とんま天狗は雲の上

サッカー観戦と読書記録と日々感じたこと等を綴っています。

ポルトガルサッカーの魔力

 ポルトガル代表が絶好調だ。W杯予選Fグループではロシアを下してグループ首位に立っている。クリスティアーノ・ロナウド、ナニ、ペペ、コエントラン、・・・。何人もの選手を挙げることができるが、どちらかというと個の力で勝っているというイメージでポルトガルサッカーのチーム戦術はこれというのが思い至らない。だがそれがポルトガルサッカーの特徴かもしれない。
 ポルトガルリーグに目を転じれば、最近はブラガの躍進が目まぐるしいが、長らくベンフィカポルトスポルティングの3強でリーグは回っており、他のチームはチーム名さえ知らない。本書はそうしたポルトガルサッカーの全てが豊富なインタビューや現地取材等により余すことなく紹介されている。
 ポルトガルリーグの運営体制と歴史を説明する「第1章 ポルトガルリーグ」、1989年ワールドユース以降のポルトガル代表の活躍を描く「第2章 ポルトガル代表の飛躍」、若いブラジル人プレーヤーが跋扈するポルトガルリーグの内情を説明する「第3章 『登竜門』としてのポルトガルサッカー」、ブラガへの取材やポルトガルサッカー連盟のスポーツディレクターを努めるジョアン・ピントへのインタビューを基にポルトガルサッカーの課題を語る「第4章 ポルトガルサッカーの現在地」、そして巻末にポルトガルリーグのマリティアで活躍した相馬崇人へのインタビューを添える。
 若手の登竜門として位置付けるポルトガルリーグの実情など、報道だけでは知りえない内情が知られ、興味深い。ポルトガルサッカーファンには格好の入門書と言える。もっともポルトガルサッカーファンがそれほどいるとは思えないけどね。

ポルトガルサッカーの魔力 (サッカー小僧新書)

ポルトガルサッカーの魔力 (サッカー小僧新書)

エウゼビオには、この時代、インテルから当時のポルトガルの国家予算にも匹敵するサラリー(給料)での獲得オファーが届いたことがある。しかし、それを「断らせた」のはベンフィカではなく、国家の主権者であるサラザールだった。/19歳でアフリカのモザンビークから”連行”され、ポルトガルのシンボルとして国内での”蟄居”を余儀なくされたエウゼビオは、まさに植民地政策とナショナリズムのプロパガンダとして使われた時代の犠牲者と言っても良いだろう。(P80)
ポルトガルリーグのクラブでは、給料の未払い、遅配が相次いでいるのですが、マリティモ時代にそういったことはありましたか?/「ありました。・・・会長のサジ加減ひとつで落としちゃいけない試合を落とした時とかは、罰として払われなかったりします。最終的には2〜3週間後には払われるんですけどね。マリティモの財政状態はポルトガルでも上から数えたほうが早いんだけど、それでもこれぐらいのレベルということです」(P178)
●改めてポルトガルリーグの長所と短所は何だと感じていますか?/「やはり、チャンスはあるけれど、カネがない(資金的余裕がない)。これに尽きますね」(P185)