはすごい。クリスチャーノ・ロナウドだけでも十分インパクトがあるが、エジル、ケディラというW杯南アフリカ大会最大の発見と言っていいドイツ代表チームの精鋭にディマリアが華を添え、その周囲をシャビ・アロンソ、リカルド・カルバーリョ、イグアインといった実力派が支え、最後方では現在世界最高峰と言って過言ではないGKカシージャスがゴールを守る。
今、世界で最も強いチームは、バルセロナでもスペイン代表でもなく、レアル・マドリードではないかと思う。この才能あふれる集団の中で、C.ロナウドがどう溶け込むのかと思ったが、十二分にその個性・才能を発揮しつつ、ちゃんとチームに溶け込んでいるからすごい。モウリーニョがすごい。そしてゲーム開始早々からロナウドが躍動する。
7分、ロナウドのドリブルからシャビ・アロンソとつないでディマリアがミドルシュート。一方的にレアル・マドリードが攻め立てる。そして13分、シャビ・アロンソをパトが倒して得たFKをC.ロナウドが蹴ると、強烈なキックは壁の間を抜けてゴールに突き刺さった。イブラヒモビッチが飛び上がった脇でセードルフが思わず身体をよけている。
強い!と思ったのもつかの間、キックオフ再開直後、左SBマルセロのチェックにシャビ・アロンソがボールを奪うと、C.ロナウドがドリブル、クロスをエジルがシュートすると、ボールはCBボネーラに当たってゴールに吸い込まれていった。あっという間の2得点。この間、ミランはほとんどサッカーをさせてもらっていない。
16分にはR.カルバーリョが上がり、C.ロナウドに預けてドリブル。19分、ケディラからエジルがドリブル、C.ロナウドに引き継いで最後はケディラに渡す。C.ロナウドのドリブルは大きなアクセントになっているが、それだけではない。エジルやケディラ、シャビ・アロンソの関わり、また左SBマルセロの役割も大きい。そして、イグアインの動き、逆サイドからディマリアが絡む。
29分、ミランもようやくピルロのFKがゴールに飛ぶが、カシージャスがポストを怖がらない鉄壁セーブ。34分、ロナウジーニョから逆サイドでフリーのセードルフにパスが出るが、GKが迫る中、シュートは大きく上に外してしまう。
前半はこの2つのシーンがミランの数少ないチャンス。しかし、カシージャスが立ちはだかり、ゴールは割らせない。40分にはディマリアのスルーパスにC.ロナウドがクロスを戻し、ディマリアがシュート。43分にはディマリアのドリブル。44分、エジルがゴール前の狭いスペースでロナウドとのワンツーを決め、シュートを放つ。GKアメーリアがナイスセーブ。
後半に入ってもレアル・ペース。6分、FKをシャビ・アロンソが流してC.ロナウドがシュート。7分、ディマリアのクロスにイグアインがヘディングシュート。8分、イグアインのクロスにディマリアがヒールで流すが、DFがクリア。
とにかくスピードが違う。ミランはボールを持ってからパスの受け手を探している印象。ロナウジーニョ、ピルロ、セードルフとパスの出し手のところでスピードが鈍り、イブラヒモビッチのボールキープも時間をかけて守備を強固にするばかり。パトに至っては、ほとんどボールに触れず消えていた。
加えてミランの中盤の守備が緩い。エジル、ケディラの速さについていけない。C.ロナウドやシャビ・アロンソ、ディマリアの技術に対して、スペースを空けて守備せざるを得ないのはわかる。しかしもう少し勇気を持ってプレスにいけないものか。14分、ガットゥーゾをボアテングに代えて、中盤で厳しい当たりが見られるようになるが、同時にファールも増える。
18分、マルセロのドリブルからイグアインのポストにケディラがシュート。22分、シャビ・アロンソのスルーパスをディマリアが受けてイグアインがシュート。26分、マルセロからC.ロナウドがシュート。32分のロナウドのFKは壁を突き破り、こぼれたボールにペペが倒れながら足を伸ばすが、ボールは枠を外れて転がっていった。
ミランは27分、ロビーニョ。33分にインザーギを投入。これでようやく攻撃にスピードが出るようになり、ミランにチャンスが訪れる。35分、ロビーニョからインザーギのクロスにイブラヒモビッチが飛び込むがクリア。38分、ロビーニョが抜け出しシュートするもGKカシージャスがセーブ。
最後はレアルも疲れて多少バタバタしたが、結局このまま2-0で終了。内容的には5-0でもおかしくないようなゲームで、得点がなかったことに不満は残るが、現在のレアルの達成度の高さを痛感。すごいチームだ。と同時に、ミランの至らなさも披露。もっと速く厳しいサッカーをしないことにはこれ以上、上を臨むのは無理ではないのか。途中出場したボアテング、ロビーニョ、インザーギを中心としたチームづくりをした方がまだ可能性があるような気がする。それともう一人、セードルフに代わる中盤がほしい。
両チームの差をまざまざと感じた一戦だった。