とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

日々是蹴球

 スルガ銀行サッカーweb「I DREAM」内で連載中のエッセイからの59編を収録。世界各国や日本のあちこちに旅をしてはサッカーと関わるサッカー野郎の筆者の日常を描く。
 Jリーグだけではない。というかJリーグはほとんど出てこない。ほとんどが草サッカー経験だ。外国の初めての地で草サッカーを楽しむグループの中に飛び込み、一緒にサッカーをする。身体をぶつけ合い、パスを交換し、時に怒鳴り合い、悪態をつく。だが最後は「また会おうぜ」と別れる。
 小学生や中学生を相手に草サッカーを挑み、こてんぱんにやっつける。カズだって年齢を理由に手を抜くことはしない。負けて悔しがり、昔の思い出を語り、サッカーがつなぐ絆を喜ぶ。
 やはりサッカーはいい。サッカーの楽しさ、喜びが自然体の中にあふれでている。いいなあ。そうだ、「I DREAM」を購読しよう。

日々是蹴球

日々是蹴球

●その時、タッチラインを割ったボールが転がってきた。おぼっちゃんの中のひとりはためらいもせず、母の手をふりほどき、そのボールに向かっていって丁寧なインサイドキックでボールをピッチに戻した。・・・ロコ選手はそれを受けて、少し笑って「ありがとう」の代わりに軽く右手を挙げた。・・・本当に、本当に何気ない1本のパスだけど、サッカーという競技がこんなにもあっさりと国家や貧富、民族や言葉を飛び越えた瞬間を目撃した僕は、気分が良くなってシンハービールをまたお代わりする。(P009)
●僕らは今年、30歳になる。年に一度程度しか会えないヤツがほとんどだけれど、こうして顔を合わせると「おまえ、太ったな」「あのPKはないぜ」「もうちょっと練習してりゃ、オレたちだって、なあ」同じ会話だけど、老酒のように年をとったぶんだけ深みと旨みが出てくる。と思うのは単なる感傷だろうか。サッカーをやっていて、本当に良かった。(P053)
●全国のボールボーイのみんな、欧州や南米のようにもっともっと感情を持って業務にあたってほしい。自分の仕事さえおろそかにしなければ大丈夫。そのうち「なんだか愛媛(仮)のボールボーイって熱いよな」「やっぱり鹿島(これも仮)のヤツらはマリーシアが徹底している」なんていうようなチームカラーのようなものができたりしたら、またひとつサッカーシーンが面白くなるような気がする。(P069)
●「またサッカー、やろうな。絶対だぞ」いっつもそう言う。「オレ、もっとうまくなるからな」これも毎度、言うけどちっとも上達しない。ガラガラの私鉄の上り線に乗って僕は東京に戻る。明日は月曜日。また仕事が始まる。つまんないこともたくさんあるけど、たぶん今週も何とか乗り切れるだろう。ちょっと眠ることにした。(P123)
●あんまりサッカー好きじゃないと自身で認めて、それでも仕事だからと割り切ったら逆にプロ根性も生まれたかもしれない、とのことだった。/が、サッカーが好きと声高に叫ぶことによって自己を保っているだけの僕はそう割り切ることもできないのだ。・・・そうやって内側に入りすぎて「ヤバいな」と思う時は、どんなに眠くても疲れていても締め切りが目前でもグラウンドに行く。自己欺瞞でもいい。走って叫んで転んだりもするけれど、それなりに気が晴れる。・・・体を動かすのは楽しい。(P204)