とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

退職後の生活

 毎年、正月明けに職場OBらが集まる新年会が開かれる。現役世代も50代を中心に、半ばOBとの旧交を温めるため、半ば義務的に参加する。
 OBには様々な人が来られる。関連会社の役員生活を満喫している人、技術力を生かし、若手社員に混じって活躍している人、起業した人。その会社に再就職した人。もちろん悠々自適の人も多い。
 OBとの思い出も様々だ。お世話になった人、見知らぬ人、いい思い出のない人もいる。
 その中で対称的な生活を送る2人のOBが印象に残った。2人とも一時私の上司であり、一人は技術部局のトップまで務め、もう一人は課長で退職した。
 課長で退職したM氏は退職後、その技術力を求められ新しい会社に再就職し活躍していたが、その後退職し、週1日のバイト的な仕事をしていると聞いていた。先日の新年会では、「また別の会社に再就職して働いているんですよ」とおっしゃっていた。もともとおとなしい方で、熱意を心の奥に秘めているタイプの方だが、その物言いは本当にうれしそうだった。もう70歳を超えたはずだ。
 もう一人のK氏は関連会社の社長を務め、その後、別の会社の顧問となり、現在はさらに関連団体の長となっている。しかし事務局長と女性事務員しかいないその団体は、業務量も少なく、関連会社からの会費で保っているらしい。どれだけ収入があるか知らないが、勤務は週1回。まだ65歳を少し超えたところで、現役時代からキレた頭脳は今も変わらない。
 年賀状にも書かれていたが、最近は図書館通いをしていると言う。朝からおにぎりを持って図書館へ行き、今は歴史書を連読しているんだと、これも楽しそうではあった。しかし現役時代から、どちらかと言えば達成困難な目標を掲げ部下を叱咤し、自身もダンディな風を装っていたから、その言葉にもはったり的な印象、無理矢理自分を納得させ装っているような感じがした。
 前に書いたことだが、私の父は65歳で自営業を母の弟に譲り、アマチュア・カメラ同好会の地元支部に所属。80歳になる今では、本部の役員(無給・非常勤)となり、展示会の開催や審査会の事務方などで元気に活躍している。現役時代は零細企業の社長として辛い思いもしたが、今は趣味の世界でみんなに頼られ、いきいきとしている。
 K氏は現役時代から釣りや漁が趣味だったが、さすがに体力的にきついと漏らしていた。一方、M氏は、退職後、油絵を始め、私も何度か展覧会におじゃましたことがある。
 もちろん憧れるのはM氏である。翻って自分を省みると、未だにこれといった趣味もなく、読書とサッカー観戦(しかも自宅でビデオが主)以外やることもない。このまま退職すると、退職時の役職はK氏には届かないとしても、K氏のような晩年を送ることになりかねない。
 いや大丈夫。定年も延長されるし、年金もなくなるから一生働き続けざるを得なくなる、という声も聞こえる。たとえそうであれ、人に求められて再就職でき、再就職先や趣味の世界でもそれなりに頼られる存在になれればいいのだが、孤独に余生を過ごすのは耐えられない。
 先日の仲間内の飲み会で、「日本は近いうちにハイパー・インフレに襲われ、すべてがチャラとなって、その後は人間力が問われるような社会になる」なんて嘯いたが、果たしてそれに耐えられる人間力が自分にあるかと言えば、ほとほと心許ない。